店舗兼住宅とは?おすすめの間取りや活用のポイントを徹底解説

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店舗兼住宅とは?おすすめの間取りや活用のポイントを徹底解説

店舗兼住宅とは、一つの建物のなかに居住スペースと店舗が共存する物件です。店舗兼住宅では、住居から仕事場へと即座に移動できます。

そのため、「夜遅くまで営業しており、自宅に帰るのが深夜を過ぎる」という方には、非常に利便性の高い物件だといえるでしょう。

また、店舗兼住宅では住宅ローンを利用できる可能性があるため、支払利息の抑制にも効果を発揮します。

本記事では、このような店舗兼住宅の魅力を徹底的に解説します。店舗兼住宅ならではの間取りの設計方法や、物件を有効に活用するポイントも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

店舗兼住宅(店舗兼用住宅)とは

店舗兼住宅(店舗兼用住宅)とは

店舗兼住宅(店舗兼用住宅)とは、同じ建物内に店舗と住宅の両方が存在する物件です。

建物内に店舗と住宅が存在する物件には、ほかにも店舗併用住宅がありますが、それぞれの要件がやや異なります。

例えば、店舗部分と居住部分の区分け方法によって、両者を区別するのが一般的です。

  • 店舗兼住宅:店舗部分と居住部分がつながっており、ともに行き来できる物件
  • 店舗併用住宅:店舗部分と居住部分が明確に区分され、両者が独立している物件

また、店舗併用住宅と違い、店舗兼住宅は条件次第で第一種低層住居専用地域に建築できるメリットがあります。

第一種低層住居専用地域とは、建物の高さ制限や外壁の後退距離制限などがある、優れた住環境を保護するためのエリアで、原則として店舗を建てられません。しかし、店舗兼住宅であれば、次のすべての条件を満たしたうえで店舗やオフィスを構えられます。

  • 延べ面積の2分の1以上が居住部分であること
  • 店舗部分の床面積が合計50平方メートル以内であること
  • 喫茶店や食料品店など、店舗部分が建築基準法施行令で掲げる用途に該当すること

これにより店舗兼住宅では、ターゲット層の拡張や集客効果の向上といったビジネス上の恩恵を得られるほか、閑静で住み心地の良い住宅地に住居を建てられます。

参考:e-Gov|建築基準法施行令(第130条の3)

店舗兼住宅のデメリット

店舗兼住宅のデメリット

店舗兼住宅を取得または賃借する際は、メリットとデメリットの両面を理解し、自身との向き・不向きを冷静に判断することが重要です。

ここでは、まず複数のデメリットを紹介します。

初期費用が高額になりがち

店舗兼住宅は、同じ建物内に店舗と住宅が存在するため、一般的な物件よりも初期費用が高額になる傾向があります。特に、設備工事や外構工事が高額になりやすい点には、注意が必要です。

例えば、建物のなかに飲食店を構える場合、生活用と事業用の両面で、配線工事や電気通信工事を実施する必要があります。厨房や客席を配置するために、工事が大がかりになるケースも珍しくありません。

さらに、生活するための庭や、来店客向けの駐車場など、外構工事も生活用と事業用の2つの側面に配慮しなければなりません。

配慮すべき箇所が多い分、想定外の追加費用が生じやすく、予算を超えてしまう可能性も考えられるため、あらかじめ余裕のある予算を設定しましょう。

融通が利きにくい

店舗兼住宅には上記のほかにも、いくつか注意すべきポイントが存在します。

店舗と住宅の両方に合ったバランスの良い土地が見つかりにくい、需要が低く将来的な売却が難しいなど、一般的な物件に比べ、やや融通が利きにくいのは店舗兼住宅ならではの難点です。

そのため、いちから建物を建築する場合は、土地探しにある程度の時間がかかることを見込んでおくと良いでしょう。取得した物件で中長期的に事業を継続できるよう、あらかじめ入念な市場調査を行い、見込みの売上高や来店客数を予測しましょう。

