都会の利便性と、田舎の自然の豊かさを享受できる「トカイナカ」は、新しいライフスタイルとして注目を集めています。
本記事では、トカイナカの定義や魅力、関東・関西・北海道でオススメのエリアのほか、移住を成功させるためのポイントをご紹介します。
都会すぎず田舎すぎない「トカイナカ」で、理想の暮らしを手に入れたい方は、ぜひご覧ください!
目次
トカイナカとは?その定義と魅力

「トカイナカ」とは、都会(トカイ)と田舎(イナカ)を組み合わせた造語です。都市の利便性と自然豊かな環境の両方を享受でき、次のようなメリットもあります。
- 家賃や物価が都市部より安く抑えられる
- 都市部に通勤が可能
- 病院や買い物に困らない
- 自然の中でゆとりある暮らしができる
「トカイナカ」という言葉を提唱したのは、経済アナリストの森永卓郎さんです。都心から半径約50キロメートルの範囲をトカイナカの目安としており、テレワークが増えたコロナ後はとくに関心が高まっています。
トカイナカってどこ?エリアと選び方を解説

トカイナカに「ここからここまで」という明確なエリアはありません。トカイナカの定義に当てはまる地域であれば、どこでも「トカイナカ」とみなせます。
ここでは、下記の項目について解説していきます。
- トカイナカは都心から1.5時間以内のエリアが対象
- トカイナカは東京・大阪の周辺エリアが主流
トカイナカは都心から1.5時間以内のエリアが対象
トカイナカに明確な境界線はありませんが、「都市部から電車で約1時間30分のアクセス圏内」というのが基準の一つです。自然環境に恵まれた都市近郊のベッドタウンや、中規模の地方都市などもトカイナカに該当します。
このような範囲であれば通勤・通学ができ、仕事や学校を変えずに手軽に移住が可能です。
総務省統計局によると、2021年に東京圏への転入数が減少し、近郊の神奈川・埼玉・千葉といった近隣県で転入数が増加していたことが分かっています。
参考:総務省統計局 住民基本台帳人口移動報告 2021年(令和3年)結果
コロナ禍によってテレワークが一般的になり、「都心部の高額な家賃を払い続けるより費用を抑えてトカイナカで快適に暮らしたい」という人が増えた結果と言えるでしょう。
トカイナカは東京・大阪の周辺エリアが主流
コロナ以降、「トカイナカ」という概念は、主に東京や大阪の周辺エリアで語られることが多くなりました。
東京近郊では神奈川・千葉・埼玉の一部にトカイナカが点在し、「トカイナカ」の提唱者である森永卓郎さんも、埼玉県所沢市に拠点を構え、東京都との二拠点生活をされていました。
同様に大阪を中心とした関西圏でも、京都・兵庫・奈良など大阪市から1時間圏内の地域がトカイナカ候補です。
このように、巨大都市の周辺に広がる「ちょうどいい距離」のエリアがトカイナカの中心でした。
しかし、近年は名古屋や福岡など、地方の中枢都市の近郊も含め全国各地で似たような環境の地域が注目されつつあります。
トカイナカに住む3つのメリット

トカイナカにはどのようなメリットがあるのか、詳しく解説します。
住宅費・固定費が安くなる
トカイナカに住む最大のメリットは、住居費をはじめとする生活コストが抑えられることです。
都心部に比べてトカイナカは地価が安いため、広めの間取りの物件を手頃な価格で借りたり、購入したりできます。
また、駐車場代や食費なども安い傾向にあり、トータルの固定費を減らせる点が魅力です。
実際に地方移住者からは「都市部では家賃が高く快適な暮らしは難しいが、地方なら収入が高くなくてもゆとりを感じられる」という声もあります。
交通アクセス良好で都市部へ通勤・通学が可能
「田舎すぎない田舎」であるトカイナカは、主要都市へのアクセスが確保されているのも大きな利点です。
たとえば、トカイナカに該当する千葉県木更津市や茨城県つくば市は、東京まで車で1時間強で移動が可能です。
また、自治体によっては都市圏までの通勤定期代を補助してくれるところもあります。たとえば、栃木県小山市では、新幹線通勤定期に月1万円(最大36か月分)まで補助してくれます。
参考: 小山市新幹線通勤定期券購入補助金について
このような制度を活用すれば「職場は都心、生活は郊外」といったライフスタイルを両立しやすいでしょう。
医療・教育・地域支援が整っている
トカイナカは山村とは異なり、生活インフラや行政サービスが一定水準で整備されているのも安心できるポイントです。
都市圏の郊外なので人口数万人規模の市町村が多く、大きな総合病院やクリニック、介護施設など医療機関も身近にあります。
教育環境も、小中学校はもちろん図書館や習い事施設が整い、都会と遜色ない暮らしが可能です。
このように医療・教育・行政サービスで不便を感じないのも、トカイナカに住むメリットの一つです。
関東の人気トカイナカランキング

