中洲は福岡市の中心にある繁華街です。
400年の歴史とアクセスの良さから多くの人が集まり、屋台・居酒屋・バーなど約2,000もの店が立ち並ぶ中洲は、飲食店の経営をしたい人にとって魅力の多い町と言えるでしょう。
福岡市が観光産業を後押しする形で、さまざまな窓口や支援を用意しているのも、飲食店経営にオススメのポイントです。
しかし、中洲で飲食店を経営するなら、家賃相場や客単価に注意が必要です。
本記事では中洲で飲食店を開業したい人に向けて、中洲の基本情報やテナントの探し方を解説します。
目次
中洲はどんな町?基本情報と特徴

中洲は人口591人(2023年統計)ですが、飲食街・歓楽街として利用する人が多く、飲食店を経営したい人にとって魅力的な街です。
ここでは、中洲がどんな町なのか、歴史や地理的な特徴などの基本的な情報を説明します。
- 中洲の歴史
- 面積約20ヘクタールの細長い土地
- 博多を代表する繁華街の一つ
飲食店の方針やコンセプトを決める際の参考にしてみてください。
中洲の歴史
中州の歴史が始まったのは西暦1600年です。
関ヶ原の戦いで東軍勝利に貢献した黒田長政が、徳川家康に筑前国52万石を与えられた後、「福岡」と地名を改め土地の整備と町作りを開始しました。
その町作りの際に、福岡と博多をつなぐために橋をかけ整備されたのが中洲です。中洲は福岡の誕生と同時に作られ、変遷してきた土地と言えるでしょう。
長らく畑として活用されていた中洲ですが、明治に入ると西洋文化が流入し、急激に発展します。電灯会社や電話局の開設により、劇場・映画館・百貨店(デパート)などが次々と建てられました。
バーやカフェも多く、現在の中洲を彷彿とさせる賑わいを見せるようになります。
特に大正14年(1925年)に建てられた百貨店「玉屋」はエレベーター付、地下1階~地上5階まである本格的なもので、開店時は47,000人が詰めかけたそうです。福岡で初めての百貨店ということもあり大きな話題になりました。
昭和に入ると歓楽街として発展しましたが、太平洋戦争後は焼野原になり、飲み屋やバーなど、食事とお酒を楽しむ町として復興し現在の姿へと変化しました。
面積約20ヘクタールの細長い土地
「中洲」の由来は、文字通り那珂川と博多川に挟まれた中州状の地形です。長さ1キロメートル、幅200メートルの約20ヘクタールの細長い土地で、中洲1丁目から5丁目までが中洲に当たります。
那珂川を挟んで隣接する西中洲には中洲と同種の飲食店が広がっており、混同されることも多いエリアです。しかし、中洲は「博多区」、西中洲は「中央区」で区が異なります。
中洲は福岡市の中心部にあり、交通の要所です。「福岡市都市計画マスタープラン」において中洲は「都心部」とされており、町全体が商業地域に指定されています。
最寄り駅は福岡市営地下鉄「中洲川端駅」です。バスの本数も多く、博多駅から約10~15分、100~200円と安価に移動が可能です。博多駅から中洲まで2.6キロメートルなので、仮にタクシーを利用しても大きな負担ではありません。
また、中洲には昭和通り・明治通り・国道202号(国体道路)などの大きな道路が走っており、国道202号は福岡県のもう一つの政令指定都市である北九州市につながっています。
アクセスのしやすさからビジネスや観光で利用する人が多く、わずか20ヘクタールでありながら中洲は福岡有数の商業地区としての地位を確立しています。
博多を代表する繁華街の一つ
中洲は福岡を代表する繁華街の一つです。ショッピングモールや商店街があり、近隣のエリアにも歩いて行ける距離に大型複合施設や劇場があるため、日中、観光客で賑わっています。
一方で、バー・クラブ・居酒屋なども多く、夜間にもっとも人が増えます。東京の歌舞伎町、札幌のすすきのと並んで「日本三大歓楽街」とも呼ばれるエリアです。
日常的に訪問者数の多い中洲ですが、博多どんたくや博多祇園山笠など、徒歩圏内の近隣も含めて行事が多く、爆発的に観光客が増える時期もあります。
参考:福岡市 福岡市観光統計
中洲が飲食店経営におすすめな理由