また、入居後の生活感や仕事スタイル、あるいは物件が不要になった際の売却方法などを、事前にシミュレーションすることも重要です。

店舗兼住宅のメリット

店舗兼住宅のメリット

続いては、店舗兼住宅のメリットを解説します。

メリット・デメリットの両面を理解しておけば、入居後に後悔したり、失敗に陥ったりするリスクを抑えられます。

住宅から店舗への移動時間が減る

本来、住宅から仕事場へと移動するには、自動車や電車などの交通手段を利用するケースも多く、ある程度の時間がかかります。

その点、店舗兼住宅は、同じ建物内で生活スペースと仕事場を行き来できるため、移動時間がほとんどかかりません。

結果として、空いた時間を自由に活用できるのがメリットです。

仮に、以前までは仕事場への移動に1時間かかっていた場合、店舗兼住宅に住み始めると、休息や趣味などに費やせる時間が増えます。余裕ができた1時間分を店舗の営業時間に加えるのも一案です。

固定資産税の軽減措置が適用される

店舗兼住宅のように一つの建物に住宅と店舗をまとめたほうが、両者を別々に建てるよりも、土地の固定資産税を抑えられる可能性があります。

店舗兼住宅は一般的な住居と同じく、特定の条件を満たすと住宅用地特例が適用されます。条件は次の通りで、土地の固定資産税が最大6分の1に軽減されるのが特徴です。

区分固定資産税都市計画税
小規模住宅用地(住宅用地で住宅1戸あたり200平方メートルまでの部分)価格 × 1/6価格 × 1/3
一般住宅用地(上記以外の住宅用地)価格 × 1/3価格 × 2/3

住宅用地として該当するかどうかは、以下の表で判断できます。土地の面積に表内の率を乗じた面積が住宅用地です。

家屋の種類居住部分の割合と率
以下に当てはまらない家屋・居住部分の割合が1/4以上1/2未満:0.5
・居住部分の割合が1/2以上:1.0
地上階数5以上かつ耐火性を備えた家屋・居住部分の割合が1/4以上1/2未満:0.5
・居住部分の割合が1/2以上3/4未満:0.75
・居住部分の割合が3/4以上:1.0
※家屋の床面積の10倍に値する住宅用地の場合、床面積を10倍して上表の率を乗じる

例えば、2階建ての店舗兼住宅で、居住部分が2分の1以上であれば、「1.0」の率が適用されます。すなわち、その土地はすべて住宅用地とみなされます。

参考:東京都主税局|固定資産税・都市計画税(土地・家屋)

住宅ローンを利用できる可能性がある

店舗兼住宅とは異なり、単独で店舗を建てる際は、原則として住宅ローンが利用できません。一方、店舗兼住宅には住居部分が含まれているため、条件次第で住宅ローンを利用できます。

金融機関にもよりますが、ビジネスローンよりも住宅ローンのほうが低金利で利用できる可能性があります。また、一定の要件を満たすと、住宅ローン控除が適用されるのも利点です。

店舗兼住宅で住宅ローンを利用する条件は、金融機関ごとに差があります。

一般的には、次のような条件を設定しているケースが多いため、店舗部分と居住部分のレイアウトを考える際には注意が必要です。

  • 建物の床面積に対し居住部分が2分の1以上であること
  • 契約者自身で店舗部分を使用すること

店舗兼住宅の間取りを設計するコツ

店舗兼住宅の間取りを設計するコツ

一般的な住宅や店舗に比べ、店舗兼住宅は間取りの面で配慮すべき点が多い物件です。

店舗部分と居住部分のバランスに欠け、住みやすさや働きやすさを阻害しないよう、以下のポイントを意識すると良いでしょう。

  • 店内が見えるよう1階に店舗を配置する
  • 店舗と住宅の動線を区別する
  • 売上に直結しない設備の配置を考慮に入れる
  • 建物内の遮音性を意識する

店内が見えるよう1階に店舗を配置する

2階建ての物件であれば、2階部分に住居を、1階に店舗を配置するのがおすすめです。

特に、飲食店や小売店といった顧客が直接店舗を訪れる業種では、道路からの視認性が集客に大きな影響を与えます。誰もが気軽に来店できるよう、1階に店舗を配置すれば、高い集客効果が見込めるでしょう。

