「自身の理想的なカフェを開業したい」という目標をお持ちの方は多いのではないでしょうか。ただ、いざ行動という段階になると、「どのようなテナント物件がカフェに向いているのか分からない」と疑問に思ってしまうかもしれません。
そこで本記事では、カフェ開業に向いているテナント物件を5つ挙げ、それぞれのメリット・デメリットを解説しました。どのようなタイプの人にどのテナント物件がオススメなのかについても、あわせてお伝えしています。
物件の種類別に家賃目安もお伝えしますので、参考になれば幸いです。
目次
カフェ向けテナント物件ごとのメリット・デメリット

カフェを開業する際のテナント物件の種類は、以下のとおりです。
- 居抜き物件
- スケルトン物件
- 間借り物件
- 古民家
- 自宅
それぞれのメリット・デメリットや、向いているタイプをお伝えしていきます。
居抜き物件
居抜き物件とは、前テナントの借主が使用していた設備・備品を、そのまま譲渡してもらう物件です。
関連記事:居抜き物件とは?スケルトンとの違いや契約の流れを解説
デメリット
居抜き物件でカフェを開業するデメリットは、下記のとおりです。
- デザインの自由度が低い
- 設備が劣化している場合がある
前の借主が使用していた設備・備品を引き継げるというメリットは、デザインを自由に設計しづらいというデメリットでもあります。特に厨房設備やトイレなど、水回りの改装は高額になりやすいため、かえってコストがかかるケースもあります。理想と現実のギャップに落ち込んでしまわないように、契約前にカフェのイメージをしっかり立て、物件の内装と乖離がないかチェックするのがオススメです。
また、引き継いだ設備が劣化していた場合、撤去や解体に費用がかかってしまいます。
小規模なカフェを低コストで開業したい方にとっては、想定外の費用がかかる可能性もあり、注意が必要です。
メリット
居抜き物件でカフェを開業するメリットは、下記のとおりです。
- 工事期間を短縮できる
- 前テナントの顧客を引き継ぎやすい
内装・外装も引き継げるので、工事費を大幅に節約できます。工事期間を短縮できるため、オープンまでの準備期間を短くできます。カフェの稼働期間が早くなれば、そのぶんコストの回収が早まるでしょう。
前テナントも飲食店だった場合、顧客を引き継ぎやすいメリットもあります。近隣住民に愛されていた店舗であれば、後継店に興味関心を持ってくれるケースが多いです。
居抜き物件でのカフェの開業は、内装費や広告費を削減しながら開業したい方に適しています。
スケルトン物件
スケルトン物件とは、建物のコンクリートが剝き出しになっており、内装・外装が何もない物件です。
デメリット
スケルトン物件でカフェを開業するデメリットは、下記のとおりです。
- オープンまで時間がかかる
- 退去時に原状回復費用がかかる
内装・外装や設備が何もないスケルトン物件は、オープンできるまで準備に時間がかかります。カフェとしてオープンするまでの準備期間も賃料は発生するため、居抜き物件より初期費用が高額になりやすいです。軽飲食の場合、かかる費用は坪単価20万円前後が目安です。
スケルトン物件は退去時に「入居前の状態」に戻す必要があるため、原状回復費用もかかります。特に飲食店の場合、元に戻すべき設備が多岐にわたるため、費用が高くなりがちです。原状回復費用は坪単価3〜30万円が目安となっており、ケースによって大幅に異なります。
メリット
スケルトン物件でカフェを開業するメリットは、下記のとおりです。
- 理想に近いデザインに設計できる
- 物件の数が多い
- 前テナントのイメージを引き継がない
スケルトン物件はデザインを一から設計するため、理想に近いカフェをオープンできます。居抜き物件よりスケルトン物件のほうが多い傾向にあるため、物件探しのハードルも下がるでしょう。
新しい店舗からスタートするため、前テナントのイメージに左右されない点もメリットです。とはいえ、居抜き物件ならではの集客効果が見込めない点と表裏一体でもあります。
そのため、経営のノウハウがある程度貯まっており、カフェのデザインにこだわりがある人にオススメです。
間借り物件
間借りとは、既存の飲食店の営業時間外・空きスペースで稼働するスタイルを指します。
デメリット
間借り物件でカフェを開業するデメリットは、下記のとおりです。
- 営業時間や内装に制限がある
- 契約手続きが細かくなる
- 非常時は既存店舗に迷惑がかかる
他者の既存店舗を間借りするため、営業時間や内装には制限があります。売上を拡大したり、理想とするカフェの内装にしたりといった自由度は低いです。固有の住所も持てないため、郵便物の受け取りや集客に影響を及ぼします。
また、契約手続きが細かくなる点もデメリットです。家賃や水道光熱費だけでなく、電話応対・食材の管理にいたるまで、トラブルが起きないように取り決めが必要です。
食中毒などの非常時は、既存店舗にも迷惑がかかるケースもあります。
