「自然の中でのんびりと暮らしたい」「転職や起業をしたい」など、地方移住を考えるきっかけは人によってさまざまです。
さらに近年は、新型コロナウイルスの影響により働き方やライフスタイルが変化し、地方移住への関心はますます高まっているようです。
しかし、住み慣れた土地を離れて移住することへの不安がある方や、人生に関わる大きな決断だからこそ後悔したくないという方も多いでしょう。
そこでこの記事では、地方移住のメリットや事前にチェックしておきたいポイントをお伝えします。
さらに、地方移住で理想の生活を実現させるためのコツもご紹介しているので、移住を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
コロナ禍で地方移住を考える人が増えている

新型コロナウイルスによる外出自粛や、テレワークを経験したことで自身の働き方を見つめ直し、地方移住という選択肢が頭に浮かんだ人も多いのではないでしょうか。
実際テレワークやリモートワークが普及したことによって、都心に通勤しなくても自宅で十分に仕事をできる環境が整ってきました。
内閣府が2022年7月に発表した「第5回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によると、東京圏在住者で地方移住に関心を持っている人は2019年12月時点で25.1%だったのに対し、2022年6月には34.2%まで増加しています。
20代に絞ってみると、2019年の32.1%から2022年は45.2%と、半数近い人が地方移住に関心を持っていることがわかります。
新型コロナウイルスの感染が拡大した時期は、緊急事態宣言や、まん延防止等重点措置が繰り返し発令されました。それにより外出や移動の自粛、飲食店の営業時間短縮など、日常生活を制限される不便さを感じた方も多いでしょう。
こうした背景から都心で生活するメリットが薄れ、テレワークで仕事をしながら地方で暮らすというライフスタイルに、関心が高まりつつあるようです。
実際に地方移住をした場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。次の項目で具体的に見ていきます。
地方移住の7つのメリット

生活コストを下げられる
地方移住のメリットとして筆頭に挙げられるのは、都心に比べると物価が安く、生活コストを抑えられることではないでしょうか。とくに顕著なのは住居費です。
都心のマンションの場合、ワンルームでも家賃が10万円程度のところも多いですが、地方に移住すればその半分程度で借りられることもあります。
都心と同じくらいの家賃でも、地方ではより広くて部屋数の多い家に住むことも可能です。
地方は車社会であることが多く、場合によっては移住にあたって車を購入する必要もあるでしょう。しかし、都心に比べれば駐車場代は安いので、維持費は抑えられます。
庭付きの一戸建てであれば、家庭菜園やガーデニングなどをやってみるのも楽しいものです。
また、食料品なども地方の方が安い傾向にあります。地元の農家による直売所や無人販売所があるところでは、新鮮な食材がスーパーより安価に手に入るのもメリットです。
満員電車や混雑から解放される
通勤ラッシュ時の満員電車によるストレスから解放されるのも、地方移住ならではのメリットです。
都心では通勤通学に公共交通機関を利用する人が多いため、朝や夕方のラッシュ時は電車やバスが大変混み合います。毎朝の満員電車が苦痛で、仕事に向かうだけで疲れてしまうという方も多いでしょう。
一方、地方の場合は通勤に車を利用する人が多いことから、乗車率が100%を超えるような混雑になることはあまりないようです。
また、人口が集中している都心とは異なり、休日のレジャー施設の混雑や、行き帰りの渋滞といったこともそれほど多くありません。
さらに平日であれば、空いている公園で子どもを思いっきり遊ばせることもできます。
満員電車や混雑もストレスに悩まされている方にとって、地方移住は魅力的な選択肢といえます。
子育てがしやすい
地方移住のメリットとして、子育てのしやすさを挙げる人も多いようです。
自然豊かな地方では子どもの遊び場も多く、キャンプや川遊び、虫捕りなど大自然の中で体を動かしてのびのびと遊べます。
また地方の場合、待機児童の問題が少ないのも嬉しいポイントです。都心の場合は保育園に入れるだけでも大変で、認可保育園のみならず認可外保育園でもなかなか入れない状況があります。
しかし地方は人口が少ないため、複数ある選択肢の中から希望する園を選べます。そのため、いわゆる「保活」に苦労しなかったという声を多く聞きます。
さらに、子育て世帯の移住定住を促進している地方では、子どもの医療費を助成する制度や出産お祝い金など、独自の子育て支援策を充実させている場合もあり、充実した支援が受けられることも特徴です。
ただし、待機児童の状況や各種支援制度は、年度によって状況が変わることも多いため、移住前には最新情報をしっかりと確認するようにしましょう。
自然を身近に感じられる
「自然の中でゆったりと暮らしたい」という思いから、地方移住を考える方も多いでしょう。
山や海や川など雄大な自然に囲まれて暮らすことで、季節の変化を身近に感じられるのは地方ならではの魅力です。
キャンプや海水浴、トレッキングといった屋外でのアクティビティが気軽に楽しめるので、自然の中でのびのびと子育てをしたいという方にも、ぴったりです。
安くておいしい食べ物が気軽に手に入る
農業・漁業・酪農といった第1次産業がさかんな地方では、新鮮な食材が気軽に入手できます。
輸送コストがかからないぶん、都心よりも安く買えるのも嬉しいポイント。地方によっては、近所の田畑で穫れたお米や野菜を、おすそ分けしてもらえることもあるでしょう。
忙しい都心の生活では加工食品が中心の食生活だったけれど、移住してからは安くて新鮮な食材がすぐに買えるため、料理が楽しくなったという方もいます。
また最近では、子育て世代を中心に「食育」への関心が高まっています。
家庭菜園で野菜や果物を育てたり、農業の体験をしたりと、日常生活の中で食育を実践しやすいのも地方ならではの魅力です。
食事は生活において欠かせない要素で、ライフスタイルにも大きくかかわってきます。
その土地ごとの食材や食文化に触れられることは、地方移住の大きなメリットといえるでしょう。
自治体による移住者支援制度を活用できる
都心に集中している人口を地方に分散させるため、国や自治体は地方移住の促進に積極的に取組んでいます。
移住支援金や起業・就職支援金、家賃補助制度など、さまざまな制度があります。
地方移住には何かとお金がかかるので、移住者向けの支援制度はぜひ活用したいところです。
制度の実施状況は自治体によって異なり、場合によっては利用者が多く申し込みを停止することもあります。最新情報は、自治体の窓口やホームページで随時確認しましょう。
交友関係が広がる
「地方移住によって交友関係が広がった」という声も、多く聞かれます。
都心では、人とのつながりが薄く、ご近所付き合いも少ない傾向にあります。
一方地方の場合、地域住民同士のつながりが強く、自治会の活動やお祭りなど、住民同士のコミュニケーションが活発です。
さらに、地域コミュニティや趣味のサークルなどに参加すれば、地元の人と交流する機会も増えます。
地方移住で気を付けたい5つのポイント

