薬院は福岡市中央区の地名です。
地下鉄・バス・電車とアクセス手段が多く利便性抜群で、おしゃれな街として知られています。居住地・商業地・オフィス街とさまざまな面を持ち、独自性や個性のあるお店が成功しやすいのが薬院の特徴です。
薬院は、幅広い年齢層がターゲットで集客しやすく、出店したい人にとって魅力の尽きない街と言えるでしょう。
本記事では薬院で需要のある業種を4つに絞ってご紹介します。薬院で出店する際に必要な知識や店舗の探し方も解説しているので、開業をお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
薬院で需要の多い業種

「おしゃれ」「洗練されている」と表現されることの多い薬院は、こだわりのある店舗を構えたい人に最適です。お客様も薬院ならではのお店を求めて高いアンテナを持つ人が多いため、出店予定の人は徹底したリサーチが必須の街とも言えるでしょう。
薬院は学生からビジネスパーソンまで、さまざまな需要があります。オススメは、次の4つの業種です。
- 飲食店
- 美容
- 物販
- 事務所
福岡市では起業や開業を支援する制度もあります。薬院で出店を考えている人は、参考にしてみてください。
関連記事:福岡で起業・開業する人向けの支援制度や相談窓口|飲食店ならではのポイント
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飲食店
薬院は個人で出店したい人やこだわりの強い人にとって、オススメの飲食店エリアです。個性的な店舗や料理を求めて薬院へ訪れる人が多く、チェーン店や大手の飲食店は苦戦しやすい土地とも言われています。
観光客は天神や博多駅周辺ほど期待できません。しかし、ビジネスパーソン・学生・地元住民の利用が多く、お客様の年齢層や職業に幅があり、リピーターや常連客を得やすいのがメリットです。
ランチもディナーも需要が高く、さまざまな種類の飲食店があるのも、薬院ならではです。
定食・居酒屋・寿司・ラーメンなどのほか、イタリアン・フレンチ・中華・韓国・スペイン・タイなどの海外の料理を出している店もあり、バラエティに富んでいます。また、コーヒー・紅茶・焼き菓子を扱うカフェやパン屋も点在しています。
総じて、薬院では外観・内装・家具などに独自性があり、特定の料理を専門とする小規模な個人店が多い傾向です。
薬院は飲食店を経営したい人にとって選択肢が多く、個性の活かせる土地と言えるでしょう。
ただし、薬院に飲食店で新規参入するなら戦略や分析は欠かせません。「その店だからこそ」の専門的な店舗が多いので、競合店や人気店が近くにある場合はテナント物件や店舗を変えるなど、入念なリサーチと対策が必要です。
また、薬院の賃料は天神に比べると低いものの、利便性の高さや新しいビルの多さから他のエリアより若干高い物件が多めです。開業に必要な初期費用や運転資金については綿密な計算が求められます。
賃料を抑えるために駅の近くや大きな通りを避けたり、前店舗の設備がそのまま使える居抜き物件を選ぶなどの対策を取りましょう。
関連記事:居抜き物件とは?スケルトンとの違いや契約の流れを解説
美容
薬院はおしゃれなイメージが強く、女性に人気です。そのため、美容室・エステサロン・ネイルサロンなど、美容系の需要が高いエリアでもあります。
通勤や通学で薬院大通駅や薬院駅を利用する人が多く、駅の周辺はサロン系の店舗を経営する人にとって集客しやすい場所と言えるでしょう。
美容室は道路に面した路面店ばかりでなく、ビルの2階や3階を利用した店舗も数多くあります。また、エステサロン・ネイルサロン・まつげサロンなどのサロン系は、マンションの一室を利用した小規模な形態も多く、賃料を抑えた経営が目指せます。
福岡市では理容・美容行為を行う施設の開設や事業譲渡について案内しているので、薬院で開業を考えている人はご覧ください。
物販
薬院で開業している物販の店舗には、以下のようなジャンルがあります。
- アンティーク
- ヴィンテージ
- デザイナーズインテリア
- ハンドクラフト
- 家具
- 生活雑貨
- 和雑貨
- 輸入雑貨
薬院エリアでは、雑貨・アパレル・インテリアなどの物販にも需要があります。おしゃれな街として認識され、お客様の目も肥えており、他にはないセレクトショップや雑貨を目当てに訪れる人もいます。
規模も、個人店から複数の店舗を展開するお店までさまざまです。近年は実店舗とネットショップの両方で雑貨やインテリアを販売する店舗が多く、マンションやビルの一室を利用した小規模な店も多い傾向です。
