リモートワークの普及に伴い、場所にとらわれずに働けるようになった現代。自由な働き方を求めて、自然あふれる北海道へ移住する人も多くいます。
なかでも、北海道への移住を機に、新しくビジネスを始めたいと考える人も多いです。
北海道では、「地域課題解決型起業支援事業」や「観光商材開発支援補助金」といった、起業する人を支援する取り組みが実施されています。
そこで今回は、北海道で起業する際に利用すべき支援制度と補助金について、詳しく解説していきます。
北海道で新たにビジネスを始めたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
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北海道へ移住して起業するメリットとは?
北海道でビジネスを始めることで得られるメリットには、下記の3つが挙げられます。
- 起業にかかるコストを抑えられる
- 競合が少ない業種もある
- 補助金・助成金制度が充実している
それぞれのメリットについて、詳しく見ていきましょう。
起業にかかるコストを抑えられる
メリットの1つめは、起業にかかるコストを抑えられることです。
北海道は、都市部と比較して地価や家賃が安く、起業にかかる初期費用を抑えられます。事務所の家賃を東京と北海道で比較してみましょう。
札幌市は30坪までの敷地で、坪当たり約9,500〜15,000円です。一方で、東京都中央区だと30坪までの敷地で坪当たり約13,000〜28,000円が相場となります。
家賃は、事業を続けていくうえで決して欠かせない固定費です。売上の有無に問わず発生する固定費の削減は、事業を継続していくうえで非常に大切になります。
競合が少ない業種もある
北海道で起業するメリットの2つめは、競合が少ない業種もある点です。競合となる企業が少なければ、新規で立ち上げたビジネスを軌道に乗せやすいケースもあります。
首都圏で起業した場合、業種によっては大企業が競合となったり、同業種のビジネスを立ち上げる起業家が増えることもあります。
すでに既存のサービスが都心部にあったとしても、北海道エリアに特化したビジネスを展開することで同業種との差別化を図り、ビジネスを成功させることもできるでしょう。
また、北海道という土地を活かした、オリジナリティのある事業も展開できます。例えば、北海道の名産品である酪農を活かした店舗事業や、豊かな自然を活かした製品づくりなど、地場を活かしたビジネス展開も可能です。
とくに地元産業と密接に関係した事業は、北海道の産業や観光の活性化にもつながり、強い企業価値にもなります。
補助金・助成金制度が充実
北海道は、起業家向けのサポートや、UIJターン移住者向け支援制度があるのもメリットのひとつです。
起業家向け | ・地域課題解決型起業支援事業 ・観光商材開発支援補助金 |
移住者向け | ・移住支援金 |
地方へ移住して社会的事業を立ち上げた場合には、起業支援金が受け取れます。また、移住者向けの支援として移住支援金も用意されており、起業支援金とあわせて最大300万円を受給可能です。
2023年3月時点では、予算上限を超えることが見込まれているため、北海道での新規申請の受付は停止しています。2023年度の受付開始についてはまだ発表されていませんが、定期的に公式サイトをチェックしておくと良いでしょう。
※2023年3月時点に執筆した記事です。最新情報はこちらのページをご確認ください。
参考:【北海道公式】移住支援金対象求人/就業マッチングサイト
【2023最新版】北海道で利用できる支援制度・補助金
UIJターン新規就業支援事業
UIJターン新規就業支援事業とは、東京23区に在住、または東京23区内の会社へ通勤している方を対象とした取り組みです。
北海道へ移住し、起業や就業などを行う場合に、国・北海道・市町村が共同で交付金が支給されます。
この支援制度の目的は、北海道で起業する方の必要経費の一部を支援することで、北海道の地域課題を解決し、地域経済の活性化を図ることです。
ただし2023年3月時点では、令和4年度の予算に到達してしまったため、一時的に受付を終了しています。令和5年度の受付に関しては未定ですが、今後情報がアップデートされる可能性もありますので、随時ホームページをチェックしておきましょう。
各市町村での支援事業
北海道だけでなく各市町村でも支援事業を行っているので、移住先の候補がある方は、移住先を選定する際は参考にしてみてください。
