飲食店を経営したいと考えている方のなかには、小さい飲食店の開業を検討している方もいるでしょう。
小さい飲食店は、開業資金や運転資金を節約しやすいメリットがあるものの、小規模ならではのデメリットもあります。そのため、メリットとデメリットをよく理解したうえで、自身との相性を見定めることが重要です。
本記事では、小さい飲食店のメリットやデメリット、開業する際の流れを解説します。成功のためのポイントも挙げているので、ぜひ参考にしてください。
目次
小さい飲食店とは

小さい飲食店とは、一般的には面積が10坪程度、席数が10席以下の小規模店を指します。小規模なため一人客の利用も多く、バー・カフェ・ラーメン店・立ち食い蕎麦などの業態に適しています。
小さい飲食店は敷地面積が狭く、来店客との距離を縮められるのが特徴です。そのため、店員との会話を楽しむアットホームな雰囲気の店舗も少なくありません。
一人でも運営できる手軽さが魅力
小さい飲食店なら一人でも運営できます。
一人で店舗を回す場合はスタッフの人件費がかからないほか、求人募集や教育を行わずに済むため、コストや手間を抑えられるのが利点です。また、自身の要望をすべて店舗運営に反映できる、自由度の高さにも特徴があります。
ただし、調理や接客を一人で行う必要がある点には注意が必要です。小さい飲食店を一人で運営するなら、飲食業の実務経験があるほうが良いでしょう。
拡大が見込まれるフードデリバリーに着目するのも一案
新型コロナウイルスの影響で外食産業が大きなダメージを受けるなか、フードデリバリーを導入して売上の底上げを狙う飲食店が増えています。
フードデリバリー関連のコンサルティングサービスを提供するGRC株式会社(東京都千代田区)によると、2020年のフードデリバリーの市場規模は、2018年の約3,600億円に比べて1.3倍の約4,900億円に拡大したとされています。
加えて、2023年には約6,800億円に拡大が見込まれており、小さい飲食店と相性の良いフードデリバリーに着目するのも方法の一つです。
参考:PR TIMES|継続率は驚異の90%以上!デリバリー支援のGRC、累計契約数90店舗、既存デリバリーブランド導入数は420店を突破!
小さい飲食店を開業するデメリット

小さい飲食店を開業する際のデメリットを紹介します。無理なく店舗運営するためにも、小規模店ならではの注意点を理解し、事前に対策を講じましょう。
仕入れコストが高くなりやすい
大規模店であれば大量仕入れによって原価を安く抑えられますが、小規模店には難しく、結果として仕入れコストが高くなりがちです。
仕入れコストを抑えるには、メニューの値段を上げたり、注文数が少ないメニューを減らしたりすると良いでしょう。
ただし、メニューを値上げする際は単に価格を設定し直すのではなく、料理に付加価値を持たせることが大切です。食材を見直して産地や鮮度にこだわるほか、盛り付けに工夫を行うなど、価格改定に顧客が納得できるような施策を考えましょう。
大きな売上が期待しにくい
客席数が限られている小規模店舗では大きな売上を期待しにくいため、回転率を高める工夫が求められます。
回転率を高める方法には次のような種類があります。
- 料理の提供や片付けなどのオペレーションを効率化する
- 来店客が着席する前に注文を聞く
- 来店客とスタッフの動線を意識して店舗家具を配置する
- メニューの数を減らして注文時の考える時間を削減する
ただし、回転率を意識しすぎると、小さい飲食店ならではの、来店客とコミュニケーションを取りやすい利点を活かしにくくなります。そこで例えば、「お客様がゆっくりとくつろげる空間」をブランドコンセプトに設定する場合、回転率を重視するのではなく、長期的な顧客との関係性に重きを置くのも良いでしょう。
いずれにせよ、ブランドコンセプトを忠実に再現しつつ、どのように売上を確保できるかを十分に検討することが大切です。
体調不良で営業できない場合がある
一人経営、または少人数の従業員で営業している場合、体調不良などで欠勤が生じると営業自体が困難になってしまいます。
万が一に備えて、急な欠勤が出た場合の対処法を考えておきましょう。
普段から健康管理に気を遣うのはもちろんですが、そのほかにも仕事を適度に分散したり、身内に協力を依頼できる体制を整えたりといった工夫も必要です。
小さい飲食店を開業するメリット