学生・単身者・ファミリー層と購入層や消費額も多岐にわたります。また、カフェと雑貨店を兼ねて成功している店もあります。
客層の動向をリサーチしてターゲット層を絞り、出店場所や宣伝方法を工夫すれば出店予定の人にとってチャンスの多いエリアです。
事務所
薬院は次のような理由から、事務所や事業所の多いエリアです。
- 地下鉄七隈線と西鉄天神大牟田線の駅がある利便性の高さ
- オフィスビルの多さ
- 福岡市の行政・経済の中心地である天神に近い
薬院駅から天神駅まで徒歩20分の距離でありながら、天神エリアに比べてオフィスビルの賃料が低いことが事務所の多い理由と考えられます。
また、薬院は住居・飲食店・商業施設がバランス良く存在しており、従業員にとって働きやすい環境です。起業を考えている人にとって、薬院は非常に条件の良いエリアと言えるでしょう。
薬院の賃貸相場

ラルズネットの福岡テナント連合隊で調べたところ、薬院エリアの各業種の賃貸相場は下記のとおりでした。家賃相場によると、地下鉄七隈線 薬院駅エリアの平均家賃は360,865円です。
業種 | 最低賃料 | 最高賃料 |
---|---|---|
飲食店(重飲食・軽飲食・バー・クラブ・スナックを含む) | 85,000円 | 2,316,820円 |
美容・健康・介護 | 80,000円 | 2,316,820円 |
物販 | 85,000円 | 2,316,820円 |
事務所 | 80,000円 | 1,500,000円 |
薬院は「大正通り」や「高宮通り」などの大きな通りや駅周辺のテナント料は高めです。
しかし、路地や駅から離れた場所には賃料の安い物件もあり、選択次第では初期費用や運営費を抑えることも可能です。駅に近くても面積の小さい店舗で賃料を抑える方法もあります。
店舗やテナント物件を探す際は、利便性による集客と賃料のバランスが安定経営のカギとなるでしょう。
薬院は複合市街地

薬院を含む福岡市の業務・商業・教育・文化・行政機能・娯楽施設などが集積するエリアは「都心部」と位置づけられており、まち作りの基本方針が定められています。
一方、薬院には居住地としての面もあり、次のような特徴があります。
- 業務施設が多い
- 商業地域としての面
- 住宅地
詳しく見ていきましょう。
業務施設が多い
薬院はビジネス・オフィスビルが福岡市中央区の中でも上位の数です。今後さらに開発が進む予定で、オフィスビルの建設などが計画されています。2023年5月のデータでは「薬院・渡辺通地区」のオフィスの空室率は2.0%と低く、業務機能の高いエリアと言えるでしょう。
また、薬院には福岡銀行・西日本シティ銀行・福岡信用金庫など、銀行の支店が多く集まっています。
オフィス街として機能する渡辺通エリアとも隣接しており、ビジネスパーソンにとって重要な土地です。
参考:ニッセイ基礎研究所 「福岡オフィス市場」の現況と見通し(2023年)
商業地域としての面
薬院は「商業地域」に指定されています。大規模なショッピングモール類はありませんが、スーパー・ドラッグストア・飲食店などの小規模な商業施設が幅広く展開しているエリアです。
福岡市の都市計画マスタープランでは、薬院周辺の将来像を、「商業施設などに中高層住宅が共存し、利便性を生かした都市居住がたのしめるまち」としています。
たとえば、2005年には薬院大通り西地区で老朽化した建物を更新し、商業・業務などの複合施設に建て替えたり、都市計画道路を拡幅したりといった事業が完了しました。
今後も薬院では整備が進み、利便性が高くなると予測されます。
参考:薬院大通り西地区第一種市街地再開発事業(薬院大通センタービル)
住宅地
薬院2丁目と4丁目の一部は「第一種住居地域」に、薬院4丁目の一部は 「第二種住居地域」に指定されており、住宅街としても機能しています。とくに浄水通り近辺の薬院4丁目は「閑静な住宅街」「高級住宅街」と目されることもある地域です。
住み心地の良さや利便性の高さから、薬院は「福岡市の住みたい街ランキング」3位に選ばれています。実際に、世帯数9,854、人口16,204人と福岡市中央区ではもっとも多い世帯数と人口です。
また、教育機関が平尾や渡辺通などの近隣エリアに多いため、薬院から通学する人も多い傾向です。
薬院はおしゃれなイメージがあり治安も良いため、ファミリー層や単身者が安心して住めるエリアと言えるでしょう。
参考:福岡市 登録人口(公称町別)
ITmedia ビジネスオンライン 福岡県民が住みたい街 3位「薬院」、2位「小倉」、1位は?
