飲食店の開業資金の相場は、平均で1,000万円程度といわれています。非常に大きな金額なので、できるだけ助成金や補助金などの支援制度を使って、負担を減らしたいところです。
本記事では、飲食店の開業時に使える助成金・補助金、融資制度などを紹介しました。
助成金と補助金の違いや、情報を見逃さないための調べ方なども解説していきます。
飲食店の開業時に助成金・補助金を使いたい方の参考になれば幸いです。
関連記事:飲食店の独立資金はいくらかかる?調達方法と安く抑えるポイントを解説
目次
飲食店の開業資金として助成金は使えない

まず結論をお伝えすると、飲食店の開業資金として助成金・補助金は使えません。
助成金や補助金は、事業が完了してから給付されるためです。
また、申請から給付まで約1年程度の時間がかかります。そのため、助成金や補助金は、早急に手元へ資金を集めたい場合に使える手段ではありません。
一方で、助成金・補助金は基本的に返済が不要なので、事業を進めるうえで心強い支援となるのも事実です。
後述する「飲食店の開業時に使える給付金・融資」の項目では、具体的な制度を紹介していきます。
助成金・補助金の違い

そもそも助成金や補助金といっても、具体的な違いがよくわからない方も多いのではないでしょうか。
助成金と補助金の違いについて、下記の表にまとめました。
項目 | 助成金 | 補助金 |
---|---|---|
おもな管轄 | 厚生労働省 | 経済産業省 中小企業庁 |
交付までの難易度 | 要件を満たせばもらえる可能性が高い | 審査を通る必要がある |
おおよその金額 | 数十万円~数百万円程度 | 数百万円以上 |
公募期間 | 長い(通年) | 短い(数週間~1か月程度) |
返済 | 不要 | 不要 |
それぞれの目的や受給までの流れについて、詳しく見ていきましょう。
助成金とは
助成金とは、おもに雇用や労働に関する課題解決を目的とした制度です。
長時間労働の改善や、育児・介護休暇の取得などの費用を助成します。従業員を雇用している事業主に支給されるため、飲食店をご自身や家族のみで経営している場合は、対象になりません。
基本的な受給までの流れは下記のとおりです。
- 実施計画を作成する
- 書類を提出する
- 実施計画を実行する
- 支給を申請する
- 受給
原則的に、助成金は要件を満たしていれば受給されます。
補助金とは
補助金とは、社会貢献している企業のビジネスを補助することが目的の制度です。
仕入れにかかる経費や、施設の増改築・人手不足対策のデジタル化などの費用を補助します。飲食店が使える制度も数多く実施されています。
基本的な受給までの流れは下記のとおりです。
- 必要な書類を提出する
- 審査が行われる
- 採択結果が通知される
- 交付を申請する
- 事業を実施・報告する
- 受給
補助金が交付されるためには審査を通過する必要があります。
融資とは
飲食店の資金として使える手段には、助成金・補助金のほかに、金融機関による融資もあります。
助成金・補助金と異なり、先払い方式であるため、開業前に資金を得られるのがメリットです。
基本的な流れは下記のとおりです。
- 窓口で相談する
- 必要な書類を提出する
- 審査を受ける
- 融資
金融機関による融資は、助成金・補助金のように受給されるわけでないため、返済義務・利息の支払いが発生します。
飲食店の開業時に使える給付金・融資

