この仕事(家賃取り立て)を長く続けていると、基本的に人を信用するという気持ちがなくなる。ウソをつかれたり、騙されたりの繰り返しを何度もしていると、だんだん自分が常に人を疑いの目で見るクセがついているのが、よく分かる。そんな私も、年に1度や2度「信用してみるか」と言うより、騙されてみるかと思うことがある。
つい先日も、32000円の古いアパートを案内した、40歳の男性の場合は、体を壊し、働けなくなり、来月より生活保護を受けることになったのだが、今、住んでいるアパートでは家賃の基準を超えているため、安いアパートに移らないと生活保護を受けられないという。そのために安いアパートを探しているのだが、もう既に2週間、アパートを探しに十数社 不動産屋を歩き回ったが、入りたいアパートは、全て断られた言う。
身なりや顔つきを見ると、頭は短く、顔はヤクザ風、耳にはピアス、「これじゃ〜、どこの不動産屋も断るよな」という顔つきである。しかし、話してみると、言葉遣いも丁寧で、礼儀も正しく好感が持てる。おまけに病気がガンで、治療をしないと長く生きられないという。「う〜ん、こういう話、結構、家賃滞納者がよく言うウソのパターンだよね」と思いながらも、お涙頂戴の話には弱いのです。
役所で調べると、部屋さえ決まれば生活保護を受けれることが確認できた、また、結構良い金額も支給される。保証人も2人つけれたので、とりあえず、彼を信用して入居して貰うことにする。入居して貰う部屋も、6ヶ月も空いているいるので、私の会社で彼の入居を承諾すれば、大家さんの方は問題ないだろう。
しかし、こうして自分で自分の仕事(家賃取り立て)を増やすようなことをしているから、いつまでたっても、楽にならないんだろうね。私のどこかに、裏切られ続けても、人を信用したいという気持ちがあるんですよ、どこかにちょっとだけ・・・。
●後日談●
入居してから1ヶ月、他の不動産会社からこの男性がそちらで部屋を借りたかという問い合わせがきた。話を聞くと、前のアパートの家賃を2ヶ月分支払わず、また部屋もけっこう傷めて逃げたということだ。
これは、私の期待を裏切る結果になりそうだ。
あれから6ヶ月、彼は体の調子が悪く、病院に入院している。家賃は毎月、生活保護費が振込みになる日に病院に集金に行っている、今の所、家賃の滞納はない。
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