居酒屋開業に必要な資格と届出まとめ|よくある疑問も紹介

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居酒屋開業に必要な資格と届出まとめ|よくある疑問も紹介

居酒屋を開業する際は、エリア選定や物件探し、必要な設備の確認といったさまざまな準備が必要です。

そのなかでも特に重要なのが、資格の取得や届出です。この手続きを忘れた場合、刑罰や行政処分を受けてしまい、営業できない可能性も考えられるため、必要な資格や届出をしっかりと理解しておく必要があります。

しかし、居酒屋では必要な資格や届出が多岐にわたり、「どのような手続きが必要なのか」「何から手を付けて良いのかわからない」と悩んでしまうケースも多いでしょう。

そこで本記事では、居酒屋開業に必要な資格と届出について詳しく解説します。資格を取得する際のよくある疑問もまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

居酒屋の開業時に資格や許可がないとどうなる?

居酒屋の開業時に資格や許可がないとどうなる?

資格や許可を取り忘れると、場合によっては刑罰の対象となる可能性があります。

例えば、飲食店営業許可を申請するには、食品衛生責任者の資格が必要です。仮に、飲食店営業許可を取得せず営業を開始した場合、2年以下の懲役、または200万円以下の罰金が科されます(食品衛生法 第82条)。

そのほか、許可の取り消しや営業停止などの行政処分を受けることもあります。

居酒屋を開業する際は、資格や届出の要否をよく確認し、取り忘れのないよう注意しましょう。

参考:東京都保健医療局 食品衛生の窓|営業許可・届出の概要
   e-Gov|食品衛生法

居酒屋を開業するための資格は2種類に分かれる

居酒屋を開業するための資格は2種類に分かれる

居酒屋を開業する際に必要となる資格は、次の2種類に分類できます。

  • 食品衛生責任者
  • 防火管理者

食品衛生責任者

居酒屋をはじめとする飲食店では、営業する際に必ず食品衛生責任者を設置しなければなりません。

次のいずれかの要件を満たすと、食品衛生責任者として認定されます。

  • 食品衛生法で定められている食品衛生監視員、または食品衛生管理者の資格要件を満たす
  • と畜場法で定められている作業衛生責任者、または食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律で定められている食鳥処理衛生管理者の資格要件を満たす
  • 調理師・製菓衛生師・栄養士・船舶料理士のいずれかの資格を有する
  • 都道府県知事が認定している講習会を受講し、修了証書を受け取る

上記のうち、4つ目の講習会を受講する方法が最も手軽です。

例えば、東京都では、一般社団法人 東京都食品衛生協会が「食品衛生責任者養成講習会」を実施しています。食品衛生学や食品衛生法などの科目があり、受講時間は6時間程度です。

食品衛生協会は全国に支部があるほか、eラーニングにも対応しているため、遠方まで出向く必要がありません。

参考:東京都保健医療局 食品衛生の窓|営業許可・届出の概要

防火管理者

店舗の収容人数がスタッフを含めて30名以上の場合、防火管理者を設置する必要があります。

防火管理者は、店舗の広さによって「甲種防火管理者」と「乙種防火管理者」の2種類に分かれます。

  • 延べ面積が300平方メートル以上:甲種防火管理者
  • 延べ面積が300平方メートル未満:甲種防火管理者または乙種防火管理者

日本防火・防災協会や各市町村の消防長などが実施する、「防火管理講習」を受けると、上記のいずれかの資格を取得可能です。

甲種の場合は、約10時間の講習を2日にかけて受講します。乙種では、1日で5時間の講習を受けます。

消防設備点検資格者や自衛消防業務講習修了者であれば、申請により一部科目の受講が免除される仕組みです。

参考:東京消防庁|防火管理者が必要な防火対象物と資格
   一般財団法人 日本防火・防災協会|防火管理講習

居酒屋を開業する際は届出も忘れずに

居酒屋を開業する際は届出も忘れずに

居酒屋を運営するには、前述した資格が必要になるとともに、いくつかの許可を取得しなければなりません。特に、次のような届出は忘れずに行いましょう。

  • 飲食店営業許可
  • 深夜酒類提供飲食店営業開始届出
  • 特定遊興飲食店営業許可
  • 風俗営業許可申請
  • 防火対象物使用開始届
  • 火を使用する設備等の設置届

飲食店営業許可

飲食業を開始する場合、施設工事が完成する10日ほど前に営業許可を取得する必要があります。

管轄の保健所に書類を提出し、検査を通過すれば許可証が発行される仕組みです。

申請時に必要なものは次の通りです。

  • 営業許可申請書
  • 施設の構造や設備がわかる図面
  • 食品衛生責任者手帳など、食品衛生責任者の資格を証明する書類
  • 水道水・専用水道・簡易専用水道以外の水を使用する際は、水質検査成績書
  • 許可申請手数料

図面に関して不安がある場合は、内装工事を行う前に管轄の保健所に相談しておきましょう。

また、検査が混み合うことも考えられるため、余裕があれば、施設工事が完成する2週間ほど前に申請するのがおすすめです。

参考:東京都保健医療局 食品衛生の窓|営業許可・届出の概要

深夜酒類提供飲食店営業開始届出

飲食店で0時以降に酒類を提供する際、管轄地域の警察署で行う手続きです。

届出に必要な書類は次の通りです。

  • 深夜における酒類提供飲食店営業開始届出書
  • 営業方法を記載した書類
  • 施設の構造や設備がわかる図面
  • 本籍が記載された住民票の写し
  • 法人の場合は、定款・法人登記事項証明書・役員全員の住民票