既存店舗に迷惑をかけないためには、個人間で契約するのではなく、マッチングサイトを利用するのもオススメです。マッチングサイトでは補償プログラムを提供しているサービスがあり、万が一の損害賠償に備えられます。
メリット
間借り物件でカフェを開業するメリットは、下記のとおりです。
- 数日や短時間の単位で始められる
- 立地を変えやすい
- 告知がしやすい
数日や短時間といった単位で始められる間借り物件は、コストを抑えてスタートできます。飲食店の開業資金は1,000万円以上かかるといわれますが、間借り物件であれば、物件取得費や設備費用が削減可能です。
短期間の契約なので、立地を変えやすいのもメリットといえます。カフェのコンセプトと立地の相性を確かめられ、悪ければ別の物件に移転しやすいです。
既存店舗にはすでに一定の利用客がいるので、告知がしやすいのも魅力的です。
「まずは副業でカフェを始めたい」「カフェと立地の相性をしっかり確認してスタートしたい」という方に適しています。
古民家
カフェ向けのテナント物件として、古民家を再利用する選択肢もあります。
デメリット
古民家でカフェを開業するデメリットは、下記のとおりです。
- 物件がある地域が限られる
- 改修費用が高額になりやすい
- 競合との差別化が困難
古民家の物件がある地域は限られており、立地が良くないケースもあります。アクセスの良さを求めている方には、物件探しのハードルが高くなってしまうでしょう。
水回りや断熱性の改善には、高額な改修費用が掛かることもあります。古民家の状態が著しく悪い場合は、物件取得費の安さを上回ってしまいかねません。
古民家は物件取得費が安く済むため、ライバルが多い傾向にあります。カフェの独自性が「古民家」だけでは、差別化が困難です。古民家ならではの強みを活かしつつ、独自のコンセプトを発揮できる方に向いているでしょう。
メリット
古民家でカフェを開業するメリットは、下記のとおりです。
- 費用を安く抑えられる
- 固定資産税を軽減できる
- レトロな雰囲気を作りやすい
古民家や空き家でカフェを開業すると、物件取得費が安く抑えられます。処分に困っている家主からすれば、無料でも良いからとにかく引き取ってほしいというニーズがあるためです。
固定資産税の評価額も安く抑えられる傾向があります。物件取得費の安さと合わせて、コストカットしたい方に向いているでしょう。
築年数が古く趣深い雰囲気のある古民家は、レトロなカフェを作りやすいメリットもあります。昔ながらの日本家屋は、海外の観光客による「日本の伝統や歴史的建造物を体験したい」というニーズに適しており、民泊ビジネスでも活用されるほどです。
古民家のレトロな雰囲気を集客に活かしたい方には、有効な選択肢といえます。
自宅
自宅の一部をカフェスペースとして改修し、開業するケースもあります。
デメリット
自宅でカフェを開業するデメリットは、下記のとおりです。
- 保健所の許可のために改修する必要がある
- 立地の良さが事業物件より劣る
- 近隣住民とトラブルになりやすい
カフェとして保健所の許可を取得するには、さまざまな制約があります。たとえば手洗い設備は、令和3年の制度改正により「手に直接触れずに水を止める構造」が義務になりました。
食品衛生法施行規則によれば、以下のように定められています。
従業者の手指を洗浄消毒する装置を備えた流水式手洗い設備を必要な個数有すること。なお、水栓は洗浄後の手指の再汚染が防止できる構造であること。
引用元:厚生労働省「食品衛生法施行規則(施設基準 共通する事項)」
「再汚染防止構造」については、札幌市の「営業許可施設の施設設備基準」にてイラスト付きで解説されていますので、参考にしてみてください。
このような設備基準に適合していなければ、自宅を改修する必要があり、予想外の資金が発生する可能性も考えられます。
また、住宅街での開業は、テナント物件に比べて人目に付きにくい傾向があるほか、近隣住民とトラブルになりやすいデメリットもあります。食品のゴミや臭いなどはトラブルの元なので、事前にご近所へ開業の挨拶をすると良いでしょう。
メリット
自宅でカフェを開業するメリットは、下記のとおりです。
- 開業資金を削減できる
- 原状回復を行う必要がない
- ワークライフバランスを取りやすい
テナント物件を借りずに自宅でカフェを開業すると、家賃や敷金・礼金などがかかりません。デメリットでお伝えしたように改修費用がかかる可能性はあるものの、物件取得費を抑えられるのは大きなメリットです。
自宅におけるカフェ開業は、閉店時に原状回復を行う必要がありません。閉店時の費用を考えなくて良い分、内装の自由度が高いです。
通勤時間がゼロで済み、体調不良やトラブルなどで突発的に休業しやすい点も魅力といえます。ワークライフバランスを重視しながらカフェを経営したい方にオススメです。
カフェ向けテナント物件を種類別に家賃比較!