薬院の基本情報

ここでは薬院の次のような基本的な情報を解説します。
- 薬院の歴史
- 最寄り駅
- 薬院の特徴
薬院の歴史
「薬院」の名称の由来は諸説あります。
奈良時代に吉備真備が大宰府に赴任した際、薬草園と薬草で治療する施薬院を作ったことから「薬院」と呼ばれるようになった、というのがもっとも有力視されている説です。
江戸時代から多くの医師が住んでおり、現在も他のエリアに医院を構えつつ、薬院に住む医師が多いそうです。
福岡市地下鉄「薬院駅」のシンボルマークは、薬を作る乳鉢と乳棒をもとにしており、薬草との縁の深さを感じさせます。
最寄り駅
薬院エリアの最寄り駅は次の3駅です。
- 西鉄天神大牟田線 薬院駅
- 福岡市地下鉄七隈線 薬院駅
- 福岡市地下鉄七隈線 薬院大通駅
西鉄天神大牟田線の薬院駅と福岡市地下鉄七隈線の薬院駅は2路線が乗り入れる駅です。
地下鉄七隈線は2023年に天神南駅から博多駅まで延伸開業したため、人の流入や地域の発展が見込まれます。その期待値は地価にも表れており、商業の中心部である薬院の2丁目や3丁目は右肩上がりです。
薬院2丁目を例にすると2017年から2022年にかけて367,000円/㎡も公示価格が上昇しています。
また、博多駅・六本松方面へのバスの乗換え駅としても使われており、薬院は交通の結節点として機能しているエリアと言えるでしょう。
薬院駅から福岡市の中心部である天神まで徒歩や自転車でも移動ができることから、利便性は抜群です。
薬院の特徴
薬院は1~4丁目で構成されており、丁が変わると次のように雰囲気や店舗の傾向も変化します。
エリア | 特徴 |
---|---|
1丁目 | マンションの1・2Fのテナントに入っている飲食店・カフェ・物販店(セレクトショップなど)が多い。薬院駅周辺にはチェーン店やファーストフード店なども展開する。美容室や美容サロンも駅周辺に多い。 |
2丁目 | 路地やマンション1Fなどの、こぢんまりしたテナントを利用した飲食店やレストランが多い。個性的かつ専門的な店舗が多いため、チェーン店はほとんどないエリア。 |
3丁目 | オフィスやマンションが目立つ。学生やビジネスパーソンによる通学・通勤による人通りのほか、大きな通りに囲まれたエリアは車の交通量も多い。ランチの需要が高くバラエティに富んだ飲食店が展開する。 |
4丁目 | マンションや一戸建てが多い。浄水通り沿いは高級住宅街としても有名。 |
薬院で出店を検討している人は、丁ごとの特徴も把握しておくと良いでしょう。
薬院で出店する際に必要な知識

さまざまな年齢・職業の客層が集まりやすい薬院は、出店したい人にとって魅力のあるエリアと言えるでしょう。ただし、薬院で店舗を経営する予定なら、次のような知識は必須です。
- 出店計画
- 福岡市の支援制度
- 店舗・テナントの探し方
それぞれ詳しく説明します。
出店計画
「薬院ならでは」のものを求めて訪れる人も多く、個性や専門性で勝負したい人にとって薬院はやりがいのあるエリアと言えます。
しかし、薬院に出店するなら、次のような戦略は欠かせません。
- コンセプトと運営方針
- エリアマーケティング
- 売り上げ目標
- 集客方法
薬院で安定経営している店舗は、常連客や遠方からのお客様が見込める品ぞろえやサービスを用意しています。新規参入する場合、業種を問わず競合店との激戦が予測されます。
事前に計画や対策を練るのは必須の作業です。
コンセプトと運営方針
まず、店舗のコンセプトと運営方針はしっかり固めておきましょう。薬院は独自の戦略を持つ店舗が多いため、ブレのある方針ではターゲット層が絞れません。
「どんな商品を、どんな方法で売るか」「店舗のイメージや店内の雰囲気・内装はどんな風にするか」など、ブランディングが必要です。
エリアマーケティング
前述の「コンセプトと運営方針」をブラッシュアップする際に必要な知識が、エリアのマーケティングです。薬院の客層、時間や平日・休日の人の流れの変化によっては、運営方針を変更する必要も出てくるでしょう。
