福岡市中央区の天神は、ビジネス・ショッピング・グルメが三位一体となった、活気あふれるエリアです。博多駅や福岡空港からのアクセスも良好で、国内外から多くの観光客が訪れる人気スポットでもあります。そんな天神で飲食店を開業したいと考えている方は少なくないでしょう。
しかし、注目度が高い人気エリアだからこそ、出店するにはエリアの特徴や消費者のニーズを理解することが大切です。
そこで本記事では、天神で飲食店を開業したい人に向けて、エリアごとの特徴や再開発情報、物件相場について解説します。
関連記事:福岡で起業・開業する人向けの支援制度や相談窓口|飲食店ならではのポイント
目次
天神エリアの魅力と最新動向

天神エリアで出店するにあたり、まずは地域の特徴を把握しましょう。飲食店の方針やコンセプトを決める際の参考にしてみてください。
天神エリアの特徴
歴史
天神という地名は、400年以上の歴史を持つ水鏡天満宮に由来します。学問の神様として知られる菅原道真公を祀り、合格祈願や立身出世、厄除けなどのご利益で多くの参拝者を集める神社です。地下鉄空港線天神駅から明治通りを経由して、徒歩5分の位置にあります。
天神エリアは、福岡城の鬼門を守る場所として発展しました。明治時代には県庁や市役所などが設置され、官公庁街として機能していました。さらに大正時代には、学校建設や博覧会の開催など、文化・教育の中心地としての地位を確立していきます。
昭和初期には、九州鉄道や松屋百貨店、岩田屋百貨店などの商業施設が次々に開業し、近代的な都市へと変貌を遂げます。戦後の復興期には、商店街やビルが次々と建設され、1964年に「天神」という地名が誕生しました。
その後も多くの商業施設や企業の進出が続き、天神は「九州最大の繁華街」と呼ばれるまで発展を遂げます。
九州最大の繁華街
天神は、国内外から多くの人々が訪れます。天神地下街・数多くの百貨店や商業施設・イベントホール・商店街・家電量販店など、あらゆるものが揃っていて、とても利便性が高いエリアです。
また、商業施設だけではなくオフィスビルが立ち並ぶビジネス街でもあり、昼夜問わず多くの人が行き交います。都会でありながらも天神中央公園、須崎公園、警固公園などの公園も点在しているため、緑の多い憩いスポットとしても人気です。
天神ビッグバンでさらに活気づく街へ
天神エリアは現在、天神ビッグバンと呼ばれる大規模な再開発プロジェクトが進行中です。
アジアの拠点都市にすることを目指し、天神交差点を中心に半径500メートルのエリア(約80ヘクタール)を再開発する計画で、2026年までに約70棟が建て替えられます。
この再開発により、古くなったビルの建て替えや、新しい商業施設・オフィスビルなどの建設が進んでいます。航空法の規制緩和を受けて、100メートル近い高さの高層ビルの建築も可能となりました。さらに、歩行者向けの空間を広げ、緑豊かな公園を整備する計画も進行しています。
また、天神ビッグバンによる経済効果は毎年約8,500億円に上り、雇用者数は現在より約2.4倍の97,100人に増加すると試算されています。
これから天神で飲食店の出店を考えるにあたっては、天神ビッグバンの動向や効果を見据えていくことが必須となるでしょう。
現在、ビルの建て替え工事などにより、やむなく閉店した飲食店が多数あります。再開発完了後は飲食店の需要が増加するでしょう。ランチタイムの混雑やお店選びに悩む「ランチ難民」を対象にしたキッチンカーの出店が増えているなど、工事期間中のニーズに応える動きも見逃せません。
若者からビジネスパーソンまでが集う街
天神エリアの主要な駅は、西鉄福岡(天神)駅・地下鉄空港線 天神駅・地下鉄七隈線 天神南駅の3つです。2022年度の1日平均乗降者数は、西鉄福岡(天神)駅が約109,000人、2020年度の地下鉄空港線天神駅が約102,000人、地下鉄七隈線天神南駅が約33,000人でした。
天神エリアはファッションビルが多いこともあり、来街者の約7割は10代から40代です。特に20代から30代の若者が約4割を占めています。
天神エリアにはオフィスビルも数多く建っているため、ビジネスパーソンも多く居ます。出張で訪れる方も多いでしょう。渡辺通りを中心として金融機関や有名企業、市役所などの行政機関も多く、昼はランチや仕事帰りの買い物、夜は屋台や居酒屋などが利用されています。
参考:GWの福岡市都心部来街実態
都心での回遊行動の比較による子連れ来街者の特性把握~福岡市天神地区を対象として~
天神エリアの特徴と飲食店出店のポイント