中洲は飲食店を経営したい人にとって、次のような理由からオススメの土地です。
- 居抜き物件が多い
- 中洲川端駅は福岡第7位の利用者数
- イベントが多い
詳しく見ていきましょう。
居抜き物件が多い
中洲には2,000以上の飲食店の店舗があり、競合の多さがデメリットです。
しかし、一方で居抜き物件を含む飲食店の空きテナントも多く、開業を予定している業種のテナントが見つけやすいメリットもあります。
居抜き物件とは、前店舗が造作した内装・家具・厨房設備などが残っている状態の物件です。建物だけの状態をスケルトンと言い、自分で自由に店舗を作れますが、居抜き物件に比べてコストが掛かります。
中洲で多いのは、居酒屋・バー・カフェなどの居抜き物件です。できるだけ初期費用を抑えて開業したいという人は、中洲の居抜き物件を探してみましょう。
関連記事:居抜き物件の5つのメリットを徹底解説!居抜きに向いているのはこんな人
スケルトン物件とは?契約前に知っておきたいデメリットやメリットを解説
中洲川端駅は福岡第7位の利用者数
中洲の最寄り駅である地下鉄中洲川端駅は、福岡市の地下鉄35駅の中で第7位の乗降者数です。
年々乗降者数が増えており、コロナ禍前の2019年には1日当たり約4万人弱が乗降していました。一時、約2万人台まで乗降者数が落ち込みましたが、コロナ禍が落ち着き始めてからは回復傾向です。
また、2023年3月27日に天神南駅から博多駅まで延伸開業したため、中洲周辺への訪問客が増えると予測されます。
さらに、中洲や徒歩圏内の周辺エリアには次のような名所や大型施設があります。
- 大型複合商業施設「キャナルシティ博多」
- 櫛田神社
- 那珂川沿いの屋台
- 夜間ライトアップされる「中洲懸橋」
ビジネス客だけでなく国内外の観光客からの需要もあり、今後も中洲川端駅の利用者数は増加する可能性が高いでしょう。
地下鉄以外の交通機関で訪れる人も多く、中洲で働いている人は約30,000人、観光や飲食を目的に中洲へ訪問する人は約60,000人とも言われています。
中洲は飲食店を利用してもらえるチャンスが多いのが特徴です。
参考:統計情報リサーチ 中洲川端駅(福岡市地下鉄)の乗降客数の統計
福岡市地下鉄|駅ごとの立地特性
イベントが多い
中洲や近隣エリアではイベントが多く、毎月のようにさまざまな催しがあります。有名なイベントとして、次のようなものがあります。
- 博多どんたく
- 博多祇園山笠
- 中洲ジャズ(ジャズフェスティバル)
- 中洲まつり
博多どんたくや博多祇園山笠は200~300万人の来場者が見込まれる歴史的な行事です。また、2009年に始まった中洲ジャズは、2022年に10万人の動員を記録するなど、年々来場者が増えています。
中洲は、毎月イベントがあり、飲食店を営業する人にとって集客しやすい土地と言えるでしょう。
中洲に多い飲食店の業種