関東でトカイナカに該当するエリアは東京近郊に多数あります。トカイナカの言葉を提唱した森永卓郎さんは平日は東京、週末は東京近郊の所沢市で過ごすライフスタイルでした。
ここではオススメのエリアを3つご紹介します。
東京・神奈川・埼玉のランキング1~3位
関東圏で「住みやすいトカイナカ」として人気のエリアを見てみましょう。
順位 | 場所 | 東京までの移動時間 |
---|---|---|
1 | 東京都青梅市 | 電車で約90分 |
2 | 神奈川県鎌倉市 | 電車で約55分 |
3 | 埼玉県所沢市 | 電車で約60分 |
1位の青梅市は東京都杉並区でありながら、市の6割近くを森林が占める自然豊かなエリアです。コンビニ・スーパーマーケット・チェーン店なども多く、生活利便性に優れています。都心に近い安心感もある「東京の田舎」で生活が送れます。
2位の鎌倉市は観光地として知られますが、小売店や医療機関の数が多く生活インフラも高水準です。東京駅や新宿駅まで約1時間と通勤圏内であり、海や豊かな緑に囲まれた環境が人気の理由です。
3位の埼玉県所沢市は東京から約1時間とアクセスがよく、魅力的なベッドタウンと言えるでしょう。スタジオジブリ製作の「となりのトトロ」の舞台モデルになった丘陵もあり、豊かな自然と利便性が調和しています。
関東在住者の体験談・口コミ
関東のトカイナカに移り住んだ人からは、「便利さと自然の両立」に対する満足度が高い傾向です。
たとえば、青梅市に移住した人は「JRの快速だと新宿まで60分程度で通勤もできる。のどかで、野菜はどれもおいしい」と評価しています。
関東のトカイナカ暮らしのデメリットとして、夜間の移動手段が限られる・文化的なイベントに触れる機会が少ない・大病院がないエリアもある、などが挙げられます。
都市部でしか得られない利便性を求める人には、トカイナカの生活は向かないと言えるでしょう。
関西で注目すべきトカイナカランキング

関西圏にも、自然と利便性のバランスがとれた優良なトカイナカが多数あります。ここでは、大阪市街地までの距離や街の特徴について解説します。
大阪のランキング1~3位
関西圏でも大阪市を中心とした近郊エリアに魅力的なトカイナカが数多くあります。
順位 | 場所 | 大阪市までの移動時間 |
---|---|---|
1 | 大阪府阪南市 | 約70分 |
2 | 兵庫県三木市 | 約90分 |
3 | 奈良県大和郡山市 | 約50分 |
1位の大阪府阪南市は大阪中心部まで約1時間強、関西空港まで車で約30分でありながら、海と山に囲まれ、豊かな自然が広がっているエリアです。利便性の高さに比べて地価が安く、都心よりもゆとりのある住まいを見つけやすい点が魅力です。
2位の兵庫県三木市は大阪中心部からはやや距離がありますが、豊かな田園風景が広がる中に高速道路網が発達し、神戸駅まで約1時間・大阪駅まで約1時間30分と都心へのアクセスに優れています。
3位にランクインした奈良県大和郡山市は大型商業施設がある一方で、田園や丘陵地の広がる環境があり、暮らしやすさが魅力のトカイナカです。
中京圏のランキング1~3位
中京圏にも、岐阜や愛知に注目のトカイナカがあります。
順位 | 場所 | 名古屋までの移動時間 |
---|---|---|
1 | 岐阜県岐阜市 | 電車で約25分 |
2 | 三重県名張市 | 特急で約100分 |
3 | 愛知県蒲郡市 | 電車で約90分 |
岐阜県岐阜市はトカイナカの代表的なエリアで、駅周辺はビル商業施設が整いつつ、山川も多く、自然豊かです。
また、三重県名張市は、特急で名古屋まで約100分、大阪まで約70分と大都市圏にほどよく近く、農地や自然が広がるのどかなトカイナカエリアです。
愛知県蒲郡市も注目のトカイナカです。名古屋市中心部まで特別快速で約40分の近さに加え、海と温泉に恵まれた観光地でもあります。市内には大型商業施設が多数あり、日常生活に不便はしないでしょう。
関西・中京在住者の体験談・口コミ
関西・中京のトカイナカでは「自然に癒やされつつ都市の仕事や娯楽にも手が届く生活」に満足する人が多いようです。
たとえば、阪南市への移住者からは「野鳥が庭に来て癒される」「地域の交流も楽しい」などの口コミがあります。
また、岐阜市に移住した人からは「名古屋駅まで20分と近い。家賃も安くて年間100万円以上はコストダウンできそう」といった声もあり、トカイナカならではのメリットに満足している意見が目立ちました。
ランク上位の共通点
トカイナカのランキング上位に共通するポイントは、交通の利便性と生活インフラの充実で、日々の暮らしと都市アクセスの両立が大きな魅力になっています。
通勤圏かつ日常生活で不便を感じにくい環境が、高ランキングの秘訣と言えるでしょう。
北海道のトカイナカ候補

