午後に入り、保証人である親から連絡が入る、
「息子が急に死んだため、アパートのカギもどれか分からないので 来週、アパートの方に行くが、合鍵を持って一緒に立ち会ってほしい」 という電話が入る。その時に、家財道具も運ぶ予定ということだ。
カギがどれか分からないということは、これで部屋での自殺の可能性は無くなった
死亡原因も聞きたかったが、やはり、聞けなかった。

立会い当日、親は、2tトラックと手伝いの方2名と、一緒にやってきた。早速、部屋のカギを開ける。玄関ドアを開けると、散乱した靴の上に、新聞とサラ金からの督促状が山になっていた、居間に通じる内扉を開けると、唖然とする光景が目に飛び込んできた。
ゴミ・ゴミ・ゴミの山 !、コンビニの袋やゴミ袋に詰められた大量のゴミが、深さ20cm〜30cmで部屋一面に広がり、床のフローリングが見えない。
ヒドイ所では、小型冷蔵庫の高さまで、ゴミが積み上げられている。台所は、食器や鍋、食べ残しが山積みになっており、悪臭を放ち、ハエが飛び回っている
奥の寝室には、下が収納になった2段ベットが置いてあり、その下は当然ゴミだらけ、こちらは衣類が中心である。ゴミだらけで、寝る場所がなくて、2段ベットにしたのではないかと思われる。
父親と母親は、しばらくの間、唖然として立ちすくんでいたが、
突然、母親が「こんな子じゃ、なかったのに・・・」と言って泣き崩れてしまった。
息子が死んで、落ち込んでいる所に、追い討ちを掛けるような、この惨状。
可哀想で、言葉を掛けることもできない。
しかし、私もこれを処理するのが仕事、言うべきことは、言わねばならない。
父親に、「できれば今日中に、全てのゴミと家財道具は処理してください」
「部屋の修繕費も、相当な金額になると思いますので、覚悟してください」
と告げ、部屋を後にした。

3時間後、部屋に戻ると、既にゴミと家財道具は全て運び出されていた。
フローリングの床は、いたる所に生ゴミから漏れた汁が深くシミになっており、臭いも強烈だ。いまだに部屋全体が、ゴミ箱の中にあるような臭いが漂っている。
たぶん、全室のクロスを張り替え、床のフローリング材も張り替えなければ、この臭いは、消えないだろう。
結局、修繕費用とハウスクリーニング料は約50万円ほどになったが、大家さんが良い人で、「あまりにも気の毒なので、20万円を負担してくれれば良い」ということになった。親と交渉して20万円は、回収できた。
大家さんに聞くと、滞納していた家賃は、亡くなる前の日に振込みになっていた。
う〜ん、なんとも言えない複雑な心境。
仕事的には、滞納家賃も全額回収できたし、修繕費用も大家さんが言った金額は回収できたので完璧なのだが、個人的には、死ぬ前の日に家賃を振り込んだのが、どうも気になる。
どのような気持ちで振り込んだのだろう、私にはわからないが、自分の気持ちの中にはやるせない気持ちが残る。なんとも後味の悪い取り立てではあった。
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