辞令が出て転勤が決まると、転居先の住居を探したり引っ越し業者に予約を入れたりと慌ただしくなります。
しかし、転勤にともなう引っ越しの費用負担は会社ごとに異なり、すべて出してくれるとは限りません。忙しくても、事前に確認しておかないと思わぬ出費になってしまいます。
本記事では、転勤で引っ越しする際に、会社負担と自己負担になりやすい項目や費用について解説しています。
引っ越し費用を抑えるコツも紹介しているので、転勤が決定した方は、ぜひお役立てください。
関連記事:転勤で引っ越しが決まった人へ!2週間で準備が完了するスケジュールを紹介
【転勤決定】持ち家を活かす方法5選!それぞれメリット・デメリットを比較
目次
転勤による引っ越し費用はだれが負担する?

「転勤による引っ越しは自己都合ではないし、費用は全部会社が出してくれるのでは?」と考えるかもしれません。
しかし、転勤に関する費用についての法律はなく、会社ごとに負担する範囲が異なります。
すべて負担してくれる会社もあれば、規定以上は負担してくれない会社もあります。
とはいえ、転勤は会社の業務命令です。基本的に転勤のある会社では、引っ越しの費用の大半を負担してくれると考えて問題ありません。
転勤が決まったら社内規定を読み、人事部門に以下のような項目を確認してください。
- 補助の範囲:どの費用が会社負担になるのか
- 申請方法:どうやって費用を精算するのか
- 費用の上限:会社が負担する金額の上限 など
自己負担になる範囲も事前に確認しておきましょう。引っ越しの際にどこを節約するか決めやすくなります。
引っ越し費用の一覧
ここでは、引っ越しにかかる費用の一例をご紹介します。
項目 | 費用 |
---|---|
引っ越し費用 | 約10万円 |
新居の敷金・礼金・仲介手数料 | 約75万円 |
火災保険料・鍵交換代など入居にかかる諸経費 | 3万~4万円 |
新居までの交通費 | 新居までの距離による |
新居先で購入する家具家電費 | 約10万円 |
新居のハウスクリーニング代 | 4~10万円 ※広さによって異なる |
美術品・ピアノ・自家用車などの特殊な荷物の運搬費 | ピアノ:3~4万円 美術品:大きさ・価値による 自家用車:近隣なら2~3万円、遠方なら3~10万円 ※標準引越運送約款で定められた一部の特殊な荷物は搬送を拒否されることもある。 |
上記は東京の通常期(5月~翌年2月)の費用例です。家賃は地域ごとに差があるので、事前に相場を確認しておきましょう。
繁忙期(3~4月)は、引っ越し費用がさらに高くなるので注意が必要です。
会社負担になりやすい費用

引っ越し費用
引っ越し費用とは、「引っ越し業者に支払う実費」のことです。具体的には、引っ越し業者の人件費、荷物運搬料金、そしてトラックのチャーター費用などが該当します。
この実費は通常、会社が負担します。しかし、オプションサービス(荷造りサービス、不用品の処分サービスなど)については会社負担が保証されないことがあるため、事前に確認が必要です。
また、会社によっては指定の引っ越し業者の利用や、運搬できる家財道具の条件などが設定されている場合もあります。
新居の敷金・礼金・仲介手数料
転勤による引っ越しにおいて、賃貸物件を借りる際に発生する「敷金」「礼金」「仲介手数料」といった初期費用は、一般的に会社負担となることが多いです。
ただし、原状回復に必要な費用(壁紙の張り替え、床の修繕など)が敷金を超えた場合、不足分は自己負担となることがあります。
火災保険料・鍵交換費用など入居にかかる諸経費
入居時には諸経費が発生します。一般的にはこれらの費用も会社負担となることが多いです。以下に、主な諸経費をまとめてみました。
- 火災保険料:
賃貸契約をする際、ほぼ必ず加入する火災保険料が含まれます。一般的な相場は2万円前後です。 - 鍵交換費用:
新しい居住地での鍵を交換する場合の費用です。安全の観点から、以前の借主と同じ鍵を使用しないようにすることが一般的で、任意の費用となります。一般的な相場は1万円〜2万円程度です。 - 入居消毒料:
入居前に、部屋の消毒と雑菌駆除を行う料金です。一般的な相場は1万円〜2万円程度です。 - ハウスクリーニング代:
新しい居住地のクリーニング費用も、通常は会社負担に含まれます。物件の広さによって費用相場が変わり、一般的に1LDK~2LDK物件で4万円~8万円程度、家族向け物件で8万円~10万円程度です。
新居までの交通費・宿泊費
転勤による引っ越しは、新しい場所への移動に伴う交通費・宿泊費がかかります。一般的にはこれらの費用は、会社が負担することが多いです。
交通費に関しては、利用できる交通手段や条件が会社によって異なるため、事前に確認しましょう。
引っ越し先が遠方で、荷物の運搬に時間がかかり宿泊が必要になった場合、基本的に宿泊費が支給されます。また、家族と一緒に引っ越す場合、家族全員分の宿泊費用が支給されることもあります。
支給される宿泊費用の目安は、出張費と同等のケースが多いです。領収書が必要な場合が多いため、すべての費用について会社名入りの領収書を取得しておきましょう。
自己負担になりやすい費用

