新居探しで郊外の物件を見ていると、「衛星都市」や「ベッドタウン」といった言葉をよく目にするかと思います。
どちらも都心から少し離れた場所にあるイメージですが、具体的に何が違うのか、いまいちピンとこない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、地方移住や子育てに適したエリアを探している方に向けて、衛星都市とベッドタウンの違い・それぞれの特徴・住みやすさなどについて、詳しく解説します。
理想の住まい探しのお役に立てば幸いです。
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目次
衛星都市とは?意味をわかりやすく解説
衛星都市とは大都市の周辺に位置し、経済や行政において大都市と密接な関係を持ちながらも、独自の産業や文化機能を持つ自立した都市のことを指します。
通勤・通学者が多く住む大都市のベッドタウンとは異なり、昼夜間の人口変動が少なく、市内で就業や買い物などを完結させやすいのが特徴です。
大都市の機能を分散させる役割も担っており、都市圏全体のバランスを保つ上で重要な存在と言えるでしょう。
衛星都市の語源
衛星都市の「衛星」という言葉は、惑星の周りを回る衛星のように、大都市(中心都市)の周りに位置していることに由来しています。
衛星都市が大都市の機能の一部を分担し依存関係を保ちながらも、独自の機能を持っている様子から、地理的な近さだけでなく、経済的・機能的なつながりの深さを表現している言葉です。
中核都市(中核市)との違いや関係
中核都市は政令指定都市に準ずる権限を持つ都市を指し、人口20万人以上という要件が定められています。
参考:中核市市長会 中核市とは
一方、衛星都市は中心都市の機能を補完する役割を持つ都市であり、必ずしも人口や行政上の要件があるわけではありません。
中核都市が衛星都市としての機能を持つこともありますが、両者は異なる概念です。
衛星都市とみなされる要件とは?
衛星都市と判断されるには、いくつかの条件があります。
必須の条件は、大都市圏内に位置していることです。そして、その都市自体が独自の産業基盤や商業施設を持ち、昼間の人口が夜間の人口に対して極端に少なくないことが挙げられます。
さらに、都市計画によって、住宅地だけでなく商業施設や工業団地などがバランス良く配置されていることも、重要な要素です。
衛星都市の種類
衛星都市は、機能によっていくつかの種類に分けられます。詳しく見ていきましょう。
住宅衛星都市とは?夜間人口が多い都市の例
住宅衛星都市は、大都市で働く人々のベッドタウンとしての役割が強く、夜間に人口が集中するのが特徴です。
行政区として独立しているものの、住民は職場・買い物などの日常生活で大都市を利用することが多く、経済的に大都市に依存する傾向があります。
たとえば、東京都のベッドタウンとして発展した神奈川県横浜市や埼玉県さいたま市なども、規模や機能から見て住宅衛星都市に該当します。
工業衛星都市とは?産業機能を持つもの
工業衛星都市は、大都市の周辺で工業機能を分担し、独自の産業基盤を持つ都市です。
住宅衛星都市が住宅地の供給を目的とするのに対し、工業衛星都市は工場や事業所の移転・集積を中心に発展します。
また、工業都市は多くの雇用を生み出しており、住民の多くが市内で働き、経済的に自立しているため昼夜間の人口変動が比較的少ないのが特徴です。
自然発生型 vs 計画型都市(ニュータウン等)
衛星都市は、その成立過程によって「自然発生型」と「計画型」に分けられます。
「自然発生型」は、大都市の発展に伴い、自然に人口や産業が集積して形成された都市です。
一方、「計画型」は、都市計画に基づいて住宅地や商業施設、学校などを一体的に整備して作られた都市で、「ニュータウン」がこれに該当します。
「ニュータウン」とはイギリスの「田園都市」という構想から派生し、世界中の都市開発に影響を与えた都市形態です。なお、「田園都市」とは、自然との調和を重視した理想的なまちを、大都市近郊に築こうとする構想を指します。
日本では小規模な宅地開発によるエリアを「新興住宅地」とも言い、住環境が整っているのが大きな魅力です。
日本の衛星都市|東京・大阪・名古屋などの具体例
日本には、三大都市圏を中心に多くの衛星都市が存在しています。これらの都市は、それぞれ独自の特色があり、中心となる大都市と密接な関係を築いています。