中洲には次のような飲食店の業種・業態があります。
- 屋台
- バー・居酒屋
- 和食料理
出店を検討しているなら、業種ごとに客単価の違いを踏まえた方が良いでしょう。リーズナブルな屋台から高級路線の食事処まで、中洲では幅広い種類の飲食店経営が可能です。
屋台
中洲で有名なのは屋台です。那珂川沿いに、ラーメン・焼き鳥・おでんなど、さまざまな種類の屋台が並んでいる写真をガイドブックなどでご覧になった人も多いでしょう。
中洲の屋台は観光客だけでなく、地元の人も利用しています。奇をてらった料理よりも、素材の味にこだわった定番料理を楽しむ人が多い傾向です。
福岡市では屋台の営業ルールを細かく決めており、道路・公園の占有時間は17時~午前4時までと定めています。
また、福岡では観光資源や交流の場として、たびたび屋台の営業者を公募しています。天神・長浜・中洲などの13のエリアが対象で、審査が通れば所定の場所で出店が可能です。
屋台を営業する場合、土地の持ち主に許可を得なければならないため、福岡市のお墨付きの土地で営業できるのは大きなメリットと言えるでしょう。
屋台は道路占有料や設備使用料などの経費が掛かりますが、テナントの賃貸料に比べると費用が抑えられます。初めて飲食店を経営する人にとってハードルが低く、チャレンジしやすい業態です。
参考:福岡市 屋台営業のルールについて
福岡市 福岡市屋台営業候補者の公募について
バー・居酒屋
中洲は夜間に飲酒できる店が多い傾向です。居抜き物件でもバーや居酒屋など、お酒を出すサービスを前提としたテナントが見られます。
バーや居酒屋を利用することが多いのは、次のような客層です。
- ビジネスパーソン
- 地元住民
- 観光客
中洲にはオフィス街としての一面もあります。ビジネスパーソンが仕事帰りに食事をとる目的で居酒屋に立ち寄ったり、帰宅前の一杯を求めてバーに立ち寄ることが多いエリアです。会社の飲み会や2次会に利用する目的で利用する人も多いでしょう。
また、居酒屋やラーメン屋は地元の人も食事や交流の場として利用しています。
3大歓楽街と言われるだけあって、中洲には夜間のみ開店する店があったり、川沿いのライトアップが行われたりします。観光客も夜の中州を楽しむために訪れ、福岡ならではの伝統料理や地元食材を活かした料理を出す居酒屋やバーを利用する傾向です。
このような理由から、中洲はバーや居酒屋を経営したい人にとって有利な土地と言えるでしょう。中には、屋台で飲食店経営に自信をつけてから店舗で開業する人もいます。
しかし、中洲は賃料が高めなエリアです。客単価を決める際には事前調査が必須です。
和食料理
中洲は高級すし店や料亭などの和食料理店も多いエリアです。ビジネスパーソンが接待で使ったり、観光客が体験の一つとして高級料理を求めたりする場合があります。
福岡市は海に面しており、漁港が整備されています。
中洲も海鮮料理が食べられる土地としても有名なので、海鮮などを使った高級な和食料理を出したい人に最適なエリアと言えるでしょう。
ただし、高級店が集中する場所だとお客様の評価もシビアになりがちです。事前調査を行い、経営が安定するまで長期間かかることを見越して、開業資金や運営資金は多めに準備した方が良いでしょう。
中洲でテナントを探すポイント

中洲は集客に最適なエリアですが、テナントを探す際に重要なのが家賃相場です。家賃で客単価や運営費が変わってくるので、必ずチェックしましょう。
ラルズネットの福岡テナント連合隊で調べたところ、中洲の家賃相場(管理費を含む)は以下のとおりでした。
業種 | 最低家賃 | 最高家賃 |
---|---|---|
飲食店全体 | 68,000円 | 2,035,000円 |
バー・クラブ・スナック | 68,000円 | 883,300円 |
居酒屋 | 121,000円 | 516,252円 |
和食 | 148,896円 | 371,140円 |
ラルズネットでは希望条件を入力して送信すると不動産会社から物件情報が届く「テナント物件リクエスト」というサービスもご提供しています。
飲食店の物件をお探しの人は、ぜひご利用ください。
関連記事:福岡でテナントを構えるのにおすすめのエリアは?街の特徴や物件の選び方を解説
中洲で飲食店を開業する際に必要な手順

中洲で飲食店を開業するなら、次のようなポイントを把握する必要があります。屋台やテナントなど、出店場所によって違いはありますが、基本的な手順は変わりません。
- 事前調査(競合の多さ・家賃相場・客単価など)
- 資金計画
- 資金調達
- 経営知識・経営戦略
- 各種届け出
福岡市では飲食店経営に関する相談窓口や支援制度を用意しています。「中洲で出店を考えているものの分からないことが多くて一歩が踏み出せない」という人は、積極的に利用しましょう。
詳しくは関連記事「福岡でスタートアップ・中小企業が資金調達を成功させる方法」と「福岡で起業・開業する人向けの支援制度や相談窓口|飲食店ならではのポイント」で説明しています。ぜひ、ご参照ください。
中洲でテナントを探すなら福岡テナント連合隊!

本記事では中洲で飲食店を経営したい人に向けて、中洲の魅力や特徴、出店の仕方などをご紹介してきました。
中洲は飲食店向け物件の多さや集客のしやすさから、飲食店の経営をしたい人にオススメのエリアです。ただし、家賃相場の把握や福岡市の支援制度・相談窓口の活用など、ポイントを押さえた経営が成功のカギです。
初めての飲食店なら経費が抑えられる屋台に挑戦し、自信がついたらテナントで出店するなど、無理のないペースで経営しましょう。
中洲でテナント物件をお探しの方は、福岡テナント連合隊をご利用ください。路面店、居抜き物件コーナーなど、事業者目線で詳細な検索ができるようになっています。
これから出店を考えている事業者様のお役に立てれば幸いです。