都会の喧騒から離れて、自然に囲まれてのんびりと暮らしたい。そんな思いから、田舎暮らしにあこがれを持つ人も増えているのではないでしょうか。
しかし、後先考えずに移住してしまうと思わぬ失敗やトラブルを招くこともあります。
この記事では、田舎暮らしの典型的な失敗パターンから、田舎暮らしを成功させるためのポイントについて解説します。後悔のない移住を実現させるために、ぜひ最後までチェックしてみてください。
目次
コロナ禍で田舎暮らしに注目が集まっている

コロナ禍でリモートワークを推進する企業が増えたことで、必ずしも都会に住まなくても仕事ができる環境が整ってきました。
また飲食店の営業時間短縮や外出自粛といった状況の中、都会に暮らすメリットが薄れてきたと感じ、地方移住を考え始めた人も多いようです。
政府も、地方創生の施策として移住支援に力を入れています。内閣官房では起業支援金や移住支援金などの制度を設け、地方で仕事をしたい人の後押しをしています。
また、就業支援や家賃補助など、さまざまな形で移住支援を行う自治体も増えてきました。
このように、昔に比べて田舎暮らしへのハードルは下がっている傾向にあります。
一方で、十分な事前準備や情報収集をしないまま田舎暮らしをスタートさせた結果、失敗したと感じて元の暮らしに戻ってしまう方も多いようです。
ここからは、具体的にどのような失敗パターンがあるのか見ていきましょう。
田舎暮らしの失敗3パターン

パターン1:想像以上に生活が不便だった
のんびりとした田舎暮らしに惹かれて移住したものの、思っていた以上に生活が不便で後悔したという声がよく聞かれます。
田舎は都会に比べて電車やバスの本数が少なく、通勤や買い物などに不便さを感じる場面は多いでしょう。商業施設の数も少ないため、休日に出かけるところがなくて退屈してしまうこともあるかもしれません。
東京などの大都市から過疎地と言われる地域に移住するといったように、移住前後の環境の違いが大きいほどギャップを感じることが多いようです。
後ほど詳しく触れますが、インターネットなどの情報に頼るだけでなく、田舎暮らしを始める前に何度か現地を訪れてみることをおすすめします。
住みたいエリアを見て回ったり地元の方と話したりして、実際に生活していけそうか考えてみましょう。
パターン2:田舎特有の人間関係に疲れてしまった
都会と田舎の大きな違いとして、人間関係の密度があります。
都会ではご近所付き合いがほとんどなく、マンションの隣の人の顔もよく知らないということも多いのではないでしょうか。
しかし田舎では住民同士の距離が近く、町内会やお祭りなど地域の活動がさかんに行われている所も多いようです。こうした環境に馴染めず、田舎特有の人間関係に疲れてしまったというパターンが多く見られます。
田舎暮らしでの人付き合いは、都会のあっさりとした人間関係に慣れている方にとっては煩わしく感じることもあるかもしれません。
しかし、畑で採れた野菜をおすそ分けしてもらったり、近所の人が子どもの面倒を見てくれたりと、密度の濃い田舎の人間関係ならではの良さもあります。
生活していくうえで人間関係は重要なポイントです。その土地ならではの文化や風習を柔軟に受け入れ、溶け込もうとしていく姿勢を持つことが大切になってきます。
パターン3:仕事が少ない・収入が減った
田舎は都会に比べて人口も企業の数も少ないため、仕事を探すうえで苦労することも多いようです。
また、平均所得も都会に比べると下がる傾向にあります。
生活コストを下げたくて田舎暮らしを始めたものの、思ったほど余裕のある生活ができないと嘆く人も多いようです。
仕事や収入の面で失敗を防ぐためには、できるだけ移住前に仕事を確保しておきたいところ。都会での転職活動と同様に転職サイトやエージェントを活用するほか、自治体の移住支援窓口や移住コンシェルジュを頼ってみるのもおすすめです。
地域によっては地元企業と移住希望者のマッチングサービスを行っていたり、特定の職種への就業に対するお祝い金の制度を設けていたりと、さまざまなサポートが受けられます。
また最近ではリモートワークを導入する企業も増えているため、都会での仕事を続けながら田舎暮らしをスタートすることもできるようになってきました。
いずれにせよ、どのような形で収入を得ていくのかはできるだけ事前に考えておきたいところです。
失敗例に学ぶ、田舎暮らし成功を成功させる6つのポイント