ここまで、カフェ開業に向いているテナント物件の種類についてお伝えしてきました。しかし、それぞれのメリット・デメリットとは別に、家賃相場が大きな決定基準になる方も多いのではないでしょうか。
そこで、ラルズネットが運営する「テナント連合隊」で、カフェ向け物件の家賃を調査しました。以下の表は、家賃の上限と下限をまとめたものです。「テナント連合隊」で取り扱いのない間借り・自宅については除外しております。
テナント物件の種類 | 家賃相場(札幌) | 家賃相場(函館) | 家賃相場(仙台) | 家賃相場(浜松) | 家賃相場(神戸) | 家賃相場(福岡) |
---|---|---|---|---|---|---|
居抜き物件 | 約4~280万円以上 | 約6~20万円以上 | 約20~25万円以上 | 約20~30万円以上 | 約9~200万円以上 | 約8~150万円以上 |
スケルトン物件 | 約4~700万円以上 | 約5~50万円以上 | 約10~190万円以上 | 約9~40万円以上 | 約10~200万円以上 | 約8~600万円以上 |
古民家 | 約9~45万円以上 | なし | なし | なし | なし | 約15~70万円以上 |
なお、「カフェ向けテナント物件ごとのメリット・デメリット」では古民家の物件取得費が安いとお伝えしましたが、上記の表では「家賃」を記載したため、居抜き物件より下限値が高くなっています。
カフェを開業する際の参考にしてみてください。
カフェ向けテナント物件の探し方

テナント物件の種類を決めたあとは、実際に探していくステップです。
テナント物件の探し方は、以下のとおりです。
- コンセプトを決める
- 希望条件を決める
- ポータルサイトを使う
- 希望エリアを歩いてみる
自身がオープンしたいカフェで、どういう状況を実現したいのか、コンセプトを設計します。コンセプトから希望する条件を洗い出してみてください。
希望条件を決める際は立地の選定が重要であるものの、「人通りが多い」「交通アクセスが良い」だけで決めると失敗してしまうかもしれません。人通りが多い理由を分析し、カフェの顧客層であるかチェックするのがオススメです。
事前にポータルサイトで相場を調べたら、希望するエリアを歩いてみましょう。Googleマップでは分からなかった競合店に気づくかもしれません。
実際に歩いてみると、地域密着型の不動産会社に気づく可能性もあります。その土地ならではの情報を共有してくれる場合もあるので、積極的に問い合わせ・訪問してみてください。
テナント物件探しのコツについては、下記の記事でより詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
関連記事:テナント物件探しのコツ!失敗しないための事前準備も解説
カフェのテナント物件探しでよくある質問

この項目では、カフェのテナント物件を探す際によくある質問について解説していきます。
開業資金はどのくらい必要?
小規模なカフェでも500〜1,000万円くらいは必要です。
内訳としては、店舗取得費や内外装工事費が大半を占めています。
参考:J-Net21「カフェ|業種別開業ガイド」
何坪の広さが必要?
厚生労働省が平成28年3月にまとめた「喫茶店営業の実態と経営改善の方策」によると、個人経営の喫茶店の延床面積は、50㎡(約15坪)未満が最も多い結果となっています。
小さいカフェとはどのくらいの広さ?
イートインスペース併設カフェとしては、10坪程度が最低限必要な広さです。
なお、日本一小さいコーヒースタンドである「わんわん ありがとうの日 COFFEE」の面積は、1.9畳(約1坪)となっています。
参考:PR TIMES「 「日本一小さい」コーヒースタンドに認定。川崎市の犬専門フォトスタジオ併設 1.9畳のコーヒー店」
カフェのテナント物件を探すなら「テナント連合隊」!

カフェを開業するにあたって、利用できる物件の種類は複数あります。
それぞれのメリット・デメリットを把握したうえで、ご自身の理想とするカフェの実現に適した物件を選びましょう。
貸店舗・貸事務所をお探しの際は、地域特化型テナント物件探し専門ポータルサイト『テナント連合隊』を活用してみてはいかがでしょうか。
路面店、居抜き物件コーナーなど、事業者目線で詳細な検索ができるようになっています。
『テナント連合隊』が、これから出店を考えている事業者様のお役に立てれば幸いです。