飲食店の初期投資は早期回収を!効率的に回収する方法や適切な期間を解説

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飲食店の初期投資は早期回収を!効率的に回収する方法や適切な期間を解説

飲食店を経営するとなると、切っても切り離せないのが初期投資です。初めての場合であれば、「いくらぐらい用意したら良いのか」「回収期間はどのくらいが適切なのか」など、さまざまな面で迷うことも多いでしょう。

飲食店では厨房機器や店舗家具の購入、内装の工事費用など、多様なコストが発生します。そのため、開業前に初期投資額をしっかりと把握し、回収期間を想定しておくことが大切です。

本記事では、飲食店の初期投資額の目安や回収のポイントについて詳しく解説します。初期投資額を抑えるのに役立つ支援制度も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

飲食店の初期投資額の目安

飲食店の初期投資額の目安

飲食店を開業する際に必要な初期投資額は、1,000万円が目安です。

日本政策金融公庫の「2022年度新規開業実態調査」によると、開業費用の平均値は1,077万円。中央値は550万円です。

初期投資額は店舗の規模や大きさによって異なるため、上記の水準はあくまで目安にしかすぎません。

しかし、あらかじめ必要な資金を多めに見積もっておくと、不測の事態が発生してもスムーズな対処が可能です。

初期投資額を早めに回収すべき理由

初期投資額を早めに回収すべき理由

飲食店を開業する際、初期費用の一部を金融機関からの融資でまかなう場合もあるでしょう。その借入金額は、実際に飲食店をオープンしてから返済していくことになります。

しかし、思うように売上や利益が伸びず、初期投資の回収期間が長引くと、返済に追われて安定した経営が難しくなるでしょう。

さらに、飲食店の経営には初期費用だけでなく、賃料や水道光熱費といったランニングコストが発生します。金融機関への返済とランニングコストが重なった結果、資金を圧迫する恐れもあります。

これが初期投資額を早めに回収すべき理由です。

一方、早い段階で初期投資額を回収できれば、余剰資金が増えます。その資金を新たな投資に振り分けたり、福利厚生に還元したりと、店舗の拡大や従業員の満足度向上などに活用できるのが利点です。

そのためにも、事前に明確な回収計画を立てておくと良いでしょう。

飲食店の最適な初期投資の回収期間は?

飲食店の最適な初期投資の回収期間は?

初期投資額の最適な回収期間は、業態によって大きな差があるため、個別に判断するしかありません。

例えば、タピオカドリンクやマリトッツォなどの新規性にあふれるメニューは、売上高が流行に大きく左右されます。

多くの人々から注目されている間は、堅調に業績を伸ばせますが、その流行がいつまで続くか予測するのは困難です。そのため、なるべく早めに初期投資額を回収するほうが賢明だといえるでしょう。

一方、ラーメン屋や焼き肉屋などの定番の業態は、比較的安定した人気を誇ります。初期投資額の回収期間は早いに越したことはありませんが、このような業態では、許容できる期間が長くなります。

上記の通り、同じ飲食店でも業態やメインメニューによって、適切な回収期間には大きな差が出ます。そのため、まずは自店のコンセプトを明確にするほか、競合調査も実行しつつ、目安となる回収期間を設定しましょう。

飲食店における初期投資回収のシミュレーション

飲食店における初期投資回収のシミュレーション

初期投資額の回収を考える際は、ROIという指標が役立ちます。

ROI(Return On Investment)には「費用対効果」という意味があり、利益額に対する投資額の回収期間がわかります。計算式は次の通りです。

  • ROI(%)= 純利益 ÷ 投資額 × 100

純利益(売上原価・販売管理費・税金などを差し引いた手元に残る資金)の算出が難しい場合は、営業利益や経常利益などでも、ある程度の回収期間をイメージできます。

例えば、初期投資額が500万円で、1年間の純利益が100万円だとすると、次の計算式でROIが求められます。

  • 純利益100万円 ÷ 初期投資額500万円 × 100 = ROI20%

つまり、1年間で20%分の投資額を回収できるので、完全に回収するのは5年後です。

ただし、未開業の時点で正確な利益額をイメージするのは難しいものです。そのため、「理想的な利益額・現実的な利益額・予想を下回る利益額」の3パターンを想定し、いつでも方向性を修正できるように備えておくと良いでしょう。

飲食店の初期投資を効率良く回収するポイント

飲食店の初期投資を効率良く回収するポイント

初期投資額を回収するには、前述したROIを使ったシミュレーションのほか、綿密な計画を立てておくことも重要です。

そのうえで、以下のような方法を知っておくと、投資回収計画の精度が高まります。

  • 初期費用を極力減らす
  • 自己資本比率を高める
  • 開業後の支出を抑える
  • 開業後の売上を増やす

初期費用を極力減らす

飲食店の初期費用には、テナントの契約費や設備導入費、改装費など、幅広い種類のコストが発生します。このような費用を極力抑えると、回収期間が短くて済みます。

そのため、物件を探す際に適正な賃料を見極めるほか、礼金や仲介手数料を抑えられる物件を選びましょう。前テナントの内装をそのまま引き継ぐ居抜き物件を探すのも効果的です。