天神エリアで飲食店を出店するなら、エリアごとの特徴や消費者ニーズの把握が欠かせません。 ここでは、北天神と南天神に分けて、それぞれの魅力や飲食店出店のポイントを紹介します。
北天神
北天神は、主に昭和通りの北側から那の津通りまでを指します。
主要な施設はこちらです。
- 福岡市民会館
- 福岡県立美術館(休館中)
- 須崎公園
- 日本銀行福岡支店
- ミーナ天神 など
天神ビッグバンでは、福岡中央郵便局やイオンショッパーズ福岡の建て替えが計画されています。天神一丁目~二丁目の北ブロックには、緑豊かな地上広場や歩行者空間・地下通路などが整備される予定です。
北天神エリアには、文化施設の利用者や家族連れなど、さまざまな層の人が訪れます。南天神に比べるとデパートなど大型商業施設が少ないため、観光やショッピング目的よりも地元の方や専門学生、オフィスワーカーが多いと考えられます。
この特性を踏まえると、北天神での飲食店は地元の人々が日常的に利用しやすい価格のランチやディナーメニューが喜ばれそうです。
南天神
南天神は、主に昭和通りの南側から天神南駅までの地域を指します。
主要な施設はこちらです。
- 福岡市役所
- 天神中央公園
- アクロス福岡
- 警護公園
- 天神ビジネスセンター
- 福岡パルコ など
地元の方々はもちろん、出張で来るビジネスパーソンや観光客、ショッピングを楽しむ人々でいつも賑わっています。
天神を象徴するような大型施設が集中しており、天神ビッグバンでも多様なプロジェクトが進んでいます。今後ますます人が集まるエリアとして発展するでしょう。
この特性を踏まえると、南天神の飲食店はターゲット層を明確にし、ニーズに応えるメニューやサービスの工夫が肝心となります。
家族連れやショッピング目的の方には、休憩時に気軽に立ち寄れるカフェやスイーツ店が人気です。
観光客であれば、もつ鍋や博多ラーメンなどの地元の味に興味を持ちやすいです。また、外国語メニューや多言語対応のスタッフがいると国外からの方も安心して来店できます。
天神の店舗・テナント物件の相場

天神エリアでテナント物件を探す際に、まず確認しておきたいのが家賃相場です。希望する広さや条件などを事前にしっかり確認しておきましょう。
ラルズネットの福岡テナント連合隊で調べたところ、天神のテナント物件の平均家賃は807,444円でした。最低家賃と最高家賃は以下のとおりです。
店舗・事務所の家賃
業種 | 最低家賃 | 最高家賃 |
---|---|---|
飲食店全体 | 68,000円 | 7,150,000円 |
喫茶・カフェ(軽飲食) | 141,900円 | 7,150,000円 |
バー・クラブ・スナック | 68,000円 | 1,556,060円 |
天神は福岡市内で最も家賃相場が高く、参入障壁が高いことがうかがえます。家賃を抑えたい場合は、居抜き物件も検討してみてください。下記に居抜き物件の情報をまとめます。
居抜き物件の家賃
業種 | 最低家賃 | 最高家賃 |
---|---|---|
居酒屋・バーの居抜き物件 | 121,000円 | 1,127,170円 |
レストラン・カフェ・喫茶の居抜き物件 | 141,900円 | 1,556,060円 |
その他飲食店の居抜き物件 | 121,000円 | 371,140円 |
物件情報を詳しく調べるには、【天神エリアのテナント物件一覧】をご覧ください。複数の物件を比較検討し、予算や希望条件に合う物件を見つけましょう。
また、ラルズネットでは希望条件を入力して送信すると不動産会社から物件情報が届く「テナント物件リクエスト」というサービスもご提供しています。
天神は、福岡の中でも人気があり、競争率の高いエリアです。飲食店の物件をお探しの人は、ぜひお早めに不動産探しのプロへご相談ください。
関連記事:福岡でテナントを構えるのにおすすめのエリアは?街の特徴や物件の選び方を解説
天神で店舗を出店するメリットとデメリット

天神は福岡の中で、とくに人気を誇るエリアです。デメリット・メリットの両面を踏まえて綿密に出店の計画を練りましょう。
デメリット
■競合店が多い
天神はグルメ店が多い分、競合店が多数あるでしょう。差別化のため、市場調査やターゲット設定に労力がかかるはずです。また、明確なコンセプトや付加価値を設定し、顧客満足度を高めていく取り組みが必要です。
■家賃が高額
天神は一等地として、家賃相場が高く設定されています。とくに最新のオフィスビルや施設、駅近くの物件は、物件取得費や固定費が高額になりやすいです。
■数年続く再開発
再開発プロジェクトの期間中は、工事による騒音やアクセスの悪化などが起こり得ます。これからテナントを選ぶ場合は入居先だけでなく周囲の環境にも気を配りましょう。
メリット
■集客力が高い
天神エリアは常に多くの人々が行き交っています。そのため幅広い顧客層に店舗をアピールできるでしょう。グルメ目的の観光客も天神に立ち寄る可能性が高いです。
■再開発でさらに活気が増す
天神ビッグバンにより、日本だけでなく海外からも注目を集めています。エリア全体の盛り上がりは店舗にも影響するはずです。再開発に伴って店舗の集客に役立つイベントやキャンペーンなども増えていくでしょう。
■認知度の向上
天神は福岡を代表するエリアとして、高い人気を誇っています。天神で人気のお店となればメディアやSNS上でも話題になりやすく、他のエリアへの進出にもつながるかもしれません。
天神の飲食店経営に悩みがあれば
天神で飲食店を経営したいけれど不明点があって悩んでいる……という場合は、福岡が用意している相談窓口や支援制度を活用しましょう。
詳しくは関連記事「福岡でスタートアップ・中小企業が資金調達を成功させる方法」と「福岡で起業・開業する人向けの支援制度や相談窓口|飲食店ならではのポイント」で説明しています。ぜひ、ご参照ください。
天神で物件を探すなら福岡テナント連合隊

本記事では天神で飲食店を経営したい方に向けて、天神の魅力やエリアごとの特徴、出店のデメリット・メリットなどをご紹介してきました。
天神は来街者の多さと再開発による話題性から、飲食店の経営をしたい人にオススメのエリアです。ただし、天神ビッグバンの動向や家賃相場の把握、競合店への対策を念頭に置きましょう。
天神でテナント物件をお探しの方は、福岡テナント連合隊をご利用ください。「路面店」「居抜き物件」など、目的に合わせた詳細な検索が可能です。
これから出店を考えている事業者様のお役に立てれば幸いです。