この項目では、飲食店の開業時に使える給付金や、融資の制度を解説していきます。
以下のタイプに当てはまる方は、給付金や融資を受けることが可能です。
- 創業したい
- 女性・若者・シニアのいずれかに該当する
- 一度廃業しているが再チャレンジしたい
創業したい
飲食店を開業する際に使える補助金として、各都道府県・地方自治体が実施している「創業者向け補助金・給付金」があります。
都道府県や地方自治体によって、要件や補助額はさまざまです。一例として、東京都の「創業助成事業」を紹介します。
「創業助成事業」の対象者は、都内で創業を予定する人・または創業して5年未満の中小企業者等です。
助成対象額は経費の3分の2以内で、限度額は300万円までです。賃借料や広告費、従業員人件費まで幅広い経費が助成の対象となります。開業したての飲食店にとって、心強い支援です。
創業時に使える助成金・補助金はさまざまな自治体で実施されているため、中小企業基盤整備機構が運営する「J-Net21」で一度調べてみることをオススメします。
「創業者向け補助金・給付金(都道府県別)」のページでは、地方別に補助金・給付金が掲載されており、わかりやすいです。
項目 | 内容 |
---|---|
分類 | 補助金 |
主催 | 各都道府県・地方自治体 |
参考サイト | https://j-net21.smrj.go.jp/support/covid-19/sogyo.html |
女性・若者・シニアのいずれかに該当する
女性・若者・シニアに向けて、開業資金を融資しているのは、日本政策金融公庫です。
日本政策金融公庫では、「新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)」として、運転資金・設備資金を支援してくれます。
融資を受けられる要件は下記のとおりです。
新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方(注1)のうち、女性または35歳未満か55歳以上の方
引用元:日本政策金融公庫
(注1)「新たに営もうとする事業について、適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると認められる方」に限ります。
なお、創業計画書のご提出等をいただき、事業計画の内容を確認させていただきます。
引用元:日本政策金融公庫
融資される金額は最大で7,200万円(うち運転資金4,800万円)と高額なので、要件に該当する方は一度相談してみてはいかがでしょうか。
なお、返済義務については、設備資金は20年以内・運転資金が10年以内と定められています。利息だけを返済する「据置期間」は、どちらも5年以内です。
項目 | 内容 |
---|---|
分類 | 融資 |
主催 | 日本政策金融公庫 国民生活事業 |
公式サイト | https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/02_zyoseikigyouka_m.html |
一度廃業しているが再チャレンジしたい
一度は廃業したものの、事業に再チャレンジしたい方は、日本政策金融公庫の「新規開業資金(再挑戦支援関連)」が利用できます。
融資を受けられる要件は、下記のとおりです。
引用元:日本政策金融公庫
- 廃業歴等を有する個人または廃業歴等を有する経営者が営む法人であること
- 廃業時の負債が新たな事業に影響を与えない程度に整理される見込み等であること
- 廃業の理由・事情がやむを得ないもの等であること
融資される金額は、前述の「新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)」と同じく、最大で7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。
返済期間は、設備資金は20年以内・運転資金は15年以内と定められています。どちらも据置期間は5年以内です。
項目 | 内容 |
---|---|
分類 | 融資 |
主催 | 日本政策金融公庫 国民生活事業 |
公式サイト | https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/05_rechallenge_m.html |
飲食店の開業後に使える助成金・補助金

前項では、飲食店の開業時に使える給付金や融資について解説しましたが、開業後に利用できる制度も複数あります。
以下の表では、開業後に使える助成金・補助金の例を、目的や対象で分けてまとめました。
目的・対象の例 | 名称 | 使える範囲・条件の例 | 公式サイト |
---|---|---|---|
新しい販路開拓をしたい | 小規模事業者持続化補助金 | ・必要な機械、装置等の購入 ・新たな販促用チラシ等の作成、送付 ・webサイトの開発、更新など ※webサイト関連費のみでの申請は不可 | 全国商工会連合会 |
地域に密着した事業を立ち上げたい | 地域経済循環創造事業交付金 (ローカル10,000プロジェクト) | 地域の人材や資源・資金を活用して新たな事業を立ち上げる際の初期費用 | 総務省 |
非正規雇用の従業員をキャリアアップさせたい | キャリアアップ助成金 | 非正規雇用の労働者に対して、正社員化・賃金改定などを行うこと | 厚生労働省 |
高齢者・障がい者を積極的に雇用したい | 特定求職者雇用開発助成金 | 高齢者や障がい者等の就職が困難な求職者を、ハローワーク等の紹介により、継続して雇用すること | 厚生労働省 |
一定期間の試行雇用をしたい | トライアル雇用助成金 | 就職が困難な求職者(※要件あり) を3か月試行雇用することが条件 | 厚生労働省 |
ITツールで生産性を上げたい | IT導入補助金 | ・ソフトウェア購入費 ・導入関連費 | IT導入補助金2024 |
新製品を開発したい生産プロセスを改善したい | ものづくり補助金 | ・機械装置・システム構築費 ・専門家経費 ・クラウドサービス利用費 | ものづくり補助金総合サイト |
分煙・禁煙を進めたい | 受動喫煙防止対策助成金 | 専用喫煙室の設置にかかる経費 | 厚生労働省 |
働く環境を整備したい | 働き方改革推進支援助成金 | ・労務管理用ソフトの導入・更新 ・外部の専門家によるコンサルティング など | 厚生労働省 |
開業後の課題解決に役立てば幸いです。
飲食店の開業資金を調達する方法|地方別まとめ

「創業したい」の項目で前述したとおり、開業時に使える助成金・補助金は、地方自治体ごとに制度が用意されています。(参考:J-Net21「創業者向け補助金・給付金(都道府県別)」)
不動産連合隊ジャーナルでは、開業資金を調達する方法について、地方別に解説していきます。
それぞれの地方での相談窓口についても解説していますので、あわせてご覧ください。
飲食店の開業時に助成金・補助金を使う注意点