2023年3月時点で、北海道の起業や創業の補助金、助成金、給付金は下記の通り6件あります。
現在募集中の市町村と募集対象については、下記の表をご参照ください。
※2023年3月時点に執筆した記事です。最新情報はこちらのページをご確認ください。
起業補助金一覧
市町村名 | 支援事業名 | 上限金額 |
夕張市 | 夕張市創業等支援事業補助金 | 100万円 |
千歳市 | 千歳市移住支援金 (UIJターン新規就業支援事業) | 100万円 |
富良野市 | 富良野市UIJターン新規就業事業に係る 移住支援金 | 100万円 |
伊達市 | UIJターン新規就業支援事業(移住支援金) | 100万円 |
名寄市 | 名寄市移住支援金 | 100万円 |
恵庭市 | 恵庭市起業支援事業 | 50万円 |
北海道で起業するまでの流れ
ここまで、北海道で起業するメリット、起業するときに利用できる支援制度について解説してきました。
北海道で起業するまでの流れについて、あらかじめ知っておくことで、スムーズなビジネス展開ができるでしょう。
- 事業ビジョンの明確化
- 事業計画の作成
- 起業と移住の準備
- 起業手続きを行う
- 北海道で事業スタート
それぞれのステップについて、詳しく見ていきましょう。
事業ビジョンの明確化
まずは、事業ビジョンを明確化することが大切です。
そもそもなぜ起業をするのか、起業して何をしたいのかなど、自分が重視したい軸を考えてみましょう。起業する方向性を「事業理念」として言語化できるように、さまざまな角度で価値観を洗い出し、深堀りしていくことも重要です。
起業して実現させたいことや事業の理念が不明確だと、移住や事業資金の投資が無駄になったり、長期的な事業継続が難しくなったりします。
5年後に目指すべき事業の姿から、現在にかけて逆算して考え、1年後、3年後と細かく目標を立てていくことも有効な手段です。
事業計画の作成
事業のビジョンが明確になったら、次に事業計画を作成していきましょう。
事業計画書を書き出す前に、洗い出すべきポイントは下記の3つです。
- 事業を通じて自分が提供したい価値
- 地域が求めるニーズや課題
- 事業として収益を得る手段
長期的にビジネスを成功させるためには、事前の準備が非常に大切になります。
とくに移住を伴う起業は、移住先の環境や市場をしっかりと把握しておくことが重要です。起業の予定地に足を運んでみたり、リサーチャーに依頼するなどの対策を検討しておきましょう。
起業と移住の準備
事業計画の準備ができたら、起業と移住の準備をしましょう。
起業をするには、資金だけでなく人材や事業所などの準備も必要です。一般的に開業資金は、事業資金や設備費用と、ランニングコストを合算して6か月分ほどを見込んでおくことが、求められます。
また人件費には、月給だけでなく労災保険料、雇用保険料、健康保険料、厚生年金保険料なども発生します。
さらに、オフィスのテナント代や水道光熱費、通信費が発生することも考慮したうえで、収支のバランスが保てる計画を立案しましょう。
また、現住所から移住する際には、移住に伴う準備や資金の用意も欠かせません。移住するまでに必要な準備や引越しなどについては、あらかじめ整理しておくことをおすすめします。
起業手続きを行う
準備ができたら、起業手続きを行います。
起業は、個人事業主の場合と、会社を立ち上げる場合で異なりますので、それぞれ説明していきます。
個人事業主の場合
個人事業主の方が起業するために必要な手続きは、下記の通りです。
- 開業届(個人事業主の開業・廃業等届出書)の提出
- 青色申告承認申請書の提出
個人事業主は、開業届を税務署に提出すれば完了です。
また、青色申告が必要な場合には、「青色申告承認申請書」も提出する必要があります。青色申告とは、最大65万円の特別控除が受けられる確定申告の種別のことです。
会社を立ち上げる場合
法人を設立する場合に必要な手続きは、下記の通りです。
- 基本事項の決定
- 定款作成
- 資本金の払込み
- 登記書類作成
- 法務局への登記申請
会社を立ち上げる場合には、「法人設立届出書」を税務署に提出し、定款、登記事項証明書、株主名簿、設立趣意書、設立時貸借対照表などを準備したうえで、担当行政で申請を行う必要があります。
基本事項とは、屋号や会社員、役員報酬、資本金のことです。会社を立ち上げるときには、まずは基本事項を決定しましょう。
また定款とは、会社を運営するルールともいえます。
定款には下記の内容を記載する必要があるので、確認しておきましょう。
- 事業目的
- 商号
- 本店所在地
