独立開業にあたっては、自身でテナント物件を探すほか、チェーン形態を利用して店舗を開くこともできます。
実は、このチェーンには複数の形態が存在するのをご存じでしょうか。
例えば、耳にする機会が多いチェーンやフランチャイズという言葉にも、それぞれ明確な違いがあります。これらは言葉の意味が異なるだけでなく、本部と各店舗の関係性や店舗の運営方法など、ビジネスの根幹にかかわる要素にも大きな違いが存在します。
そのため、店舗展開を考えている方は、チェーン形態の違いをしっかりと理解しておくことが大切です。
本記事では、チェーンとフランチャイズの違いを5つの比較要素をもとに解説します。ぞれぞれのメリットとデメリットについても解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
チェーンとフランチャイズの違い

チェーンとは、複数の店舗を統一されたブランドやビジネスモデルにもとづいて展開する形態です。
このチェーンという言葉は、一般的にレギュラーチェーンとして認識されています。また、チェーンにはほかにも、フランチャイズチェーンやボランタリーチェーンの種類が存在します。
ここでは、よく混同されやすいレギュラーチェーンとフランチャイズチェーンの違いを解説します。
比較要素 | チェーン (レギュラーチェーン) | フランチャイズチェーン |
---|---|---|
本部と各店舗の関係性 | 同一の資本で結びついている | 両者が別々の資本を持ち、フランチャイズ契約で結びついている |
事業目的 | 本部企業の利益を最大化 | 本部の利益を最大化、加盟店は受け持つ店舗での利益を最大化が主な目的 |
店舗の運営方法 | 本部がチェーン全体の方針を決定 | 本部のガイドラインに従いつつ、各店舗の運営方針が反映される |
人材の活用方法 | 本部が採用や人事管理を行う | 加盟店のオーナー自ら従業員を雇用する |
出店地域 | 本部が一元的に出店地域を検討 | テリトリー制とエリア制で展開地域を決定 |
本部と各店舗の関係性
レギュラーチェーンとは、本部が資本を出して各店舗の経営や管理を行う形態です。つまり、本部と各店舗は資本によって結びついており、第三者と契約を締結するわけではありません。
一方のフランチャイズチェーンは、本部が第三者である事業主とフランチャイズ契約を結び、複数の店舗を展開します。フランチャイズチェーンに加盟した事業主は、店舗の名称やロゴ、運営ノウハウなどを本部から提供してもらえますが、資本は本部と加盟店が別々に管理しています。
このように資本の保有者が異なることから、経営主体にも違いが現れます。
レギュラーチェーンの経営主体はあくまで本部、フランチャイズチェーンは加盟店が経営主体になるのが特徴です。
事業目的
レギュラーチェーンとフランチャイズチェーンは経営主体が異なるため、事業目的にも違いがあります。
本部と店舗で資本を共有しているレギュラーチェーンは、すべての店舗収益が本部企業の利益となります。そのため、本部と店舗にかかわらず、本部企業の利益を最大化するのが事業目的です。
これに対してフランチャイズチェーンの事業目的は、本部と加盟店によって異なります。本部では本部企業の利益を最大化、加盟店は受け持つ店舗での利益を最大化が主な目的です。
店舗の運営方法
レギュラーチェーンの場合は本部が店舗の運営方針を決定し、拘束する力を持ちます。
また、店舗を運営するための従業員も、本部から派遣されることが一般的です。つまり、トップダウン式で本部からリソースを分散する性質を備えています。
フランチャイズチェーンの場合は、本部が定めるガイドラインに従いつつ、加盟店の経営スタイルがある程度反映されます。レギュラーチェーンに比べ、各店舗における運営方針の柔軟性に優れるため、地域の文化や需要に合わせやすいのが利点です。
人材の活用方法
レギュラーチェーンでは、本部が従業員との雇用契約を結び、人材の採用や配置は本部が統一的に管理します。店舗管理者はもちろん、その下で働く一般従業員も本部から派遣するのが一般的です。
一方のフランチャイズチェーンでは、加盟店のオーナー自ら人材を採用します。従業員は加盟店と雇用契約を結ぶため、本部との雇用関係が生じません。
店舗の運営方針や現在の課題などは、オーナー自身で把握していることが多いため、より実態に則った採用計画を構築できるのがメリットです。
出店地域
レギュラーチェーンの場合は、本部の意向にもとづいて出店地域が選定されます。市場占有率やホワイトスペースなどを検討しながら、一元的に出店戦略を考えるのが一般的です。
ただし、本部の資金で出店する必要があることから、一度に大量の店舗を展開することが難しく、スピード感に欠ける傾向があります。
フランチャイズチェーンの出店地域は、特定地域での独占権を加盟店に与える「テリトリー制」と、当該エリアでの複数店舗展開の権利を与える「エリア制」の、主に2つの制度によって成り立っています。
チェーン(レギュラーチェーン)のデメリット・メリット