地方移住にはメリットだけでなく、都心の生活に比べるとどうしても不便な点や、事前に確認しておきたいことも、いくつかあります。
移住をして後悔することのないよう、あらかじめチェックしておきましょう。
車がないと不便なことも
都心に比べて公共交通機関が発達していない地方では、車がないと不便を感じることも多いようです。
電車やバスの本数も少ないため、通勤通学にはやはり車があると便利。地方によっては、家族一人ひとりが一台ずつ車を持っているところもあります。
車があれば通勤通学などの日常生活だけでなく、日帰り旅行や一泊旅行なども気軽に行けるので、休日の行動範囲を広げられるでしょう。
また、子連れでお出かけするときも、車があると重宝します。着替えやおむつなど、子連れ移動には何かと荷物が増えるものですが、車なら問題ありません。
公共交通機関での移動とは異なり、子どもが騒いだり泣き出したりしても、周囲の目が気にならないのもメリットです。
地方移住を考えるうえで、車の購入はぜひ検討しておきましょう。
飲食店や商業施設が少ない
地方の場合、都心に比べると飲食店や商業施設の数はどうしても少なくなるため、不便を感じることもあるかもしれません。
また、深夜まで営業している店も多くないため、都心から移住してきた際はギャップを感じることもあるでしょう。
とはいえ、最近は地方にも大きなショッピングセンターが増えているほか、ネットショッピングも普及しているため、昔ほど都心と地方の差はなくなってきているようです。
子どもの進学先の選択肢が少ない
地方では、自然豊かな環境でのびのびと子どもを育てられる反面、子どもの進学先や塾、習い事の選択肢が少なくなることは否めません。
とはいえ、最近ではオンラインの塾や習い事も増えてきており、地方だからといって必ずしも教育環境が不十分とは限らないようです。また、地方であっても、特色ある教育を行っている学校も増えてきています。
あらかじめ多様な選択肢が用意されている都心に比べると、自分で調べたり動いたりする必要はありますが、地方でも工夫次第で子どもの可能性を広げていくことは、十分に可能です。
働き口が少ない
企業の数や求人数が少ない地方では、就労先の選択肢が限られることもあります。
移住前の仕事をリモートワークで続けられる場合は問題ありませんが、移住してから新たに仕事を探す場合は、注意が必要です。しかし最近はリモートワークの普及により、仕事選びにおいて都心と地方の差は徐々になくなってきています。
業種にもよりますが、オンラインで採用面接を行い、就業後もフルリモートOKという企業も増えているようです。
転職以外では、新たに起業するという選択肢もあります。物価が安いので、オフィスの賃料やスタッフの人件費など、ランニングコストを抑えて起業できるのが、地方ならではのメリットです。
また、地方によっては、起業する移住者向けの支援金制度を設けているところもあり、制度を利用することでさらに経費を抑えられます。
さらに、都心に比べて競合相手が少ないため、市場調査やニーズ分析をきちんと行えば安定的に稼ぐこともできるでしょう。
地域づきあいが増える
地方移住をすると、ご近所づきあいや地域のコミュニティへの参加など、人との距離の近さを実感する機会が多くあります。人によっては、こうした人づきあいを負担に感じることもあるかもしれません。
ただ、地域住民同士の距離感や地域活動の頻度は、地方によってさまざまです。
可能であれば移住前に何度か現地に足を運び、地元の人に話を聞くなどして、実際に暮らしていけそうか考えてみましょう。
地方移住を成功させるコツ