ここまでご紹介してきた失敗パターンをふまえ、実際に田舎暮らしを始める際はどのような点に気をつければいいのでしょうか。
特に大切なのは、以下の6つのポイントです。
- 移住前に仕事を探しておく
- 生活費のシミュレーションをしておく
- 移住の目的を明確にする
- 実際に何度か現地に足を運ぶ
- 二段階移住やお試し移住も検討する
- 移住支援窓口に相談する
ひとつずつ具体的に見ていきましょう。
1.移住前に仕事を探しておく
生活の基盤を確保するという意味では、できれば田舎暮らしを始める前に仕事を探しておきたいところです。
パターン3:仕事が少ない・収入が減ったでご紹介したように、転職サイトやエージェント、実際の就職支援制度など、さまざまなサービスを活用してみましょう。
もちろん、ある程度の蓄えがある状態ならば移住してから仕事を探すことも可能です。
しかしその場合でも、「地元の人から仕事を紹介してもらえるようなつながりを作っておく」「会社員や雇用という形にとらわれなくても、自分で仕事を作れるスキルを身につけておく」といった準備は必要になってきます。
2.生活費のシミュレーションをしておく
田舎暮らしは都会に比べて家賃も食材も安くなる傾向にあるため、生活コストを下げられると思いがちです。
しかし地域によっては冬場のストーブやエアコンといった光熱費、雪かきにかかる費用など、その地域ならではの出費が発生することもあります。
さらに生活するうえで車が必須となる地域の場合、車の購入費や維持費も必要です。
転職によって収入自体が下がることもあるため、思ったほど暮らしにゆとりがないと感じることもあるでしょう。
年間を通してどれくらいの生活費がかかりそうか、田舎暮らしを始める前にシミュレーションしておくことがおすすめです。
3.移住の目的を明確にする
そもそも何のために田舎暮らしをしたいのか、目的をはっきりさせておくことも大切です。
- 人間関係のわずらわしさから逃れたい
- 満員電車を避けたい
- 広い土地でのびのびと子育てがしたい
- 住宅環境にこだわりたい
上記のように田舎暮らしの目的を明確にしておくことで、住みたいエリアや仕事を探すときの基準が生まれ、迷うことが少なくなります。
このときのコツとしては、「田舎暮らしでやりたいこと」よりも「今の暮らしの不満・やりたくないこと」から目的を考えることです。
田舎暮らしは経験してみて初めてわかることも多く、日々のさまざまな経験の中でやりたいことは変化していくでしょう。
しかし「やりたくないこと」は、個々人の価値観やそれまでの経験によるところが大きく、長期的に変化しにくいものです。
「やりたくないこと」を起点に、田舎暮らしでどんな生活をしていきたいかイメージしてみましょう。
4.実際に何度か現地に足を運ぶ
仕事や生活費の目処が立ち、田舎暮らしの目的も明確になってきたら、具体的に住みたいエリアを絞り込んでいきましょう。
その際にもっとも重要なことは実際に現地に足を運び、その土地の空気を肌で感じることと、地元の人の生の声を聞くことです。
特に暑さや寒さが厳しい地域の場合、実際にその気候を体感し、その地域で暮らして行けそうか考えたいところ。
可能であれば、夏と冬など時期を分けて複数回訪れるのがおすすめです。
また、基本的な情報はインターネットである程度手に入るとしても、人間関係の濃さや独特の風習など、実際にその地域に行ってみなければわからない情報もあります。
田舎特有のマナーや慣習を知らないまま、いきなり移住するのはトラブルの元です。住みたいエリアが決まったら、可能なかぎり現地に足を運び情報収集をしましょう。
5.二段階移住やお試し移住も検討する
都会から地方移住を考える場合、多くの人は豊かな自然や田園風景が広がる、いわゆる「田舎」を想像すると思います。
しかし、まったく土地勘がない田舎で住む家を探したり地域に溶け込んでいったりというのは、物理的にも心理的にもそれなりに負荷がかかるものです。
そこで、まずは県庁所在地などの地方都市に居を構え、そこから自分に合った田舎を探す「二段階移住」という方法があります。
また、多くの自治体では移住希望者向けに「お試し移住」の制度を設けています。家具家電付きの住宅や宿泊施設に一定期間滞在して、移住生活を体験できるというものです。
お試し移住を通して地元の人との交流が生まれ、仕事や物件の情報が手に入ることもあります。
住みたいエリアが絞り込めてきたら、お試し移住の制度がないか調べてみましょう。
6.移住支援窓口に相談する
多くの自治体では、移住を考えている人向けに相談窓口を設けています。
現地の役所だけでなく、東京や大阪といった大都市に窓口を置いているところもあります。
土地勘のない場所で田舎暮らしを始める場合、生活や仕事などさまざまな悩みに答えてくれる相談窓口は心強い存在です。
自治体の移住支援窓口のほか、NPOなど民間の団体が移住促進に取り組んでいる地域も増えています。
移住希望者向けのイベントやセミナーも各地で行われているので、積極的に足を運んでみましょう。
失敗だけじゃない!田舎暮らしのメリット