また、競合店の位置・強み・客層などの徹底した分析を行うことで、出店場所が変化します。
「薬院で需要の多い業種」や「薬院の特徴」で需要のある業種や丁ごとの傾向の違いを説明しているので、参考にしてみてください。
場合によってはマーケティング会社に分析を依頼するのもオススメです。費用は掛かりますが、自分では気づけなかった思わぬ需要が見つかる可能性もあります。
売り上げ目標
薬院は天神ほどではありませんが、利便性の高さから周辺エリアと比べて賃料は高めです。開業資金はもちろん、運営コストは高めに見積もっておいた方が良いでしょう。
そのため、売り上げ金額はシビアな予測が必要です。薬院の市場調査を行い、自店舗の商品がターゲット層にどれくらい売れるのか、持続して経営が行えるのかを見積もります。
場合によってはキッチン・サロン・オフィスなどのレンタルスペースを利用する方法もあります。レンタルスペースで仮出店して、需要はあるか、どのくらいの売り上げになるかを確認してから本格的に店舗やテナント物件を借りるのもオススメです。
レンタルキッチンやレンタルサロンには必要な機材や家具がそろっているため、スペースの賃料を払うだけで出店が可能です。
集客方法
チラシの配布・ホームページの作成・SNSなどのツールを活用することで安定した集客につながります。
「開店したけれど、人が来ない」と悩んでいる場合、エリアに適した広告・宣伝を行っていない例が多く見られます。
薬院では通勤・通学の人が多いため、駅前や大きな通りでチラシ・クーポンなどを配る宣伝は効果があるでしょう。また、薬院はおしゃれなイメージがあるため、洗練された雰囲気のホームページを作ったり、Instagramで写真を多用し興味を持ってもらったりするのもオススメです。
福岡市の支援制度
薬院で出店するなら、福岡市の支援制度は把握しておいた方が良いでしょう。税金の優遇や融資・貸付の条件緩和など、さまざまなメリットが得られるので、経営の安定が早くなる可能性が高まります。
福岡市では起業やスタートアップを支援する制度を複数用意しており、相談窓口もあります。「出店計画を立てたものの、これで大丈夫だろうか」「専門家の意見が聞きたい」などの相談をしたり、情報を集めたりしたい人にオススメです。
詳しくは関連記事の「福岡で起業・開業する人向けの支援制度や相談窓口|飲食店ならではのポイント」をご覧ください。飲食店でのメニュー開発のヒントも説明しています。
また、資金調達についても「福岡でスタートアップ・中小企業が資金調達を成功させる方法」で解説していますので、参考にしてみてください。
店舗・テナント物件の探し方
薬院では、大きな通りに面した店舗や駅に近いテナント物件は集客がしやすい半面、賃料が高くなりがちです。
しかし、路地や裏通りなど、駅から近くても賃料が抑えられる店舗やテナントもあります。経営が安定するまで長期戦になることを考え、少しでも賃料の低い場所を見つけましょう。
薬院で店舗やテナントを探すなら、地域に根ざした不動産会社を利用してください。その土地ならではの情報を持っていることが多く、思わぬ掘り出し物が紹介されることもあります。Googleで「薬院 不動産会社」のようなキーワードを入れて探せば出てきます。
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薬院はおしゃれで洗練されたエリアとして有名です。「薬院ならでは」のアイテムやメニューを求めて訪れる人も多く、個性的かつ専門的な店舗を営業したい人にとって最適と言えるでしょう。
客層も学生・ビジネスパーソン・地元客などさまざま年齢層が対象で、集客のしやすいエリアです。
ただし、駅前や大きな通りに面した店舗の賃料は周辺エリアに比べて高めなので、集客と運営費のバランスを見極め、最適な店舗を見つけるのが重要です。
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