「飲食店を開業したいけど、コンセプトが漠然としていて決めきれない……」
「やりたいこと」と「市場ニーズ」のマッチングができず、事業計画書の説得力ある記載ができないと不安を感じる方もいるのではないでしょうか。
飲食店のコンセプトは、集客やメニュー開発・内装デザインなど、お店の方向性を決める重要な要素です。本記事では、コンセプトの決め方・作り方を具体的に解説したうえで、悩んだ際にヒントを得る方法・事業計画書への記載ポイントなどもご紹介します。夢を実現する際の参考になれば幸いです。
この記事でわかること |
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漠然としたアイデアを具体的なコンセプトにする方法 コンセプト設計に悩んだときのヒントを得る方法 金融機関を納得させるための事業計画書向けコンセプトの書き方 |
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目次
飲食店のコンセプトとは

飲食店のコンセプトとは、「お店の骨格となる考え方」を指します。
例えば、「都会の喧騒を忘れさせる隠れ家のようなカフェで、こだわりの豆で淹れたスペシャルティコーヒーを提供し、読書好きな大人がゆったりと過ごせる空間」といった内容がコンセプトです。「誰に」「何を」「どのように」提供するのかを具体的に言語化します。
コンセプトを明確にすれば、お店のサービスが一貫したものとなります。対して、コンセプトがあいまいだと、提供する商品やサービスに統一感がなくなり、お客様に「結局どんなお店なの?」と思われてしまいかねません。
魅力的な飲食店を作るには、最初にコンセプトをしっかり設定するのが不可欠です。
飲食店のコンセプトが設定できれば、具体的な集客アイデアにもつながります。集客について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
関連記事:飲食店が集客に成功するアイデアとは?効果的な集客方法の選び方
飲食店コンセプトの決め方・作り方の鍵は5W2H