小さい飲食店を開業するメリットを見てみましょう。前述したデメリットも参考にしつつ、自身と小さい飲食店との相性を検討してみてください。
資金繰りしやすい
一般的な物件に比べて小規模だからこそ、さまざまなコストを抑えられるのが利点です。
具体的には敷金・礼金や仲介手数料、設備購入費といった初期費用のほか、家賃や水道光熱費などのランニングコストを、大規模な店舗よりも大幅に抑えられます。また、開業時の資金が少なければ、他社からの借り入れも少額で済みます。
結果的に店舗運営におけるコストの負担が和らぎ、よりスムーズな資金繰りが可能です。より安定した経営につながる可能性が高まるため、規模の小さい飲食店は、初めて開業する方にとって適切な選択肢だといえるでしょう。
常連客が増えやすい
小規模店は来店客との距離が自然と近くなるため、コミュニケーションを取りやすいのが魅力です。
席数が少ないため、来店客それぞれに時間をかけて接客するなど、信頼関係を構築しやすい環境ともいえるでしょう。
接客や会話を通して店舗や従業員に愛着を持ってもらえれば、リピートにつながりやすくなります。
自由度が高い
小さい飲食店は、一般的な店舗に比べて店舗運営にかかわる従業員が少ないため、経営に関する自由度が高く、個性を出しやすいメリットがあります。
時期によって内装やサービスの内容を変更するなど、柔軟に物事を決定できます。
また、従業員との距離も近く、十分に時間をかけて教育できるのも特徴です。不明な点があれば、その場で指導できるため、マニュアル作成などの手間が少なく、空いた時間をほかの業務に割り当てられます。
小さい飲食店の開業の流れと必要な準備

ここでは、小さい飲食店を開業する際の流れと、必要な準備作業について解説します。
次のような手順をしっかりと想定したうえで、余裕のあるスケジュールや資金計画を立てておきましょう。
- コンセプトや事業計画、メニューを決める
- 資格取得と届け出の申請
- エリアや物件を探す
- 店舗の内外装工事、備品の購入
コンセプトや事業計画、メニューを決める
業態や店舗のコンセプト、客層、提供するメニューを決定します。
一から事業計画を決めるのが難しい場合は、ベンチマークとなる既存店舗を参考にするのがおすすめです。実際にその店舗へ足を運び、提供されているメニューや料理の内容、店内の雰囲気、接客方法などを確認しておきましょう。
また、外部から資金調達するケースも想定し、明確な事業計画書を作成します。物件を選ぶ際にオーナーと家賃交渉をする場合も同様、事業計画書を用意しておくほうが有利です。
資格取得と届け出の申請
小さい飲食店を開業するにあたり、食品衛生責任者の資格を取得しなければなりません。
また、営業形態や店舗の規模などに応じて、深夜酒類提供飲食店営業開始届出や防火管理者選任届出といった手続きも必要です。
詳細は以下の記事で解説していますので、開業前に準備しておきましょう。
関連記事:居酒屋開業に必要な資格と届出まとめ|よくある疑問も紹介
エリアや物件を探す
飲食店の物件を探す際は、オフィスビルや商業ビルなどに入居するテナントを検討するのが一般的です。
テナント物件には、前テナントが使用していた設備や調度が残っている「居抜き物件」、建物の内装や設備がすべて撤去されている「スケルトン物件」の2種類のタイプがあります。
居抜き物件は、レイアウトを変更しにくいため、独自性は出しにくいものの、設備の購入費や工事費を抑えられる点や、開業までの時間を短縮できるのがメリットです。一方、スケルトン物件はレイアウトを柔軟に変更しやすい反面、内装や設備を一から用意する必要があります。
それぞれの物件の特徴を理解し、適切なタイプを選び分けましょう。
関連記事:居抜き物件とは?スケルトンとの違いや契約の流れを解説
スケルトン物件とは?契約前に知っておきたいデメリットやメリットを解説
店舗の内外装工事、設備の購入
物件を契約した後は、店舗のコンセプトに合わせて内外装の工事を行うほか、調理に必要な設備を購入しましょう。
工事の際は、適切な施工会社を選ぶのも重要です。施工会社によって強みや弱みが異なるため、口コミや実績などを参考にしつつ、複数社を比較・検討しましょう。
工事費や設備の購入費は、居抜き物件とスケルトン物件で大きな差が生まれます。
基本的に、前テナントの内装をそのまま利用できる居抜き物件のほうがコストを抑えられます。しかし、想定外の解体費や修繕費が生じる可能性も考えられるため、内見時に設備などの状態をしっかりと確認しておくことが重要です。
開業を成功させるポイント