レギュラーチェーンには多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。
これから店舗展開を行う際は、事前にレギュラーチェーンの長短をしっかりと把握しておくことが重要です。
デメリット
レギュラーチェーンで店舗展開を行うデメリットは次の通りです。
- 店舗数を拡大するために膨大なリソースが必要
- 店舗運営の自由度が低い
- 地域に密着した店舗運営が難しい
レギュラーチェーンの店舗展開は、本部の資金によって行われます。そのため、短期間に大量の店舗を出店するためには、それだけ資金力が求められます。
また、統一感のある店舗展開を行うレギュラーチェーンの場合、各店舗の自由度が低くなる点もデメリットです。地域の特性や慣習、気候などに大きな違いがある場合は、ある程度自由な店舗運営が求められる場合があります。
例えば、北海道と沖縄でレギュラーチェーン店舗を運営する場合、必ずしも同じような商品やサービスが好まれるとは限りません。このような地域は、風習や気候などが大きく異なるためです。
メリット
レギュラーチェーンには次のようなメリットがあります。
- 店舗と本部のつながりが強い
- 人材育成を行いやすい
- 店舗運営に第三者の意思が介在しない
レギュラーチェーン展開のメリットは、本部と店舗が強いつながりで結ばれていることにあります。
そのため、本部と店舗、店舗と店舗との間でスムーズなコミュニケーションを図れるのがメリットです。円滑な情報共有を行えることから、経営方針や運営ノウハウなどが店舗ネットワーク全体に浸透しやすくなります。
また、本部が店舗スタッフを直接雇用するレギュラーチェーンは、従業員ごとのスキルや能力を一元管理しやすい傾向があります。その情報をもとに効率良く人材育成を行えるのも、レギュラーチェーンの利点の一つです。
フランチャイズチェーンのデメリット・メリット

続いて、フランチャイズチェーンのデメリットとメリットを解説します。
事前にデメリットとメリットを比較することで、自身に合った店舗の展開方法が明らかになります。
デメリット
フランチャイズチェーンのデメリットは次の通りです。
- 加盟金やロイヤリティを支払う必要がある
- ブランド毀損による損害賠償のリスクが生じる
フランチャイズチェーンに加盟するためには、加盟金やロイヤリティなどを支払わなければならず、費用面での負担が大きいデメリットがあります。
そのため、チェーンに加盟せず、自身で考えたブランドで開業したほうが、より大きなメリットを感じることもあるでしょう。
レギュラーチェーンに比べて店舗運営の自由度が高いフランチャイズチェーンですが、本部が定めたルールやガイドラインには最低限従わなければなりません。ルールを逸脱し、ブランドイメージを毀損するようなことがあれば、損害賠償などの法的責任を負う可能性がある点には注意が必要です。
メリット
フランチャイズチェーンには複数のデメリットがあるものの、同時に数多くのメリットも存在します。
- 有名ブランドを利用したスピーディーな店舗展開が可能
- 本部が持つ店舗運営のノウハウを習得できる
- 採用計画をはじめ経営に関する自由度が比較的高い
フランチャイズチェーンの最大のメリットは、スピーディーにブランド店舗を展開できる点です。
本部が有名なブランドであれば、それだけ高い集客効果が期待できます。つまり、開業から安定的な利益確保までの期間を短縮できるということです。
さらに、本部が持つ店舗運営のノウハウを提供してもらえるため、開業経験のない方でも安心です。将来的に自身のブランドを持ちたい方は、まずフランチャイズチェーンで店舗運営の勉強をするのも一つの手段だといえるでしょう。
フランチャイズチェーンの向き・不向き

チェーン加盟店として開業するなら、比較的ハードルが低いフランチャイズチェーンを検討する方も多いでしょう。
そこで、ここではフランチャイズチェーンのメリット・デメリットをもとに、向いている人と向いていない人の特徴を解説します。
フランチャイズチェーンに向いていない人の特徴
自分自身のブランドを持ちたい方や、独自のコンセプトを店舗に反映させたい方は、フランチャイズチェーンには向いていません。フランチャイズチェーンは、良くも悪くも本部のブランドに店舗運営が縛られているためです。
フランチャイズチェーンは、加盟店オーナーにある程度の裁量権が与えられる傾向にあります。しかし、ブランドの枠組みを超えた店舗運営を行うのは困難です。
また、商品展開に関する規制やロイヤリティの支払いなど、加盟店として従うべきルールも多くあります。
このような型にはまらず独自の経営スタイルを貫きたい方は、自分自身で店舗のコンセプトや出店地域を決めるほうが向いているでしょう。
フランチャイズチェーンに向いている人の特徴
将来的に自分の店舗を持てるよう、運営ノウハウを取得したい方にはフランチャイズチェーンが向いています。
フランチャイズチェーンでは、経営に関する知識や店舗運営のマニュアルなど、本部が持つ既存のパッケージを利用できます。このパッケージを利用し、加盟店として本部の売上に貢献できれば、店舗運営に関する自信がつくでしょう。
フランチャイズチェーンの加盟店は、本部から提示されるルールを守りつつ、状況に応じて臨機応変な対応が求められます。
そのため、本部の指示に含まれている意図を的確に読み取りながら、自ら考えて行動できる人はフランチャイズチェーンと相性が良いといえます。
店舗探しには「テナント連合隊」を活用しよう

今回は、レギュラーチェーンとフランチャイズチェーンの違いについて解説しました。レギュラーチェーンは、あくまで本部によるチェーン展開なので、これから開業を目指す方にとってはフランチャイズチェーンが向いています。
とはいえ、チェーンの形態が自身に合わず、自分で物件を見つけて店舗を運営したいという方もいるはずです。
「テナント連合隊」では、物件の広さや賃料などをワンクリックで検索できるほか、詳細な条件で物件情報を絞り込めます。テナント探しを検討している方は、ぜひ活用してみてください。
テナント物件をお探しの方へ
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路面店、居抜き物件コーナーなど、事業者目線で詳細な検索ができるようになっています。
『テナント連合隊』が、これから出店を考えている事業者様のお役に立てれば幸いです。