北海道は、壮大な自然環境や豊かな文化・歴史を誇りながら、近年は人口減少や過疎化といった課題が深刻化しつつあります。そのため、多くの自治体が地方創生の政策に取り組み、地域の魅力を高めようと努めています。
地方創生に積極的な自治体は移住者向けの支援も充実している傾向があるため、移住先を決めるうえで地方創生は重要な検討要素の一つです。
本記事では、札幌市をはじめとする8つの自治体に焦点を当て、それぞれの地方創生プロジェクトや移住者へのサポート制度について詳しく紹介します。
北海道への移住に興味があるものの、エリアを絞りきれず迷っている方はぜひ参考にしてみてください。
目次
北海道の現状と課題
北海道の雄大な自然美や、四季折々の魅力は多くの人々を魅了しますが、ほかの地域と同様に高齢化や過疎化といった課題を抱えているのも事実です。
地方創生の取り組みを紹介する前に、ここでは北海道が抱える現状の課題を解説します。
人口減少と高齢化
北海道の人口は、戦後から1990年代後半までは増加傾向にありましたが、1997年に約570万人に達して以降は減少に転じ、現在も全国を上回るスピードで減少が続いています。
さらに高齢化も進んでおり、1996年には65歳以上の高齢者人口が、0〜14歳の年少人口を初めて上回りました。
今後もこのような状況が続けば、都市機能や経済活動の維持が難しくなると懸念されています。
そのため、各自治体は若い世代の人口を増やそうと、移住・定住の促進をはじめとする地方創生に取り組んでいます。
参考:北海道庁|【更新】北海道人口ビジョン(改訂版)のオープンデータ
地方の過疎化
北海道の人口の4割近くが札幌市に集中し、首都圏への流出も続くなか、地方部の過疎化も深刻な状態です。
2023年10月時点で、北海道では152の市町村が過疎法にもとづく過疎地域市町村に指定されています。
過疎化によって公共サービスのレベルの低下や交通手段の不足、空き家の増加などの問題が生じていることを踏まえ、各自治体では移住の促進・地域間の交流・人材育成などに力を入れ、持続可能な地域社会づくりを進めています。
農業の担い手不足
北海道の主要産業である農業ですが、高齢化に伴って担い手不足が深刻化しています。
北海道の農政部技術普及課の調査によると、2021年の道内の新規就農者総数は477人でした。これまでは600人ほどで推移していましたが、近年は500人を下回っています。
こうした状況を改善するため、北海道では先端技術を活用したスマート農業の推進や、新規就農者への研修実施、農家の経営支援などに取り組んでいます。
参考:北海道庁|令和3年(2021年)新規就農者実態調査結果の概要
地方創生を積極的に推進する北海道の自治体8選
ここまでお伝えしてきた北海道の現状と課題を踏まえ、北海道庁や各自治体はさまざまな角度から地方創生に取り組んでいます。
地方創生への取り組みは移住のしやすさや住みやすさにも関係するため、移住先を決めるうえで、ぜひチェックしておきたいポイントです。
ここでは、道内で地方創生を積極的に推進している8つの自治体を紹介します。
札幌市
北海道最大の都市である札幌市は、都市機能と豊かな自然が共存する街です。便利な暮らしを満喫しながらも、北海道ならではのグルメや自然を楽しみたい方には適切な移住先といえます。
また、ほかの大都市に比べて家賃を抑えやすいことや、公共交通機関が充実しており車がなくても生活できることから、生活コストを抑えやすいのも札幌市の魅力です。
札幌市が行っている主な地方創生の取り組みは、子育て支援です。
子育てサロンをはじめとする交流場所の提供や、ひとり親家庭への経済的支援などを通じて、子育ての不安や負担の軽減を図っています。
関連記事:札幌市への移住を叶えたい!6つの魅力や活用できる支援制度を紹介!
