飲食店の独立資金はいくらかかる?調達方法と安く抑えるポイントを解説

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飲食店の独立資金はいくらかかる?調達方法と安く抑えるポイントを解説

飲食店を開業する際、真っ先に浮かぶ心配事といえば独立資金ではないでしょうか。

物件の契約や設備の購入、食材の仕入れなど、飲食店を始めるにはさまざまな費用がかかります。

経営を安定させるためにも、独立資金は余裕を持って準備しておきたいところです。

そこで本記事では、独立資金の目安から内訳、調達方法までを詳しく解説しています。さらに、開業にかかるコストを抑えるための実践的なアイデアも探ります。

「飲食店を始めたいけれど、独立資金の集め方がわからない」「独立資金を少しでも安く抑えたい」という方は、ぜひ参考にしてみてください。

飲食店の独立資金の目安は1,000万円

飲食店の独立資金の目安は1,000万円

飲食店を独立開業し、安定的に経営を続けるためには、おおよそ1,000万円の独立資金が必要とされています。

日本政策金融公庫の「2022年度新規開業実態調査」によると、開業費用の平均値は1,077万円、中央値は550万円というデータが明らかとなっています。

ただし、実際にかかる費用は店舗の規模や立地などによって大きく異なるため、事業計画をしっかりと立て、事前に必要な資金を的確に見積もることが不可欠です。

自己資金だけでは足りないと判断したら、親族からの資金援助や金融機関からの融資を受けるなどの方法を検討しましょう。

参考:日本政策金融公庫 総合研究所|2022年度新規開業実態調査

飲食店の独立資金の内訳

飲食店の独立資金の内訳

飲食店の独立資金の内訳は、大きく分けて以下の4つに分類されます。

  • 物件の取得費用
  • 内装工事や設備購入費
  • 運転資金
  • 生活費

それぞれ詳しく見ていきましょう。

物件の取得費用

賃貸物件の場合、敷金・礼金・前家賃・仲介手数料などが発生します。これらを合わせた契約費の総額は、賃料の10〜12ヶ月分程度になるのが一般的です。

さらに居抜き物件(前テナントの内装が残置された状態の物件)を選択する場合は、物件に残された内装や設備の買取り費用として、造作譲渡料が加算されるケースも珍しくありません。

上記の費用は物件の状態や立地によって変動するため、詳細な契約内容を確認し、想定外の出費に備えましょう。

居抜き物件については、こちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事:居抜き物件とは?スケルトンとの違いや契約の流れを解説

内装工事や設備購入費

内装や厨房設備の工事費、食器やインテリアなどの購入費は、店舗の魅力や機能性を決定付ける重要な要素です。

特に、スケルトン物件(建物の躯体のみの物件)を利用する場合、空調や電気などの大がかりな工事が必要となり、費用が高額になる傾向があります。

計画段階で綿密な予算を組むと、無駄を省きながらも魅力的で効果的な内装を実現できます。着実な経営基盤を築くためには、これらの費用も見逃さず計画を立てましょう。

スケルトン物件については、こちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事:スケルトン物件とは?契約前に知っておきたいデメリットやメリットを解説

運転資金

運転資金には月々の賃料や水道光熱費、従業員の給与、食材の仕入れコストなどが含まれます。

特に開業当初は、十分な売上を計上できず、運転資金を確保しきれない可能性も考えられるため、余裕のある資金計画を立てておきたいところです。

あらかじめ運転資金を試算して3〜6ヶ月分の余剰資金を確保すれば、初期段階から安定した経営が可能となり、急なトラブルにも対応できます。

生活費

開業当初は営業成績が不安定になりがちだからこそ、店舗の運転資金だけでなく、経営者の生活費も考慮することが重要です。

独立資金に生活費を組み込めば、生計に余裕をもたらし、経済的なプレッシャーを和らげられます。

忙しい開業プロセスにおいて、自身の健康と生活の安定は経営の成功に直結します。

生活費をしっかりと計画に組み入れ、堅実な経営基盤を築きましょう。

飲食店の独立資金の調達方法

飲食店の独立資金の調達方法

飲食店の開業に向けた、効果的な独立資金の調達方法を紹介します。

  • 親族からの資金援助
  • 日本政策金融公庫からの融資
  • 民間の金融機関からの融資
  • 補助金・助成金
  • クラウドファンディング

各手段のメリットとポイントを理解し、持続可能な経営のスタートラインを描きましょう。

親族からの資金援助

親族からの援助は、飲食店の独立資金調達のなかで最も手軽な手段の一つです。金融機関からの借入れに比べて手続きが簡易的で、利息や返済期間の融通も利きやすいのが特徴です。

ただし、親族から資金援助を受ける際は、いくつかのポイントを意識しましょう。

例えば、親族から資金を借りた場合は、税務署から贈与と疑われる可能性も考えられます。返済が難しい高額な借金や、利息や返済期間が設定されていないものほど注意が必要です。

また、親族からの資金援助とともに、金融機関からも融資を受ける場合、ある程度の自己資金を保有している必要があります。

しかし、親や親戚からの金銭受渡しは、借入れと贈与の場合で、自己資金として認められるかどうかの判断基準が異なります。借入れだと自己資金として認められない可能性があるため、事前に認識しておくことが大切です。

日本政策金融公庫からの融資

日本政策金融公庫は、小規模事業者や中小企業を支援する政府系金融機関です。主な融資制度として、「新創業融資制度」があります。

新創業融資制度は担保や保証人が原則不要で、比較的容易に融資を受けられます。単体での申し込みはできず、ほかの融資と組み合わせて利用する制度です。

返済期間や金利は、組み合わせる融資制度によって変動します。融資の限度額は最大3,000万円で、そのうち1,500万円が運転資金です。

融資を受ける条件として、創業資金総額の10分の1以上の自己資金を用意する必要があります。

参考:日本政策金融公庫|新創業融資制度

民間の金融機関からの融資

民間の金融機関からの融資には、「プロパー融資」と「信用保証付き融資」の2種類があります。

プロパー融資とは、金融機関との直接契約で行われる融資を指します。金利が低く、借入上限額も高いものの、審査基準が厳しく、実績のない新規事業者が融資を受けるのは難しいでしょう。