引っ越しにかかる費用すべてが会社負担となる訳ではありません。以下に、自己負担になりやすい費用をまとめてみました。
新居先で購入した家具・家電代
新しい住居で必要な家具や家電を購入する場合、自己負担になりやすいです。転勤が短期の場合は、家具家電が備え付けられた賃貸物件を探すのもオススメです。
また、海外転勤の場合、家電は日本と異なる規格や仕様のため、会社によっては費用を負担してくれるところもあります。事前に会社に確認しましょう。
美術品・ピアノ・自家用車など特殊な荷物の運搬費
通常の引っ越し費用は会社負担が一般的です。しかし、ピアノや美術品・骨董品などの特殊な荷物の運搬費は、有料オプションサービスの対象となるケースがほとんどで、自己負担となる場合が多いです。
自家用車を引っ越し先に運びたい場合、その輸送費用も基本の引っ越し料金には含まれず、通常は別途オプション料金がかかります。自家用車の運搬費用は自己負担が一般的で、転勤で支給されないと考えた方がよいでしょう。
上限金額を超えた引っ越し費用
会社によっては、引っ越し費用の上限金額が設定されています。この上限金額は会社によって異なり、超過した分の費用は自己負担となります。
引っ越し前に、会社の「就業規則」や「転勤取扱規定」などを確認しておきましょう。
引っ越し費用が上限を超える可能性がある場合、敷金・礼金がない物件を選ぶなどの工夫をすることで、費用を抑えられます。
転勤による引っ越しの注意点

転勤による引っ越しでは、次のような点に注意が必要です。
- 引っ越し業者を選べない場合がある
- 見積書や領収書は保管・提出
- 会社負担の引っ越し費用の振り込みまで時間がかかる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
引っ越し業者を選べない場合がある
「以前利用した引っ越し業者が気に入ったので、同じところを使いたい」と思っても、会社指定の引っ越し業者しか選べない場合があります。確実に従業員が転勤できるように、引っ越し業者と提携する企業があるからです。
従業員が提携外の業者で引っ越しした場合、費用を負担してくれない可能性が高いです。
不安を解消するためにも、事前に疑問点をメモしておき、会社や指定の引っ越し業者について確認してください。
見積書や領収書は保管・提出
転勤による引っ越しでは、必ず次のような見積書や領収書の提出が求められます。
- 引っ越し業者に支払う費用の領収書
- 賃貸契約にかかる費用(敷金、礼金など)の領収書
- 一時的な宿泊費や交通費の領収書
領収書を紛失してしまうと、会社負担の引っ越し費用が減額される可能性もあるので注意が必要です。
また、見積書や領収書を提出する際には、次のような点に注意しましょう。
- 宛名:
領収書の宛名が自分または会社名になっているか確認。 - 日付:
引っ越し費用の領収書の日付が、会社が認める期間内に収まっているかを確認 - 費用明細:
引っ越し費用の詳細が記載されていないと、会社が精算を承認しない可能性がある
提出が必要な書類や宛名などについては、あらかじめ会社に確認しておきます。
会社負担の引っ越し費用の振り込みまで時間がかかる
引っ越しの費用を会社で負担してもらう場合、すぐに振り込んでもらえるとは限りません。事務手続きの終了や振り込みまで数カ月かかる会社もあります。
一時的ではあるものの自己負担になるので、余裕をもって転勤費用を用意しておきましょう。
転勤でもらえる手当は?