飲食店のコンセプトを具体的に落とし込むには、以下のような「5W2H」のフレームワークが有効です。
- Why:目的
- Who:顧客像、競合
- What:サービスの内容
- When:時間帯
- Where:立地
- How:サービスの提供方法
- How many:価格
「5W2H」は事業計画書を作成する際にも役立つ考え方で、コンセプトを多角的に掘り下げられます。それぞれの要素を深掘りすれば、より明確で説得力のあるコンセプトを構築できますので、詳しくみていきましょう。
【Why】目的を明確にする
コンセプト設計の最初のステップは、お店を開業する「想い」や「目的」を明確にすることです。
目的がブレてしまうと、後々の意思決定にも影響が出てしまいます。
たとえば、「地元で採れた新鮮な野菜を使った健康的な料理を提供したい」「仕事帰りのビジネスパーソンが気軽に立ち寄れる、温かい雰囲気の居酒屋を作りたい」など、理想を具体的に言語化してみましょう。
単なる利益追求だけでなく、お客様にどのような価値を提供したいのか、どのようなお店にしていきたいのか、といった根源的な部分を掘り下げてみてください。
【Who】顧客像・競合を深堀りする
飲食店のコンセプトを固めるうえで、最も重要な要素の一つがターゲット顧客の明確化です。
ターゲット顧客は単に「若い女性」や「ファミリー層」といった漠然とした括りではなく、以下のような項目で掘り下げていきましょう。
- どのようなライフスタイルを送っているのか
- どのような価値観を持っているのか
- 何に喜びを感じるのか
- どのような悩みを抱えているのか
具体的な顧客像とは、「仕事帰りに一人で気軽に立ち寄れる場所を求めている30代のキャリア女性で、健康志向が高く、オーガニック食材を使った料理に興味がある」といった内容です。
顧客像が明確になれば、提供すべきメニューや空間・サービス・お店の雰囲気までが具体的にみえてきます。
同時に、そのターゲット顧客が利用しそうな競合店のリサーチもおこないましょう。
競合店のメニューや価格帯・内装・サービスなどを多角的に分析し、自店が市場でどのような立ち位置を築き、差別化を図るべきかを見極めます。
競合の強みを参考にしつつ、自店ならではの「選ばれる理由」を明確にするのが、成功への道筋です。
【What】サービスの内容を決める
「What(何を)」の決定は、コンセプトを具現化するステップの要です。提供する商品・サービスを決めるときは、ターゲットニーズや自身の強みを反映しているため、「お店で何を体験してもらうか」から考えていきましょう。
たとえば、健康志向の強いターゲット層には、地元の旬野菜デリプレートが響き、お店独自のオリジナリティを生みます。さらに、料理やドリンクだけでなく、居心地の良い空間や接客も「商品」と捉え、計画に含めるべきです。
「What」を深く掘り下げ、忘れられない特別な体験を提供しましょう。
【When・Where】時間帯と立地を決める
飲食店を成功させるには、時間帯と立地の決定も重要です。
まず「When(営業時間)」は、ターゲット顧客のライフスタイルやお店のコンセプトと密接に関わります。たとえば、ビジネスパーソンをターゲットにするならランチタイムやディナータイムが中心となり、主婦層ならカフェタイムの集客が見込まれるでしょう。
次に「Where(立地)」は、お店の集客力を大きく左右するため、下記のポイントをチェックしましょう。
- 駅からの距離
- 周辺の施設(オフィス街、住宅街、商業施設など)
- 競合店の有無
- 通行人の属性
たとえば、小さい飲食店がコンセプトであるなら、路地裏の隠れ家的な立地も魅力になり得ますが、認知度を上げるための戦略も欠かせません。
ターゲット顧客が来店しやすい場所であるか、その場所がコンセプトと合致しているかを慎重に検討しましょう。
【How】どのようにサービスを提供するか決める
お店のコンセプトを具現化するうえで、「どのように」サービスを提供するのかというオペレーションも検討しましょう。
オペレーションは、単に料理を運ぶだけでなく、お客様がお店に入ってから出るまでのすべての体験をデザインすることです。
たとえば、「アットホームな雰囲気で、お客様一人ひとりに合わせたきめ細やかな接客を提供する」のか、「最新のシステムを導入し、スピーディーかつ効率的なサービスを提供する」のかによって、スタッフの教育方針や店舗の設備・お客様とのコミュニケーションの取り方まで大きく変わってきます。
具体的に計画したい内容は、下記のとおりです。
- 注文方法(モバイルオーダー、口頭注文など)
- 配膳方法
- 会計システム
- 予約方法
- お客様とのコミュニケーションの頻度や内容
これらはすべて、お店のコンセプトと一貫している必要があります。
お客様がお店で過ごす時間を通して、コンセプトで描いた理想的な体験を提供できるよう、細部にわたるまで「How」を練り上げましょう。
【How many】価格を決める
提供する商品やサービスの価格設定は、飲食店のコンセプトとターゲット顧客に直結します。
単に原価計算だけで決めるのではなく、お店の価値やブランドイメージ・そしてターゲット顧客が「この価格なら払っても良い」と感じる価値を提供できるかを総合的に考慮しましょう。
たとえば、洗練された高級感ある空間と、日常使いを意識したカジュアルな空間では、価格設定が異なります。
価格設定を考える際には、競合店の価格帯はもちろんのこと、ターゲット顧客の所得層や、そのエリアの物価水準も参考になります。お客様に「この価格でこのクオリティならお得だ」と感じてもらえる価格帯を見つけましょう。
コンセプトシートの例
飲食店のコンセプトを具体的にまとめるには、コンセプトシートの作成が有効です。
コンセプトシートでは、これまで考えてきた「Why」「Who」「What」「When」「Where」「How」「How many」を一枚のシートに集約します。決まった書式はありませんが、以下のような項目を盛り込むと良いでしょう。
- 店名(仮称)
- コンセプト(一言で表すと)
- ターゲット顧客:年齢層、性別、職業、ライフスタイル、来店動機など
- 提供する価値:お客様にどのような体験やメリットを提供するのか
- 料理・ドリンク:具体的なメニュー、こだわり、使用食材など
- 空間デザイン:内装、外装、雰囲気、席数など
- サービス:接客スタイル、オーダー方法、提供スピードなど
- 価格帯:ランチ、ディナー、ドリンクの目安
- 営業時間・定休日
- 立地:最寄り駅、周辺環境、ターゲットとの関連性
- 競合との差別化ポイント
このように要素を整理すれば、漠然としていたイメージが具体的な形となり、事業計画書を作成する際にも説得力のある内容を記載できるようになります。
飲食店のコンセプトに悩んだときにヒントを得る方法