ここでは、日本の衛星都市について詳しく見ていきましょう。
日本における衛星都市の定義と特徴
日本の衛星都市は、一般的に大都市圏内に位置し、通勤・通学によって中心都市と強い結びつきを持っています。また、 鉄道網が発達しているため、中心都市へのアクセスが非常に良好です。
一方、海外の衛星都市は、鉄道だけでなく高速道路で中心都市まで結ばれているケースが一般的です。たとえば、アメリカのアナハイム(カリフォルニア州)はロサンゼルス都市圏の衛星都市で、州間高速道路により45~60分程度で移動できます。
また、日本では大都市圏と相互関係にあり、機能的に依存する衛星都市も多いですが、海外では中心都市への依存度が低く、中心都市の人口を超える例もある点が大きな違いです。
東京圏の衛星都市例:さいたま市・川崎市・千葉市など
東京圏の衛星都市としては、埼玉県さいたま市や千葉県千葉市が代表的です。
どちらの都市も、東京の機能を補完する役割を持っています。たとえば、さいたま市は政令指定都市として行政機能が充実し、川崎市は臨海部に工業地帯を抱えるなど、独自の強みが特徴です。
大阪圏の衛星都市例:高槻市・吹田市など
大阪圏の衛星都市としては、大阪府高槻市や吹田市などが挙げられます。
高槻市は京都と大阪の中間に位置しており、両都市へのアクセスが非常に良いエリアです。また、吹田市は大阪市に隣接し、商業施設や文化施設も充実しています。
どちらの都市も独自の都市機能を持ち、住みやすい街として人気です。
名古屋圏の衛星都市例:春日井市、尾張旭市など
名古屋圏の衛星都市としては、愛知県春日井市や尾張旭市などが挙げられます。
これらの都市は、名古屋市中心部へのアクセスが良好でありながら、独自の住宅地や工業団地が整備されています。
地方における衛星都市例の一覧
地方都市圏の衛星都市を、下記のように表にまとめました。
| 地方都市 | 衛星都市 |
|---|---|
| 福岡市 | 春日市 大野城市 太宰府市 など |
| 熊本市 | 宇土市 合志市 菊陽町 など |
| 広島市 | 廿日市市 東広島市 呉市 など |
| 仙台市 | 多賀城市 塩竈市 名取市 など |
| 札幌市 | 小樽市 江別市 北広島市 など |
札幌市であれば、北広島市や江別市などが衛星都市に該当します。
地方の衛星都市は、大都市に比べて自然が豊かで、ゆったりとした生活を送れるのが魅力です。
衛星都市vsベッドタウン|違いと選び方
衛星都市とベッドタウンは似ているようで、その機能や住民の暮らしに違いがあります。ここでは、それぞれの違いと、住まい探しのポイントについて見ていきましょう。
定義上の違い
衛星都市は、大都市の経済・行政機能の一部を担う自立した都市です。
一方、ベッドタウンは、大都市で働く人々の住宅地としての機能が主であり、市内での就業や商業施設は衛星都市に比べて少ない傾向にあります。
衛星都市は昼間の人口も多く、街として活気がありますが、ベッドタウンは昼間に人口が減少し、夜間に戻ってくるという人口変動が特徴です。
昼夜間人口比率で見ると、衛星都市は人口変動がベッドタウンほど大きくありません。
昼夜間人口比率は、昼間人口を夜間人口で割って算出します。この比率が100を大きく下回る(夜間人口が多い)地域は、ベッドタウンとしての性格が強いと言えるでしょう。
住み手の視点からの違い
住み手の視点で見ると、衛星都市は市内である程度の生活が完結するため、通勤時間を短縮したい方や、地元で子育てを完結させたいご家族に適しています。
一方、ベッドタウンは家賃や地価が安く、大都市へのアクセスを最優先に考えたい方に向いています。生活の利便性を重視するなら衛星都市、コストを抑えたいならベッドタウンという選び方ができるでしょう。
引っ越しで失敗しない!住む街選びのコツ
住む街を選ぶ際には、ライフスタイルを明確にすることが大切です。
たとえば、通勤時間や交通の利便性のほか、スーパー・病院・学校といった生活インフラの充実度も確認しましょう。
また、子育て環境や地域のコミュニティ活動も、住みやすさを左右する重要なポイントです。
自分自身や家族の将来像を想像しながら、適した街を見つけましょう。
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衛星都市の課題は?