一方、美容室やエステ店などの予約客が中心の店舗なら、2階に店舗を配置するのも悪くありません。

ただし、その場合は、1階の居住部分に対するセキュリティ面に不安が残ります。居住部分には鍵を付けたり、堅牢な金庫を設置したりといった工夫が必要です。

店舗と住宅の動線を区別する

店舗兼住宅では、店舗を利用する顧客の動線と、住居を利用する入居者自身の動線が、重ならないように配慮することが重要です。

両者を明確に区別すると、来店客の目を気にせずに済み、プライベート空間を確保できます。

そのためには、店舗と住居に別々の出入口を設けるのが効果的です。

ただし、店舗兼住宅の要件を満たすために、店舗と住居を行き来できるレイアウトを考えなければなりません。そのため、店舗から住居、住居から店舗へと移動する動線も、あわせて確認しておきましょう。

売上に直結しない設備の配置を考慮に入れる

売上に直結しない設備とは、店内のトイレやバックヤードなどを指します。

店舗兼住宅では、店舗部分の面積が制限される場合もあるため、このような設備の配置場所やスペースを入念に検討することが大切です。

特にバックヤードは、商品や食材の収納場所であると同時に、従業員の着替え・休憩用のスペースを兼ねています。そのため、バックヤードがあまりにも狭いと、従業員満足度が低下する恐れがあるので、十分に注意が必要です。

建物内の遮音性を意識する

店舗兼住宅で重要となるのが建物内の遮音性です。

店内が騒がしいと、入居者自身が騒音問題に悩まされます。反対にプライベートで騒音を発すると、来店客に迷惑をかけてしまいます。

特に、幼い子どもの泣き声やテレビの音などには注意が必要です。

そのため、店舗兼住宅の間取りを考える際は、店舗部分と居住部分が隣り合わないように配慮すると良いでしょう。

また、店舗部分の真上に居住部分がある場合、足音が階下に響く可能性があるため、距離を離すほうが賢明です。

店舗兼住宅を上手に活用するためのポイント

店舗兼住宅を上手に活用するためのポイント

単独の住宅や店舗とは仕様が大きく異なる店舗兼住宅に住むからこそ、この機会に上手く活用できるコツを理解しておきたいところです。

ここでは、店舗兼住宅を上手に活用するための2つのポイントを解説します。

  • 経費計上の仕組みを上手く活用する
  • 店舗兼住宅が得意な相談先を見極める

経費計上の仕組みを上手く活用する

単独で店舗を保有している場合でも、事業に要した費用は経費として計上できます。一方の店舗兼住宅では、経費として計上できる金額が増える可能性があります。

特に、住宅ローンの元本を除く利息部分や、住宅の取得・維持費などを計上できるのは、大きなメリットだといえるでしょう。

そのほか、広告費や水道光熱費など、店舗運営で生じる一般的な費用も経費に該当します。

ただし、経費の金額は店舗部分の床面積で按分する必要があるため、不安があれば、税理士をはじめとする専門家に相談することをおすすめします。建物全体の間取りにも影響する要素なので、想定内の床面積でどの程度の経費を計上できるのか、事前にシミュレーションしておくと良いでしょう。

店舗兼住宅が得意な相談先を見極める

店舗兼住宅を取得する際は、経験豊富な施工会社に相談を持ちかけましょう。

日本では、都市計画にもとづく用途地域が定められており、エリアごとに細かい規制や条件が存在します。店舗兼住宅の場合、第一種低層住居専用地域への建築可否が重要なポイントとなるでしょう。

また、店舗部分と居住部分を明確に区別する必要があるため、間取りの設計方法や設備・外構工事の方法などに工夫が要ります。

このような店舗兼住宅特有の性質を考慮すると、店舗兼住宅の施工実績があり、専門的な知識を持つ施工会社を探すべきでしょう。公式サイトや比較サイト、知人の口コミなどをもとに、適切な相談先を選び分けてください。

店舗兼住宅で理想的なワークライフバランスを実現させよう

店舗兼住宅で理想的なワークライフバランスを実現させよう

店舗部分と居住部分が同一の建物内に存在し、両者を自由に行き来できるのが店舗兼住宅の特徴です。

店舗兼住宅を上手に活用すれば、住宅ローンや固定資産税の住宅用地特例を利用し、ランニングコストを抑えられる可能性があります。また、移動時間をかけずに仕事場へとアクセスできるため、有効活用できる時間が増え、理想的なワークライフバランスが実現するでしょう。

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この記事を書いた人: ラルズネット編集部

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