- 資本金
- 発起人の氏名
- 名称および住所
- 発行可能株式総数
なお、登記に必要な書類は業種や会社の形態によって異なるので注意しましょう。
北海道で事業スタート
開業届や、法人設立届出書の提出および移住が完了したら、事業を開始していきましょう。
事業を開始しても軌道に乗らなかったり、事業方針に迷ったりすることも、ときにはあるでしょう。事業の課題や困難があったときには、「起業したきっかけや事業に対する想い」をあらためて振り返ることが大切です。
また、北海道へ移住し新天地で生活することに慣れることや、地域の特性を理解するまでに時間がかかることも多いです。移住前に、北海道の地域特性や、市場について情報収集しておくことで、事業のスタートをスムーズにすることにつながるでしょう。
北海道で起業する際に支援や融資を提供している団体・企業
北海道で起業するうえで、「生活面」「北海道の市場」など、あらかじめ情報収集しておくことが大切です。
また、起業する際の手続きや、準備しておくべきことがわからず、何からするか悩んでいる人もいるでしょう。
相談内容にあった場所を利用できるように、それぞれの違いについて理解を深めておきましょう。
国や地方自治体に限らず、団体や企業が支援に参入しているケースもあります。
北海道商工会連合会
北海道で、農林漁業に関わる事業を展開していきたいと考えている場合には、北海道商工会連合会へ相談するのがおすすめです。
北海道商工会連合会には、小規模事業者の経営に詳しい経営指導員をはじめとする職員が在籍しており、起業や新事業展開などの相談や支援に活用できます。
北海道商工会連合会では、農林漁業者との連携による企業の助成に取り組んでいます。「北海道農商工連携ファンド」を通じて、農林漁業の中小事業者を支援しています。
日本政策金融公庫
起業前の相談だけでなく、起業後も相談できる場所を探しているのであれば、日本政策金融公庫が適しています。
日本政策金融公庫では、創業に関する相談から事業計画書の書き方、起業後の経営についてもワンストップで相談することが可能です。
起業時に利用できる、融資についても相談することもできます。お金のことを相談できることは、経営者にとって精神的な安心感にもつながります。
北海道中小企業総合支援センター
北海道での起業にまつわる情報収集、中小企業診断士による経営の相談などをしたい場合には、北海道中小企業総合支援センターに相談してみましょう。
経営相談やアドバイス、企業診断だけでなく、北海道の産業情報の収集および提供も行なっています。北海道の市場環境を把握するためにぴったりな場所で、移住の前後で活用可能です。
北海道中小企業総合支援センターでは、北海道で開業・創業しようとする方を対象に、創業や経営に関するさまざまな相談対応を行っています。
北海道創業サポート相談室
起業に関する融資や助成制度の相談を検討している方は、北海道創業サポート相談室へ相談してみてください。
北海道創業サポート相談室では、中小企業やNPO法人などの創業に関する融資制度・ 助成制度について、担当課の訪問だけでなく電話相談も可能です。
北海道庁をはじめ、全道各地の振興局内に設置されているため、移住先の最寄りで気軽に相談できます。
Open Network Lab
Open Network Labは、北海道ならではの資産を活かし、課題解決に取り組むスタートアップを支援している会社です。「起業人材育成プログラム」や「OpenNetworkLabHOKKAIDO」などを通じて、次世代の人材育成に取り組んでいます。
産官学一体型でスタートアップ企業への投資から育成、事業化の支援までも行っており、企業に関するビジネス的なトータルサポートが受けられます。
北海道新聞社や道内の大学や企業・団体とのつながりもあるので、北海道で地域課題解決を目指す起業家の方はチェックしておくのがおすすめです。
北海道で起業するなら支援制度を活用しよう
今回は、北海道へ移住して起業をするメリットや、利用可能な支援制度について解説してきました。起業には、準備資金だけでなくランニングコストといった、事業を継続するために必要なお金も発生します。
都心を離れ北海道へ移住することで、コストを抑えながら事業を軌道に乗せていけるのは、非常に魅力的です。
また、北海道に特化したサービス、まちづくりや地域活性化に携われるのも、北海道での起業ならではともいえるでしょう。
これから起業したい方は、北海道での暮らしの魅力を知り、北海道だから実現できるビジネスプランを考えてみるのはいかがでしょうか。