田舎暮らしによくある失敗パターンや、それをふまえた対策についてお伝えしてきました。
もちろん田舎暮らしは失敗ばかりではなく、都会では得られないメリットもたくさんあります。
実際に田舎暮らしを始めた人の多くが感じているメリットをご紹介します。
自然を身近に感じられる
雄大な自然や季節ごとに移り変わる風景を日常の中で感じ取れるのは、田舎暮らしならではのメリットといえます。
キャンプやトレッキングなど、田舎の豊かな自然を活かした趣味を始めてみることもいいものです。
四季の移ろいを肌で感じながらのんびりと暮らせるのは、田舎暮らしの最大の魅力ではないでしょうか。
満員電車のストレスから解放される
毎朝の通勤ラッシュで満員電車がとにかくストレスだという方も、多いと思います。
人口の少ない田舎では、車を利用する人が多いこともあり、満員電車に遭遇することはほとんどありません。
子育てがしやすい
田舎暮らしのメリットとして、子育てのしやすさを挙げる人も多いです。
都会で子育てをしていると子どもが屋外で遊べる場所が少なかったり、休日のレジャー施設が混雑していたりと、不自由さを感じる場面が少なくありません。
一方田舎では、人が少なく広々とした公園で遊べたり、公園まで行かなくても家の近くで川遊びや昆虫採集をしたりと、子どもがのびのびと遊べる環境が整っています。
食生活が豊かになる
食は生きていくうえで欠かせない要素であり、生活のクオリティを大きく左右します。
農業や漁業がさかんな地域であれば、新鮮な野菜や採れたての海産物を気軽に手に入れることができ、食生活が豊かになるでしょう。都会のスーパーに比べて値段も安い傾向にあるため、食費が抑えられるのもメリットです。
「栄養バランスの取れた食事で健康的な生活を送りたい」「毎日食べるものにはこだわりたい」という方にとって、田舎暮らしは大いに魅力的な選択肢といえます。
都会に比べて圧倒的に安くマイホームが持てる
田舎になるほど人口密度が低く、土地代が安くなる傾向にあります。
そのため、都会とは比べものにならないほどの低価格で家を建てられます。
「マイホームにあこがれはあるが、都会の地価ではとても無理だ」「広々とした家でゆったりと暮らしたい」という方は、田舎暮らしによって理想の家を手に入れられるかもしれません。
地域によっては、住宅の購入に補助金が出たり、一定の年数住めば土地や住宅が無償で譲渡されたりと、移住希望者向けにさまざまな制度を設けているところもあります。
マイホームを検討している方は、こうした支援制度も十分に活用しましょう。
田舎暮らしの失敗を避けるには事前準備が重要

さまざまなメリットがある田舎暮らしですが、よく調べずにあこがれだけで決めてしまうと思わぬトラブルや失敗につながることもあります。
移住は働き方やライフスタイルを大きく変えることになる、重大な決断です。
しっかりと事前の準備や情報収集をしたうえで、理想の田舎暮らしを実現させましょう。