会社ごとに名称や種類に違いはありますが、転勤になると次のような手当を支給されることが多いです。
手当の種類 | 内容 |
---|---|
単身赴任手当 | 単身赴任になった従業員に支払う手当。家族が暮らす住居(自宅)と単身赴任先の2カ所に拠点が増えるため、生活費を補助する意味合いで支払われる。 公務員の支給額平均:3万円 民間企業の支給額平均:4万7千円 |
住宅手当(家賃補助) | 家賃の一部を負担する意味合いで支給される手当。敷金・礼金・仲介手数料なども負担してくれる場合が多い。家賃の何割を負担するかは企業ごとに異なる。 |
転勤支度金 | 転勤にともなう引っ越し・転居先で必要な家具などの費用。 |
赴任地までの交通費 | 現在の住居から赴任地まで移動する交通費。家族がいる場合は、家族分支給される。 |
帰省旅費手当 | 単身赴任先から自宅へ帰省する際の交通費を補助する手当。往復分の交通費が支払われるが、回数に制限がある。 |
着後手当 | 赴任先に着後、新生活を始めるにあたり必要と考えられる費用。たとえば、新居入居前にホテルに宿泊する際の費用などが該当する。 |
転園・転学手当 | 転勤にともない、従業員の子どもが転園・転学する際に必要な費用を負担する手当。入園料や入学金が該当する。 |
近年は介護や共働きが増えたため、従業員が転勤を回避する傾向にあります。そのため、転勤に対するインセンティブとして、手当を新設したり、拡充したりする企業が増えています。
手当は給与に足されて支給されることが多く、基本的に課税対象です。家賃補助は条件によっては非課税対象になることもあります。
どのような手当が支払われるかは、企業ごとに異なるため、事前の確認が必要です。
費用を抑えるコツ

ここでは、自己負担の費用を減らすための節約方法を紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
早めに物件を探す
転勤が決定したら、すぐに物件を探し始めてください。
引っ越し業者によっては早期割引があり、早めの契約が費用削減につながります。とはいっても、転居先の住所が決まっていないと、本契約ができません。
引っ越し業者によっては、大まかなエリアが決まっていれば見積もりを出してくれるところもあります。しかし、見積もりは出してもらえても、都合のよい日にトラックの空きがあるとはかぎらないので注意が必要です。
転居先の物件は、早めに見つけるに越したことはありません。
引っ越し業者は複数比較する
会社から引っ越し業者の指定がない場合は、必ず複数社の見積もりやサービスを比較しましょう。
重要なのは、会社が負担してくれる引っ越し費用の上限を把握し、できるだけ自己負担の費用を抑えることです。「サービスが良いから」と高額な引っ越し業者を選んでしまうと、あっという間に上限を超えて負担が増えてしまいます。
自分の求めるサービスと費用のバランスを取るために、複数の引っ越し業者の見積もりは欠かせません。また、他社の相場を把握しておけば、値下げ交渉もしやすくなります。
3~4社であれば、自分で見積もりを取るのもよいでしょう。「できるだけ多くの引っ越し業者を比較したい」という方は、一括で見積もりを申し込めるWebサイトがオススメです。
家具・家電は購入しない
「自己負担になりやすい費用」で解説したとおり、家具や家電を購入しても、基本的に会社は負担してくれません。
節約対策として、「家具・家電は購入しない」という方法があります。たとえば、家具・家電付きの賃貸住宅を選ぶ、レンタルの家具・家電を使うなどです。
とくに、転勤の多い業種の方に有効な方法です。転勤のたびに転居先の間取りに合わせて家具・家電を購入すると大きな負担になるため、検討してみてはいかがでしょうか。
荷物は引っ越し前に減らす
引っ越しの料金は「荷物の重量」と「運搬する距離」で決まります。トラックのサイズが大きくなったり、台数が増えたりすれば、その分料金は高くなります。そのため、荷物は少なければ少ないほど、節約に有効です。
転居先に合わない、または置けないサイズの家具・家電は、買い替えるかレンタルなどを検討し、古いものは処分しましょう。大型の荷物がなくなれば引っ越し費用が抑えられます。
また、荷造りと同時に不要品は選り分けておき、引っ越しの1週間前には廃棄・リサイクルショップに販売するなどし、荷物を減らしましょう。
できるだけ自分で作業する
荷造り・荷解きや家具の組み立てなどのサービスを提供している引っ越し業者もありますが、そのようなサービスを利用すると割高な引っ越し料金になります。
有料の追加サービスは会社が負担してくれない可能性が高いので、自分でできる分は作業しましょう。
荷造りに関しては、下記の関連記事でも解説しているので参考にしてみてください。
関連記事:転勤で引っ越しが決まった人へ!2週間で準備が完了するスケジュールを紹介
ストレスフリーな引っ越し準備のコツは?各種手続きについても解説
転勤による引っ越しでは会社負担になる費用を把握しよう

転勤にかかる費用は会社によって負担範囲が異なり、すべてを会社が支払ってくれるわけではありません。事前に確認しておかないと、予想外の費用負担が発生することもあります。
本記事では、転勤で会社負担と自己負担になりやすい費用について詳しく解説しています。転勤が決まった方は、自己負担を抑えるためにも、ぜひ参考にしてみてください。
引っ越しで転居先をお探しの方は、不動産連合隊がオススメです。単身・家族・家賃の上限など、条件に合わせて検索できます。
転居先での新たな生活の一助になれば、幸いです。