地方移住すると、働き方やライフスタイルが大きく変わることになります。
移住後に「こんなはずではなかった」と後悔しないためには、事前の準備が重要です。
理想的な地方移住を成功させるためのコツを、ご紹介します。
移住先の環境についてしっかりと情報収集を行う
地方移住の成功のポイントは、何といっても事前の情報収集です。
住宅について
- 家賃相場はどのくらいか
- 条件に合う物件はありそうか
暮らしについて
- スーパーや病院は近くにあるのか
- 公共交通機関の利便性はどうか
- ご近所づきあいはどの程度あるのか
- 移住先の気候で暮らしていけそうか
- 自然災害などの危険性はあるのか
仕事について
- (転職の場合)希望の求人はあるのか
- (起業の場合)やりたい事業のニーズがあるか
基本的な情報はインターネットで調べられますが、とくに人付き合いに関することや気候については、実際に現地を訪れて肌で感じてみないと、わからないこともあります。可能であれば、夏と冬など時期を分けて、現地を複数回訪れてみましょう。
また、移住を希望するエリアがある程度決まっているのであれば、自治体が主催する移住希望者向けのイベントや、セミナーを使って情報収集することもできます。
首都圏に移住希望者向けの相談センターを設けている自治体も多いので、利用してみましょう。
十分な資金計画を立てておく
地方移住には、何かとお金がかかります。
都心に比べると物価が安く、生活コストを抑えられるのが地方移住のメリットですが、転職によって収入が下がることも考えられます。
転職の場合は先に現地での仕事を探し、収入源を確保した上で移住するのが理想的です。
移住してから転職活動をするとしても、最低半年から1年は生活できるくらいの資金を確保しておきましょう。また、寒い地方では冬の暖房代がかさむなど、その土地ならではの費用がかかることも考慮しなければなりません。
引っ越し代や住所の取得費など、移住そのものにかかる費用もあります。
十分な資金計画を立てておくのが、移住成功のコツです。
補助金などの移住支援制度を活用する
多くの地方自治体では、移住希望者向けの支援金制度を設けています。
家賃補助、住宅の購入に対する支援金、自治体が指定する職種への就業でもらえる支援金など、内容や条件はさまざまです。
自治体の中には、長く住み続けると土地や住宅が無償で支給されるなど、都心では考えられないほどの好条件でマイホームが手に入るところもあります。
自治体独自の支援制度とは別に用意されている、政府による移住支援金制度の利用も、検討してみましょう。
2023年3月現在、首都圏から国が定める約1,300の市町村に移住する場合に、政府から1世帯あたり最大300万円の支援金が支給されています。
子どもがいる場合は、さらに子ども1人あたり30万円の加算金を受け取ることも、可能です。
政府は、子育て世代の地方移住を促進するため、新年度からは子ども1人あたりの加算金を100万円に増額する方針を打ち出しています。
支援制度を賢く活用することで、移住にかかるコストを軽減できます。
細かい利用条件を設定している自治体もあるので、詳細は各自治体のホームページや相談窓口で確認してください。
地方移住のメリットを活かして計画的に移住をしよう

生活コストを抑えられる、自然の中でのびのびと子育てができるなど、地方移住には多くのメリットがあることをご紹介しました。
一方で、車がないと生活が不便であったり、仕事や学校の選択肢が限られたりといった注意点もあります。しかし最近では、新型コロナウイルスの影響で、オンラインショッピングやリモートワークが普及したこともあり、都心と地方の利便性の差は徐々になくなってきているようです。
地方移住を促進する動きは、今後ますます高まっていくと考えられます。地方のメリットを十分に活かし、理想的な移住を実現させましょう。