近年は、北海道も魅力的なトカイナカとして注目を集めています。
札幌市はエリアによってはトカイナカに該当
北海道でトカイナカ的な暮らしを求めるなら、札幌市がオススメです。
札幌市は人口約196万人の大都市ですが、森林の割合が64%で、都市機能と自然が調和した街として知られています。
参考:【参考】札幌市の森林概況
たとえば、札幌市中央区は行政区で、住宅街も落ち着いた雰囲気です。しかし、大通公園や円山公園といった大きな緑地のほか、山林が大半を占める盤渓も含まれています。
また、札幌市西区には手稲山や三角山のほか、河川・公園・緑地が点在しており豊かな自然が身近です。一方で、西区には琴似のような繁華街と住宅街がバランスよく広がるエリアもあります。
札幌市の中心部以外は自然や畑が広がっているエリアも多く、大半がトカイナカに該当すると言えるでしょう。
札幌の移住に関しては下記記事でも触れているので、併せてご覧ください。
関連記事:札幌市への移住を叶えたい!6つの魅力や活用できる支援制度を紹介!
札幌近郊でオススメのトカイナカ
札幌近郊の小樽市・江別市・石狩市・北広島市なども魅力的なトカイナカです。
都市名 | 札幌駅までの時間 |
---|---|
小樽市 | JRで約50分 |
江別市 | JRで約30分 |
石狩市 | バスで約65分 |
北広島市 | JRで約25分 |
いずれも商業施設や住宅が整っていながら豊かな自然が広がっており、札幌市のベッドタウン的な役割も果たしています。
トカイナカを求める人にオススメのエリアと言えるでしょう。
北海道移住者の体験談・口コミ
北海道のトカイナカで暮らす人々は、自然環境や生活コストの低さから「おおむね満足」という判断が多いようです。
とくに、札幌市に移住した人は、不便を感じることなく豊かな自然を味わえるため、満足度が高い傾向です。
ただし、冬に暖房費が必要な点や、除雪などの手間がかかる点を北海道移住のデメリットとして挙げる人もいました。
「移住しやすいトカイナカ ベスト50」とは?由来と選定基準

「トカイナカ」を検索すると、「移住しやすいトカイナカ ベスト50」という言葉が出てきて、気になった方もいるでしょう。
ここでは、「移住しやすいトカイナカ ベスト50」について詳しく解説します。
トカイナカ ベスト50は全国の自治体から選ばれる
「永住しやすいトカイナカ50」とは、2021年に週刊誌で特集された言葉です。
首都圏・近畿圏・中京圏など、全国の郊外自治体を対象に総合評価したベスト50のトカイナカが紹介されました。人口規模や都市への距離条件を満たす自治体を抽出し、スコア化してランキングしています。
この特集によって、隠れた優良トカイナカが広く知られるようになりました。
参考:明石たうんず 「永住しやすいトカイナカ50」(女性自身)大阪圏ランキングで明石市が7位にランクイン
選定基準は?
トカイナカ ベスト50の選定には、生活環境に関する下記の6つの指標が用いられました。
- 人口あたりの病院数
- 人口あたりの診療所数
- 自治体の高齢者福祉費
- 人口あたりの小売店数
- 人口あたりの生活関連サービス業店舗数
- 家賃相場
これらの数値を偏差値化して総合スコアを算出し、「医療・買い物など生活インフラが充実し、かつ家賃が安い」街が上位になります。
たとえば総合1位となった木更津市は小売店数やサービス業店舗数の指標がとくに高く、利便性で群を抜いていました。
ニーズによって「自分にとってのベストな街」は異なりますが、このようなランキングは移住先を決める際の目安になるでしょう。
トカイナカへの移住検討でやるべきこと