飲食店のコンセプトを練り上げていく過程で、「なかなかアイデアが浮かばない」「これで本当に良いのか」と悩むときもあるのではないでしょうか。そのようなときのために、多角的な視点からヒントを得る方法について解説します。
- 同じターゲット層のお店を観察する
- 自分の「好き」「強み」から考えてみる
- AIに壁打ち相手になってもらう
あなたらしいコンセプトの実現に近づくために、それぞれ詳しくみていきましょう。
同じターゲット層のお店を観察する
コンセプトに行き詰まったら、一度頭をリセットして、実際に街に出てみましょう。とくに、あなたが想定している飲食店のコンセプトと似たターゲット層を持つお店を観察するのは、コンセプトを考えるヒントになります。
たとえば、20代女性向けのカフェを考えているなら、実際にその層に人気のあるカフェを複数訪れてみましょう。
「なぜこのお店はお客様に支持されているのか」「自分のお店なら、この部分をもっと良くできるのではないか」といった視点でみていくと、具体的なアイデアが湧いてくるはずです。
競合店の良い部分から学びつつ「自分のお店ならではの個性をどう出すか」というヒントを得られるでしょう。
自分の「好き」「強み」から考えてみる
コンセプトに悩んだときこそ、一度原点に立ち返り、あなた自身の「好き」や「得意なこと」、つまり「強み」から考えてみるのも方法の1つです。
「好き」や「強み」を振り返ると、以下のように意外な可能性に気づけるかもしれません。
- 旅行が好きで、海外の料理に詳しい
- 昔からカフェ巡りが趣味で、こだわりのコーヒー豆を厳選できる
- 人を喜ばせるのが好きで、サプライズ演出が得意
自分の「好き」を追求すれば、仕事に対する情熱を維持しやすくなり、「強み」を活かせば、他店にはないオリジナリティを打ち出せます。
AIに壁打ち相手になってもらう
ChatGPTやGeminiなど、AIをコンセプト設計の壁打ち相手として活用するのもオススメです。
実際にChatGPTに「飲食店を開業するにあたって、コンセプト設計に悩んでいる。壁打ち相手になってほしい」と伝えると、明確にするべき項目を挙げてくれました。

「この部分がまだあいまいだな」と感じるなら、「〇〇があいまいなので、掘り下げてほしい」と相談すると、明確にするための質問を投げかけてくれるので、自分ひとりより考えやすくなります。

AIの回答はあくまで参考の一つですが、自分の考えを整理したり、新たな発想のきっかけを掴んだりできます。
頭のなかの漠然としたイメージを言語化するために、AIとの対話を役立ててみてはいかがでしょうか。
事業計画書向け|飲食店コンセプトの書き方

事業計画書は、飲食店の開業を考えている方にとって、金融機関からの融資を受けるため、あるいは共同経営者や従業員とビジョンを共有するための重要なツールです。
とくにコンセプトは、事業の核となる部分であり、計画全体の説得力を大きく左右します。漠然としたアイデアではなく、具体的な数字や実現の可能性を裏付ける情報と結びつけた記述が求められます。
ここでは、事業計画書においてコンセプトを効果的に伝えるためのポイントをみていきましょう。
金融機関が重視するポイント
金融機関は、事業計画書を通じてあなたの事業がどれだけ成功する見込みがあるか、そして融資した資金がきちんと返済されるかを判断します。
そのため金融機関は、単なる夢や情熱だけでなく、そのコンセプトが市場においてどのように機能し、収益を生み出すのかという具体的な「実現の可能性」と「収益性」を重視します。
重視されるポイントは下記のとおりです。
- 設定したターゲット顧客が実際に存在し、彼らのニーズを捉えられているか
- 競合との差別化が明確で、持続可能な優位性があるか
- コンセプトが具体的な売上目標につながるのか
また、仕入れルートや人員配置・初期投資の内訳なども、コンセプトと矛盾なく整合性が取れているかチェックされます。
事業計画書におけるコンセプトの記述は、具体的なビジネスモデルとして提示する場であると意識し、数字に裏打ちされた論理的な説明を心がけましょう。
実際に書くポイント
事業計画書に飲食店コンセプトを記述する際には、以下のポイントを意識すれば、より説得力のある内容になります。
- コンセプトを一言で明確に表現する
- コンセプトが5W2Hの要素とどのように結びついているのか具体的に説明する
- 競合との差別化ポイントを明確にする
たとえば、「このエリアのビジネスパーソンは、健康志向が高く、ランチに手軽でバランスの取れた食事ができる店を求めている。当店のデリプレートは、そのニーズに合致し、競合にはない多様な野菜と調理法で差別化を図る。」といった具体的な記述が求められます。
さらにこのコンセプトを一言で「健康診断の結果が気になるビジネスパーソン向けのランチを提供」などとまとめれば、ターゲット層や差別化ポイントがより明確になるでしょう。
面白いコンセプトの飲食店の事例3選