衛星都市は、大都市圏の住環境を改善する上で重要な役割を果たしていますが、課題がないわけではありません。
人口集中によるインフラの遅れや、中心都市への過度な依存、高齢化問題など、さまざまな課題に直面しています。
交通・インフラの整備不足の問題
衛星都市が急速に発展すると、道路や鉄道といった交通インフラの整備が追いつかず、交通渋滞や混雑が深刻な問題となることがあります。
とくに、大都市への通勤時間帯には交通機関が非常に混み合うため、住民のストレスにつながりやすい傾向です。
また、水道や電気といった生活インフラも、人口増加に追いつかない場合があります。
公共サービス・環境・住みやすさの課題
衛星都市は、大都市に比べて医療・教育機関が不足していることがあります。
とくに、専門的な医療サービスや大学などの高等教育機関は、中心都市に集中していることが多く、住民が不便に感じがちです。
また、自然環境とのバランスが崩れ、住みやすさが損なわれることも課題の一つです。
高齢化・人口減少時代における衛星都市の役割
日本の多くの衛星都市は、高度経済成長期(1950年代〜1970年代)に形成された背景があり、住民の高齢化が進んでいます。
高齢化が進むと、地域コミュニティの維持や、医療・介護サービスの提供が課題となります。また、住宅の老朽化やバリアフリー化の遅れも問題です。
今後は、高齢者が安心して暮らせる街づくりや、若い世代が住みたいと思える魅力ある都市へと転換していくことが求められるでしょう。
シニア世代の移住に適した街については、下記の記事も参考にしてみてください。
関連記事:シニア移住にやさしい街13選を関東・関西など地方別に紹介!選び方やリサーチのポイント
今後の都市計画・持続可能な衛星都市モデル
今後の衛星都市は、持続可能な発展をめざし、新たな都市モデルを構築していく必要があります。
たとえば、リモートワークの普及を活かした「テレワーク移住」を促進したり、交通網の改善・公共サービスを充実させたりと、住民の満足度を高める取り組みが重要です。
また、中心都市との連携をさらに強化し、お互いの強みを活かした都市圏全体の活性化を図ることも、今後の課題と言えるでしょう。
よくある質問|衛星都市についての疑問に答える
衛星都市について気になること、疑問などに答えるコーナーです。
衛星都市をわかりやすく言い換えると?
衛星都市を簡単な言葉に言い換えるなら、「大都市周辺の自立都市」です。
大都市の周辺にありながら独自の生活圏があり、寝るためだけに戻る街ではない、というニュアンスを伝えられるでしょう。
東京近郊の注目衛星都市は?
東京近郊で注目されている衛星都市としては、立川市・八王子市などが挙げられます。
これらの地域は、都心へのアクセスが良く、再開発も進められています。
「東京は疲れる」と感じた方は、都心から少し離れた場所を検討してみてはいかがでしょうか。
衛星都市は英語で何という?
衛星都市は英語で”satellite city”です。
直訳すると「衛星の都市」となり、日本語と同様に、中心都市の周りを回る衛星のような関係性を表現しています。
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衛星都市は、大都市の利便性と郊外のゆとりある生活を両立できる、魅力的な選択肢です。本記事で解説したように、衛星都市は単なるベッドタウンとは異なり、独自の機能や活気を持っています。
住まい探しでは、ご自身のライフスタイルや家族の将来を考え、衛星都市も検討してみましょう。
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