飲食店の開業時に助成金・補助金を使う際は、以下の注意点があります。
- 税金がかかる
- 給付まで時間がかかる
税金がかかる
助成金・補助金は経理の処理上では「収入」扱いになるため、税金がかかります。具体的には、法人の場合は法人税、個人の場合は所得税が課される仕組みです。
ただ、助成金・補助金の多くは経費を上回る支給はされないため、事業が赤字である場合、非課税になるのが一般的です。
また、感染症や自然災害などの事情で困窮している方向けの助成金・補助金は、非課税となるケースがあります。
支給まで時間がかかる
助成金・補助金は、申請から支給まで約1年かかります。
必要なときにすぐもらえるわけではありません。
助成金・補助金の情報を見逃さない調べ方

さまざまな助成金・補助金に関する情報がある一方で、「そもそも、どうやって情報を調べたらいいかわからない」という方もいるのではないでしょうか。
この項目では、助成金・補助金の情報を見逃さないために、調べ方を5つまとめました。
- 地方自治体のホームページで検索する
- RSSリーダーやGoogleアラートを活用する
- J-Net21を活用する
- 補助金・助成金のポータルサイトを活用する
- 商工会議所に相談する
地方自治体のホームページで検索する
助成金・補助金の情報を調べる基本的な方法は、地方自治体のホームページです。
都道府県・地方自治体の公式ホームページでは、助成金・補助金の情報を掲載しているため、こまめなチェックをオススメします。
後述する「J-Net21」でも助成金・補助金の情報は掲載されていますが、すべての自治体の内容を網羅しているとは限りません。また、助成金・補助金の名称を知らないと情報にアクセスできないケースも考えられます。
助成金・補助金の情報を調べる際は、地方自治体のホームページで検索してみるのが確実です。
RSSリーダーやGoogleアラートを活用する
地方自治体のホームページで助成金・補助金を調べるといっても、毎日複数のサイトを訪問して新着情報をチェックするのは、時間的に難しい方も多いでしょう。
そのようなときに便利なのが、RSSリーダーやGoogleアラートです。
RSSリーダーとは、ホームページの更新情報を配信する技術であり、有名なものは「feedly」です。新着情報をチェックしたいホームページや、見逃したくないキーワードを登録しておけば、複数の情報を一覧で参照できます。
また、Googleアラートで「助成金 〇〇(地名)」「補助金 〇〇(地名)」など、アラートを作成しておけば、メールで新着情報を教えてくれます。掲載元は「ニュース」「ブログ」「ウェブ」などから選ぶことが可能です。
情報収集を効率化したいときにオススメです。
J-Net21を活用する
中小企業基盤整備機構が運営する「J-Net21」では、助成金・補助金の情報を、都道府県や業種別に検索できます。
検索結果では開催期間も表示されるため、申請までどのくらいの猶予があるかすぐにチェックできます。ほかにも、セミナー・イベントの開催や、ビジネスアイデアのコンペに関する情報も検索が可能です。
日本全国で行われている助成金・補助金が調べられるため、起業・開業する地域を決める際にも、参考にしてみてはいかがでしょうか。
補助金・助成金のポータルサイトを活用する
前述の「J-Net21」以外にも、補助金・助成金を調べられるポータルサイトがあります。
以下は補助金・助成金のポータルサイトの一例です。
たとえば、株式会社補助金ポータルが運営する「補助金ポータル」では、検索結果一覧に助成金額や申請期間が表示される仕組みです。「締切日が近い」「金額が高い」という項目で並べ替えも可能なので、条件に近い制度が探しやすいでしょう。
「J-Net21」と並行して活用すると、情報の抜け漏れを抑えられます。
商工会議所に相談する
ホームページやポータルサイトで調べてもよくわからない場合は、商工会議所に相談するのもオススメです。
商工会議所では、助成金・補助金に関する相談を受け付けており、案内や申請に関する支援も行っています。
予約なしの相談だと混雑している場合もあるため、事前の予約がオススメです。対面やオンラインでも相談できます。
自力で助成金・補助金を調べることに行き詰った場合は、次のような専門家への相談もご検討ください。
- 税理士
- 公認会計士
- 中小企業診断士
商工会議所では、これらの専門家に相談できる窓口を設けているところが多いので、一度ホームページをチェックしてみると良いでしょう。
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飲食店の開業時には、助成金・補助金が大きな助けとなります。残念ながら開業資金や元手としては使えませんが、事業を行っていく資金の補助となるのは確実です。
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