ただし、あまりにも初期費用を削りすぎると、自店のコンセプトが反映しづらく、魅力のない店舗になってしまう恐れもあります。

初期投資額の回収計画を加味しつつ、適正な初期費用の目安を見極めることが重要です。

自己資本比率を高める

自己資本比率が低いのは、他人資本の割合が大きいことを表しています。特に、他社からの借入が多いほど、利益を圧迫する可能性があるため、初期投資額の回収期間が間延びしがちです。

日本政策金融公庫の「小企業の経営指標調査(2021~2022年度)」によると、一般飲食店の自己資本比率の平均値はマイナス37.7%です。つまり、多くの飲食店で、他人資本が純資産を上回っている状態(債務超過)を表します。

一方、黒字かつ自己資本プラスの飲食店に限定すると、平均値は23.4%にまで高まります。

飲食店の自己資本比率は、サービス業の平均値31.9%や、情報通信業の34.1%(いずれも黒字かつ自己資本プラスの企業のみ)に比べ、やや水準が低めです。それだけ飲食店では他業種に比べ、他人資本に頼る機会が多いということです。

とはいえ、初期投資額を早期に回収するためにも、平均の23%前後にまで比率を高められるよう、なるべく潤沢な開業資金を用意しておきたいところです。

開業後の支出を抑える

開業後には継続的な支出も考えなければなりません。

飲食店では賃貸物件の賃料や原材料費、水道光熱費といった多くのランニングコストがかかります。また、集客のためには広告宣伝費も必要です。

このような経費を最小限に抑えれば、手元に残る資金が増え、投資回収期間も短縮できます。

しかし、支出を切り詰めた結果、サービスの品質が低下してしまっては元も子もありません。そのため、付加価値を生み出すために必要な支出と、削減しても問題がない支出を明確にすると良いでしょう。

開業後の売上を増やす

支出を減らすことも大事ではあるものの、売上を増やすことも重要です。なぜなら、売上と支出の差が大きいほど、利益額が多くなるためです。

特に、売上原価・販売管理費・税金などを差し引いた純利益の額が大きいほど、初期投資額の回収期間が短くて済みます。

単純に売上高を増やそうと思えば、広告出稿によって来店客を増やしたり、メニューごとの付加価値を高めて販売価格を上げたりするのが効果的です。

ただし、売上高を増やす施策には、新たな支出を要する場合もあるため、収支のバランスを十分に考慮しましょう。

初期投資額を抑えるのに役立つ支援制度3選

初期投資額を抑えるのに役立つ支援制度4選

飲食店を開業する際は、国や自治体、公共機関からさまざまなサポートを受けられます。なかには初期投資額を抑えるのに役立つ制度もあるため、積極的な活用をおすすめします。

ここでは代表的な支援制度を3つ紹介します。

  • 創業助成金
  • 小規模事業者持続化補助金
  • IT導入補助金

創業助成金

公益財団法人 東京都中小企業振興公社が実施している支援制度です。

東京都内で創業予定、または創業後5年未満の中小企業に対し、賃貸物件の賃料や広告宣伝費、人件費などの一部を助成しています。助成額の下限は100万円、上限は300万円です。

支援を受けるには、TOKYO創業ステーションの事業計画書策定支援を修了したり、東京都中小企業制度融資を利用したりといった一定の要件があります。

支援期間は最長2年間ですが、期間終了後も東京都中小企業振興公社による継続的なサポートが受けられます。

※2023年11月に執筆した記事です。最新情報は東京都創業NET|創業助成金をご確認ください。

小規模事業者持続化補助金

商工会議所の管轄地域で事業を行う小規模事業者を対象に、持続的な経営をサポートするための制度です。

通常枠や賃金引上げ枠、創業枠などの類型があり、それぞれ補助金額が異なります。

飲食店を開業する際は、最大200万円の補助金を得られる創業枠を利用すると良いでしょう。この場合、過去3年間の間に開業し、特定創業支援等事業の支援を受ける必要があります。

補助対象となるのは、新商品の開発費や機械装置の購入費、Webサイトの構築費などです。

※2023年11月に執筆した記事です。最新情報は商工会議所地区|小規模事業者持続化補助金をご確認ください。

IT導入補助金

中小企業や小規模事業者に向け、ITツールの導入を支援する制度です。同制度は次の5つの類型に分かれています。

  • 通常枠(A・B類型)
  • セキュリティ対策推進枠
  • デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
  • デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)
  • デジタル化基盤導入枠(商流一括インボイス対応類型)

例えば、通常枠のA類型では、ソフトウェアの購入費やクラウドサービスの利用料などが補助対象となり、5万円以上150万円未満の補助金が受け取れます。

飲食店であれば、モバイルオーダーシステムやPOSレジ、予約管理システムなどを導入する際に、IT導入補助金が活用できるでしょう。

※2023年11月に執筆した記事です。最新情報は一般社団法人 サービスデザイン推進協議会|IT導入補助金をご確認ください。

物件探しの段階でも初期投資額を意識しよう

物件探しの段階でも初期投資額を意識しよう

飲食店を開業する際の初期投資は、なるべく早めに回収したほうが経営的にも安心です。

一方で、初期投資額を抑える努力も必要です。特に飲食店は、物件の取得費や内装工事費が高額になりやすいため、物件探しの段階から初期投資額を明確にイメージしておくと良いでしょう。

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この記事を書いた人: ラルズネット編集部

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