そのため、独立資金用の融資であれば、もう一方の信用保証付き融資を選ぶことになります。

信用保証協会が仲介する信用保証付き融資は、金融機関の貸し倒れリスクが緩和されるため、事業実績がなくても審査に通りやすいのが利点です。ただし、返済時には利息に加えて信用保証料が発生します。

また、一概に金融機関といっても、銀行と信用金庫では性質が異なります。銀行は営利目的の株式会社である一方、信用金庫は地域振興を図る相互扶助のための金融機関です。

信用金庫は地域の中小企業や個人商店にも積極的に支援を行っているため、新規事業者でも融資が受けやすくなっています。

ただし、金利が銀行よりもやや高めで、融資限度額も低い傾向があります。そのため、事前に条件をよく確認し、自身の事業計画に適した融資プランを見つけましょう。

補助金・助成金

地域活性化や新規事業者の支援を目的として、多くの自治体が独自の補助金・助成金制度を設けています。

補助金や助成金は融資とは異なり、返済が不要で利息も発生しません。これにより、独立資金の一部を効果的かつ低コストで確保できる利点があります。

一方で、補助金や助成金を受けるには、書類作成や申請手続きに手間がかかります。

また、採択までの過程には時間がかかりやすいため、余裕を持ったスケジュール設定が不可欠です。

クラウドファンディング

クラウドファンディングは、多くの支援者から少額ずつ資金を集める手段で、プラットフォームを通じて広く一般の人々から支援を受けられます。

クラウドファンディングは、支援金額に応じてリターン(返礼品)を設定できるのが特徴です。飲食店の場合、店舗で使えるクーポンや限定メニューをリターンに設定すれば、資金調達と同時に集客やテストマーケティングも行えます。

ただし、支援金のすべてを独立資金に使えるわけではありません。クラウドファンディングのプラットフォームに支払う手数料や、リターンの発送費などを差し引いた残りが手元に残ります。これらの要素を考慮し、目標金額やリターンの金額を設定すると良いでしょう。

また、目標金額を達成できるとは限らないので、あくまで独立資金の一部として計画することが重要です。

飲食店の独立資金を安く抑える3つのポイント

飲食店の独立資金を安く抑える3つのポイント

独立資金の調達方法を紹介しましたが、そもそも開業にかかるコストをできるだけ抑えることも大切です。

物件選びから備品の購入まで、あらゆる側面からコストを抑えると、資金調達の負担を減らせます。

間借り営業から始めてみる

最初から自分の店舗を持つのが資金的に難しい場合、既存の飲食店の定休日や営業時間外に場所を借りて営業する、「間借り」が有力な選択肢となるでしょう。

間借り営業では、賃貸契約や内装工事などの初期費用が軽減され、営業ノウハウを学びながら資金を節約できます。これにより、店舗運営の経験を積みながら、本格的な店舗をオープンする際の開業資金を貯められます。

間借り営業は開業初期段階における柔軟性と経済性を兼ね備えており、将来の独立に向けた段階的なステップとして効果的です。

間借り営業については、こちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事:飲食店の間借りとは?メリットやデメリット、向いている人の特徴を解説

居抜き物件を借りる

店舗のテナントは、大きく分けて居抜き物件とスケルトン物件の2種類が存在します。どちらを選ぶか迷うところですが、一般的に居抜き物件のほうが初期費用を抑えられます。

居抜き物件では、前テナントの内装や設備をそのまま利用できるため、新たに大がかりな工事を行う必要がありません。

特に厨房機器やカウンターなど、飲食店に必要な設備が整っている場合は、資金面での負担が大幅に軽減されます。スケルトン物件に比べて迅速にオープンできるため、初期投資の回収期間が短くなります。

居抜き物件は柔軟性と効率性を兼ね備えており、独立資金を最小限に抑えながらも、迅速にビジネスを始めるための魅力的な選択肢です。

備品は中古品も選択肢に入れる

インテリアに特別なこだわりがない場合、備品を中古で揃えることで資金を大幅に節約できます。

テーブルやイスなどの家具は、リサイクルショップや中古品販売店で手頃な価格で購入できます。そのほか、厨房設備の専門店やECサイトで、中古品の有無を確認するのも方法の一つです。

ただし、設備の使用年数や機能性の不具合、キズなどをしっかりと確認しておきましょう。

また、動作チェックを行うとともに、修理や部品交換の費用も合わせて確認しておくことが大切です。

独立資金に余裕を持たせて開業後のリスクを抑えよう

独立資金に余裕を持たせて開業後のリスクを抑えよう

飲食店を開業するには、独立資金の確保とコストを抑える工夫が成功の鍵となります。融資や補助金といった仕組みを活用しながら余裕を持った資金計画を立て、持続可能な店舗運営のために備えましょう。

独立資金の内訳として物件の取得費用が大きな割合を占めることから、物件選びも重要なポイントです。

貸店舗・貸事務所をお探しの際は、地域特化型テナント物件探し専門ポータルサイト『テナント連合隊』を活用してみてはいかがでしょうか。

路面店、居抜き物件コーナーなど、事業者目線で詳細な検索ができるようになっています。
『テナント連合隊』が、これから出店を考えている事業者様のお役に立てれば幸いです。

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この記事を書いた人: ラルズネット編集部

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