上記のうち、「深夜における酒類提供飲食店営業開始届出書」と「営業方法を記載した書類」は、警視庁のホームページに様式が掲載されています。

風俗営業許可

店舗の営業形態が、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の第2条第1~5号に定められている風俗営業にあたる場合、風俗営業許可の申請が必要です。

次のような飲食店は風俗営業に該当します。

  • 遊興や飲食を目的に来店客を接待する営業
  • 施設内の照度が10ルクス以下
  • 外部から店内を見通すのが困難で、5平方メートル以下の客席がある

風俗営業許可は深夜酒類提供飲食店営業開始届出と同様、管轄地域の警察署に書類を提出します。必要な書類は次の通りです。

  • 許可申請書
  • 営業方法を記載した書類
  • 使用承諾書や賃貸契約書など、施設の使用に関する権原保有を疎明する書類
  • 施設の構造や設備がわかる図面・施設周辺の略図
  • 本籍が記載された住民票の写し
  • 法人の場合は、定款・法人登記事項証明書・役員全員の住民票、および風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の第24条第2項各号に掲げる者のいずれにも該当しないことを誓約する書面

防火対象物使用開始届出

防火対象物を利用する際は、管轄地域の消防署へ使用開始の届出をしなければなりません。

防火対象物は消防法で定義されており、そのなかには飲食店が含まれています。

仮にビルの一室を借りて居酒屋を開業するなど、防火対象物の一部を使用する場合でも、工事の有無にかかわらず届出が必要です。

さらに、開業に伴って工事を行う際は、防火対象物使用開始届出書とともに、防火対象物工事等計画届出書を提出する必要があります。そのほか、居抜き物件で前テナントから設備を引き継ぎ、居酒屋へと業態を変更する場合も同様、上記2種類の届出書を提出しましょう。

使用開始の7日前という書類の提出期限が設定されているため、注意が必要です。

参考:総務省消防庁|平成30年版 消防白書
   東京消防庁|防火対象物の使用開始の届出をしよう

火を使用する設備等の設置届出

厨房設備や温風暖房機などを設置する場合は、防火対象物使用開始届出と同じく、管轄地域の消防署へ火を使用する設備等の設置届出書を提出しましょう。

書類の提出後、消防署の検査を受ける必要があります。

火を使用する代表的な設備は次の通りです。

  • 取入口から下方に排気するタイプ、または合計入力値が120kW以上の厨房設備
  • 風道を使用するタイプ、または入力値が70kW以上の温風暖房機
  • 入力値が70kW以上のヒートポンプ冷暖房機
  • 固体燃料を用いる、または据付け面積1平方メートル以上の炉

提出期限は地域によって異なるため、各自治体のホームページをご確認ください。

参考:東京消防庁|火を使用する設備等の設置(変更)届出書

居酒屋開業時の資格に関するよくある疑問

居酒屋開業時の資格に関するよくある疑問

最後に、資格の取得や届出をする際のよくある疑問を紹介します。

開業時に調理師免許は必要?

居酒屋などの飲食店を開業する際は、調理師免許は必要ありません。

ただし、調理師の資格を保有していると、食品衛生責任者の講習が免除される利点があります。

また、来店客に向けて調理のプロである点をアピールできるのもポイントです。

調理師試験では、公衆衛生学や栄養学、調理理論など、調理や食品に関する体系的な知識が求められます。社会的信用度の高い国家資格なので、上手くアピールすれば、店舗の信頼性向上につながるでしょう。

店舗の規模によって必要な資格は異なる?

居酒屋開業で必要な資格は、店舗の規模によって大きな変化はありません。

異なる点といえば防火管理者の設置要否です。

防火管理者は、店舗の収容人数や延べ面積によって要件が異なります。スタッフを含めた店舗の収容人数が30名以上の場合は、必ず防火管理者を設置しましょう。

なお、従来は延べ面積150平方メートル未満の飲食店では、消火器具の設置が義務付けられていませんでした。しかし、2019年10月の消防法改正により、すべての飲食店で消火器具の設置が義務化されたため、注意が必要です。

参考:総務省消防庁|消防法施行令の一部を改正する政令等

海外で居酒屋を開店する場合も資格が必要?

海外で居酒屋を開業する際は、現地の法律をしっかりと確認しましょう。日本とは根本的なルールが異なるケースも多いためです。

例えば、インドで居酒屋を開業する場合、インド食品安全基準局や物品局などのさまざまな機関から必要な資格を取得しなければなりません。食品安全許可や食堂許可、酒類販売許可などが代表的です。

一方、シンガポールのように、雇用許可証が取得しにくい点から、日本人のシェフを派遣するのが極めて難しい国も存在します。

海外で事業を行う際は、現地の事情に詳しい、あるいは現地の弁護士や会計士に相談するのが良いでしょう。

参考:JETRO|レストランを開業する場合の手続き:インド
   JETRO|レストランを開業する場合の現地法人設立手続き :シンガポール

必要な資格を取得して居酒屋の開業に備えよう

必要な資格を取得して居酒屋の開業に備えよう

居酒屋を開業するには、食品衛生責任者や防火管理者の資格に加え、営業時間や業態によって各種届出が必要です。それぞれの要件をよく確認したうえで、資格取得や書類提出に向けた適切なスケジュールを組んでおきましょう。

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この記事を書いた人: ラルズネット編集部

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