飲食店を開業する上で、他店との差別化を図り、お客様の心に残るには、魅力的なコンセプトが不可欠です。世の中には、思わず「行ってみたい!」と思うような面白いコンセプトの飲食店が存在します。ここでは、飲食店の事例を3つご紹介します。
東京|きゅうしょくのおばさんカフェテリア
東京都にある「きゅうしょくのおばさんカフェテリア」は、その店名が示す通り、学校給食をコンセプトにした飲食店です。
誰もが懐かしさを感じる「給食」というテーマを、大人向けのカフェテリアという形で提供しています。ソフト麺や揚げパンなど、給食でおなじみのメニューが再現されており、訪れる人々に子どもの頃の記憶を呼び起こさせます。
単に料理を提供するだけでなく、「懐かしさ」という感情に訴えかけ、独自の価値を生み出している点が特徴です。
このコンセプトは、単なる食事の提供を超え、お客様に「体験」という付加価値を提供しています。
誰もが共有できる普遍的なテーマを深掘りし、独自のコンセプトを構築すれば、強力な集客力を持つと示している事例です。
大阪|放課後駄菓子バー A-55
大阪市にある「放課後駄菓子バー A-55」は、こちらも店名の通り、駄菓子をメインにしたバーというユニークなコンセプトが光るお店です。
店内には所狭しと懐かしい駄菓子が並べられ、まるで子どもの頃に通った駄菓子屋さんにタイムスリップしたかのような気分を味わえます。お酒を飲みながら、童心に帰って駄菓子を選んで楽しむという非日常的な体験が好評です。
このお店は、お客様に「遊び心」と「懐かしさ」という感情的価値を提供しています。通常のバーとはひと味違う体験を提供しており、幅広い層に人気です。
福岡|Arty cafe
福岡市にある「Arty cafe」は、「アート」と「カフェ」を融合させたお店です。
スイーツに自分でイラストを描ける体験型のカフェであり、推し活の一環として好きなキャラクターを描くこともできます。
クロッフルやドーナツなど可愛いスイーツを提供しており、店内にはフォトスポットがあるなど「写真映え」を求めるお客様に人気です。SNSでの拡散と相性が良く、「#福岡カフェ」のハッシュタグで数多く紹介されています。
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飲食店のコンセプトを考えるには、最初に「なぜ開業したいのか」という理想を明確にしましょう。
5W2Hのフレームワークを活用すれば、「誰に」「何を」「どのように」といった要素を深堀りして言語化できます。
また、コンセプト設計に悩んだ際は、同じターゲット層の店舗観察や、AIとの壁打ちも有効です。
飲食店の開業には、コンセプトが具現化できるテナント物件を見つけるのが不可欠です。立地は集客に直結するので、コンセプトに合致した物件を選べば、お店の成功確率は大きく高まります。
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「テナント連合隊」は、お客様の多様なニーズに応えるべく、豊富な物件情報を取り揃えています。とくに、地方都市に特化しているため、ニッチなエリアでも物件を探しやすいです。
理想的な物件探しの参考になれば幸いです。
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