「理想的な生活が送れそう」と思えるトカイナカを見つけても、いきなり本格移住するのはオススメできません。移住前に準備段階を設けて、理想と現実を見極めるのが失敗を防ぐコツです。
ライフスタイル・優先する条件に合ったエリアの比較
トカイナカと言っても地域ごとに特色があります。
移住を検討する際に、自分の理想とするライフスタイルや優先順位を明確にしておきましょう。たとえば、次のようなチェックポイントがあります。
- 通勤のしやすさ
- 子育て環境
- 自然環境
- 買い物の便利さ
- 気候
このような条件を照らし合わせて、いくつか候補エリアをピックアップし、比較検討しましょう。また、同じ首都圏近郊でも海が好きか、山が好きかでも選ぶ土地は変わります。
自治体ごとの支援制度や特色も要チェックです。たとえば子育て支援が手厚い市町村や、移住者に住宅補助金を出す町もあります。
下記記事で子育て世帯に手厚い支援を行っている地域を紹介しているので、併せてご覧ください。
関連記事:子育てしやすい街の特徴は?代表的な支援制度やおすすめの移住先を紹介
情報収集|自治体窓口、ふるさと回帰支援センターの利用
候補地が絞れてきたら、地域の情報を集めましょう。
各自治体には移住相談窓口があり、移住希望者向けのパンフレットや地域の暮らしに関する資料を提供してくれます。
また、東京・有楽町にあるふるさと回帰支援センターでは、全国44都道府県と1政令市の専属相談員が常駐し、暮らしや支援制度について無料相談が可能です。
オンライン相談も受け付けているので、候補地が決まっているなら情報収集してみましょう。
ネット上の移住体験談や移住関連のSNSに参加して生の声を聞くのも有効です。
自治体の公式サイトには移住支援策や空き家バンク情報が掲載されているので、公的な情報と移住者の口コミ情報を組み合わせると正確な情報が得やすいでしょう。
二拠点生活やトライアル移住の活用
ある程度情報が集まり「ここに移住しよう」と決めても、すぐに本格移住するのはやめましょう。
お試しでトカイナカ暮らしを経験したり、二拠点生活を送ってみたりといった準備段階を用意すると、移住後に「こんなはずではなかった」という後悔を避けられます。
多くの自治体ではお試し移住用の住宅や「体験ツアー」を用意しており、数日から数週間滞在して生活を体験できます。
また、リモートワークで働いている人であれば、「週末だけトカイナカで過ごす」といった二拠点生活も可能です。
期間限定でトカイナカ生活を試し、自分に合うか確認してから本格移住するのが成功のコツです。
トカイナカに関するよくある質問

ここでは、トカイナカに関する疑問について回答しています。
Q. トカイナカと田舎の違いは?
A.「田舎」は農村や離島などが当てはまり、トカイナカとは概念が異なります。
「トカイナカ」は都会でも田舎でもなく、その中間的な場所です。自然環境が豊かでインフラが整っている場所が該当し、都市近郊で海や山に近いエリアや、自然の多い地方都市はトカイナカと判断できます。
「この辺りから先は急に店が減って不便になる」という境目は地域ごとに存在しており、その手前までがトカイナカと言えるでしょう。
Q. トカイナカを移住先として選ぶ注意点は?
A.都市部とトカイナカの違いを理解し、自分の生活スタイルに合っているか確認することが大切です。
トカイナカは都市に比べ移動手段が制約される場合があります。地域によっては車がないと暮らしにくいため、運転に慣れていない方は注意が必要です。
また、商業施設や医療機関の数も都会ほど多くないため、買い物や受診で都心に出なければならない場合もあります。
重要なのは、自分にとって許容できる不便さかどうか見極めることです。通勤時間が多少延びても庭付きの家に住みたい、娯楽施設が少なくても自然が豊かな方がいい、といった優先順位がはっきりしている人にとって、トカイナカ移住は満足のいく選択になるでしょう。
トカイナカに移住して理想の生活を手に入れよう!

この記事ではトカイナカの定義や魅力、オススメのトカイナカのエリアについて解説しました。
都会と田舎の「いいとこ取り」ができるトカイナカ暮らしは、テレワークなどが増えたこれからの時代に適したライフスタイルです。
ほどよく便利で、ほどよく自然のある生活を送りたい方は、本記事を参考にしてみてください。
また、トカイナカに適した物件をお探しの方には、「不動産連合隊」がオススメです。さまざまな条件から検索を絞り込めるので、理想に合った物件を探しやすいメリットがあります。
トカイナカで理想の物件を探す一助になれば幸いです。