小さい飲食店の開業を成功させるためのポイントを3つ紹介します。ポイントを押さえて、安定した店舗運営を目指しましょう。
- コンセプトを具体的に設計する
- 集客の戦略を立てる
- コストを抑える方法を理解する
コンセプトを具体的に設計する
小さい飲食店の経営にあたり、まずは店舗のコンセプトを明確にすることが重要です。コンセプトは店舗の方向性を表す重要なもので、ターゲット層や立地、メニューなどのさまざまな要素に影響を与えます。
コンセプトを明確にするには、5W2Hのフレームワークに沿って考えを整理すると良いでしょう。
5W2H | 店舗コンセプトの内容 |
---|---|
when(いつ) | 開業時期や営業時間 |
where(どこで) | 出店エリア |
who(誰に) | ターゲット層の年齢や性別など |
what(何を) | 提供するメニューの内容やサービスの特徴 |
why(なぜ) | 店舗を開く目的 |
how much(いくらで) | メニューの価格 |
how(どのように) | 営業形態やメニューの提供方法 |
コンセプトの大まかなイメージが湧いた後は、その内容をコンセプトシートにまとめましょう。
コンセプトを一言で表したキャッチコピーや出店エリア、ターゲット層などの情報を1枚のシートに整理すると、開業後に問題が発生した場合でもスムーズな軌道修正を行えます。
集客の戦略を立てる
安定した集客を実現するためには、前もって戦略を立てる必要があります。集客方法は、新規顧客とリピーターのどちらに注力するかによって方策が異なります。
例えば、新規顧客をターゲットにする場合、リスティング広告や動画広告、折込チラシなどの手法が効果的です。一方のリピーターを集客する際は、リターゲティング広告やメールマガジンなどの手法を活用できるでしょう。
また、飲食店にとってグルメサイトも大きな集客手段の一つです。
グルメサイトで良い口コミを獲得すれば、集客だけでなくブランディングにもつながります。ただし、掲載費などのコストが発生するため、あらかじめ費用対効果をしっかりと検討しましょう。
コストを抑える方法を理解する
小さい飲食店は面積が小さい分、売上が限定されるケースも珍しくありません。そのため、初期費用や運営コストが負担にならないよう、コスト削減の手段を検討しておきましょう。
代表的な手段の一つとしては、前述した営業形態に工夫を凝らす方法が挙げられます。フードデリバリーやゴーストキッチン、シェアキッチンなどは、店舗の維持コストを最低限に抑える効果的な手段です。
また、居抜き物件や敷金・礼金が不要な物件を探すなど、テナント契約時の初期コストを抑える工夫も大切です。
小さい飲食店の物件選びには「テナント連合隊」を活用しよう!

本記事では、小さい飲食店を開業する際のメリットや注意点のほか、開業に必要な手続きや成功のポイントを紹介しました。小規模店ならではの利点を活かし、資金繰りや集客方法に工夫を凝らして安定した経営につなげましょう。
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