函館市
北海道の南部に位置する函館市は、本州と北海道を結ぶ玄関口として発展してきました。
函館・五稜郭タワーや函館山ロープウェイなど、幅広い観光スポットに恵まれています。積雪量が比較的少なく、穏やかな気候のため、寒さが苦手な方でも暮らしやすい街です。
また、港町であることから海産物の宝庫としても知られ、地元で採れた新鮮な食材を安く購入できます。
地方創生の施策としては、女性や若者の就労支援、企業誘致の促進など、地域活性化にかかわる取り組みが中心です。
また、旅先などで仕事をしながら余暇を楽しむワーケーションを促進しているのも、観光地として知られる函館市ならではの取り組みです。函館市が運営するWebサイト「ワーケーション in 函館」には、ワーケーションに使える施設やモデルプラン、おすすめのアクティビティといった情報が掲載されています。
江別市
江別市は、商業施設や公共交通機関が充実している札幌市にアクセスしやすいメリットがあります。
市内にはパークゴルフ場や公園などの遊び場が多く、花火大会や夏祭りといったイベントも豊富にあるため、家族そろっての移住に適しています。
江別市が地方創生のために取り組んでいるのが、「生涯活躍のまち整備事業」です。
市民向けの交流サロンの設置や、大学による出張講座など、生涯にわたって暮らし続けられるまちづくりの実現を目指しています。
関連記事:北海道江別市に移住するならどこがいい?おすすめエリアを解説
恵庭市
道央に位置する恵庭市は、花に彩られた街並みから「花のまち」として知られています。
ガーデンツアーや花に関する講習会などのイベントが、年間を通して数多く開催されています。
こうした特徴を地方創生にも活かそうと、全国都市緑化フェアの開催誘致に取り組み、2022年には「ガーデンフェスタ北海道2022」として実際にイベントが開催されました。
さらに、外国人が住みやすいまちづくりを目指しているのも特徴です。市民ボランティアによる日本語学習の場を設けるなど、多文化共生による地方創生に取り組んでいます。
関連記事:北海道恵庭市へ移住したい!街の魅力や支援制度を徹底解説
釧路町
北海道東部に位置する釧路町は、釧路市に隣接する人口2万人ほどの町です。
冬場でも晴れの日が多く、積雪量も少ないため、雪があまり降らない地域からの移住でも暮らしやすいでしょう。
地方創生の取り組みとしては、子育て支援に力を入れています。
釧路町版「ネウボラ事業」では、妊娠中から就学前までの子育てを一貫してサポートするため、子育てヘルパーの派遣や子どもショートステイなどを実施しています。
参考:取組事例 妊娠・出産・子育てまで切れ目のない一貫した支援(ネウボラ)の充実
関連記事:釧路は住みやすい?移住のメリットと注意点を徹底解説-不動産連合隊ジャーナル
浦河町
日高振興局管内の南部にある浦河町は、太平洋と日高山脈に囲まれた自然豊かな町です。
町内には約200もの牧場があり、国内有数の馬産地であることから「馬のまち」としても知られています。
浦河町では、現役世代の移住・定住を促進することで地方創生を推し進めてきました。
具体的には、都市部の若者に町での仕事と暮らしを体験してもらう北海道ふるさとワーキングホリデー事業や、町内で就職するUターン・Iターンの移住者に対して準備金を支給する補助金制度などがあります。
南幌町
江別市や岩見沢市に隣接する南幌町は、広大な田畑を擁する農業が盛んな町です。
札幌市まで車で約40分とアクセスしやすい立地のため、自然豊かな南幌町で暮らしながら、札幌市のオフィスに通勤するというライフスタイルも実現可能です。
地方創生の取り組みとしては子育て支援に力を入れており、子育て世代への住宅建築費の助成や支援米の支給、給食費の補助などを行っています。
さらに、子育て世代をターゲットにしたPR活動を行うことで、移住世帯を増やすことに成功しています。
参考:取組事例 子育て支援施策の充実と効果的なPR活動による移住・定住人口の拡大促進
関連記事:南幌町へ移住したい!町の3つの魅力や補助金制度を詳しく紹介!
上士幌町
十勝エリアの北部に位置する上士幌町は、バルーンフェスティバルが毎年開催されていることから、「熱気球のまち」として有名です。
積雪量は比較的少なく、夏場の平均気温も約20度と涼しい、年間を通して過ごしやすい気候にも特徴があります。
地方創生については、生涯学習機会の創出・起業支援・住民コミュニティの企画など、幅広い世代に向けた取り組みを行っています。
さらに、副業や兼業を目指す都会のビジネスパーソンと、地元の事業者をマッチングして新たなビジネスを生み出す「かみしほろ縁ハンスPROJECT」を運営しているのも特徴です。
上士幌町では、このようなさまざまな取り組みで町の認知拡大と経済の活性化を目指しています。
関連記事:上士幌町に移住しよう!町の魅力や支援制度を詳しく紹介
地方創生の取り組みが充実している北海道に移住しよう
北海道は自然の美しさと地域社会の温かさが共存しており、新しい生活を始めるには理想的な場所です。人口減少や過疎化、農業の担い手不足などの課題に直面しながらも、各自治体が地方創生に力を注ぎ、移住者へのサポートを強化しています。
気になるエリアが見つかれば、インターネットでの情報収集や現地訪問など、少しずつ移住に向けて動き出してみましょう。
北海道への移住についてはこちらの記事でも詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。北海道の食べ物や住環境、日常生活にまつわるメリットについて詳しく解説しています。